忍者ブログ
一般向け/高校生向け楽しい化け学
[18]  [19]  [20]  [21]  [22]  [23]  [24]  [25]  [26]  [27]  [28


×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



さて、最近「今日の分子」を書いていなかったので、久々に分子を紹介しましょう。

筆者が最近扱った物質に、例えばPVAがあります。


今日の分子 No.58 ポリビニルアルコール [-CH2CH(OH)-]n


ChemSketchで描画


無色透明の合成樹脂。

Polyvinyl alcohol」なので略して「PVA」と呼ばれる。

多数のヒドロキシ基を持つため親水性が高く、水に溶ける。

なので洗濯糊に使われる。

PVA水溶液がスーパーなどで「PVA洗濯糊」や「化学糊」と表記されて販売されている。


写真:PVA(上に"化学糊"、下に"PVA"と書いてある。)


PVAを洗濯糊に使うと、洗濯した後PVAが析出して固化して、シャツなどがパリッと綺麗な形に仕上がるわけである。

かつてはデンプンを洗濯糊として用いていたが、デンプンで仕上げたままタンスに保存すると虫が湧いてしまうという欠点があった。

一方PVAは虫に食われないため、PVA洗濯糊で仕上げればタンスに入れていても虫が湧かないのである。

ちなみにPVA等化学合成によって作られた洗濯糊を「化学糊」、デンプンなどの天然物を用いた洗濯糊を「天然糊」という。

ほかにもスライムを作るのに使われる。
『スライムを作ろう!』参照

重要なのはPVAの合成法である。

普通、高分子というのはその繰り返し単位となっている分子(モノマー)から合成する。

例えばポリエチレンならモノマーであるエチレンの付加重合で合成できる。

n CH2=CH2 → [-CH2-CH2-]n

ではポリビニルアルコールはそのモノマーであるビニルアルコールCH2=CHOHの付加重合反応

n CH2=CHOH → [-CH2-CH(OH)-]n

で合成できるだろうか。

実はできない。

というのも、モノマーであるビニルアルコールは、実質的に存在しないのである。
(本当はアセトアルデヒドと化学平衡になっていて極々少量のみ存在する。)

ビニルアルコールを合成したとしても、たちまちアセトアルデヒドに異性化してしまう。
(本当は、化学平衡がアセトアルデヒド側に大きく偏ってビニルアルコールの量がとても少なくなってしまう。)

CH2=CHOH → CH3CHO

よってほとんど存在しないビニルアルコールをモノマーとして付加重合しPVAを合成することはできない。


ではどうやってPVAを合成するのであろうか。

次の2つの反応を使うことで上手にPVAを作ることができる。


1) ビニルアルコールではなく、酢酸ビニルを付加重合する。

n CH2=CHOCOCH3 → [-CH2-CH(OCOCH3)-]n


2) 生成したポリ酢酸ビニルを水酸化ナトリウムで加水分解する。(けん化反応)

[-CH2-CH(OCOCH3)-]n + nNaOH → [-CH2-CH(OH)-]n + CH3COONa


以上のようにして、安定な酢酸ビニルを使って一旦前駆体であるポリ酢酸ビニルを合成してからPVAに変換するのである。

この合成法は高校でも習う重要な方法である。


ちなみに、「2)」のように高分子にしてからの反応を「高分子反応」という。

高分子は一般的に溶媒に溶けにくいし、粘度も大きくなるので、高分子反応は難しく、様々な方法が研究されてきた。

その中でPVAの高分子反応として、日本で開発されたビニロンの合成がある。

[-CH2-CH(OH)-CH2-CH(OH)-CH2-CH(OH)-]n + nHCHO

→ [-CH2-CH(OH)-CH2-(C4H6O2)-]n

ビニロンに関しては次回紹介することにします。

「今日の分子No.59: ビニロン」


◎ 参考
PR


さてさて、今日はホウ砂の結晶作りのレポートをしたいと思います。

かねてより筆者はホウ砂の結晶作りに励んでいました。

まずはおさらいから。


◎ 2011年2月18日(約5ヶ月前)実験

はじめに結晶作りを始めたのは2011年2月18日です。
(2011/2/19の記事「結晶作りは難しい」参照)

ホウ砂Na2B4O5(OH)4・8H2Oの飽和水溶液に種結晶を吊るし溶媒蒸発法による再結晶で種結晶の成長を試みました。


ホウ砂種結晶をつり下げたホウ砂飽和水溶液 2011/2/18 筆者撮影


残念ながら大失敗でした。

というのも

・種結晶とエナメル線の結びつけが弱く、落ちてしまう。

・種結晶が少し溶けてしまう。
(ホウ砂飽和水溶液が飽和しきってなかったか、大きく過飽和状態になったからか?)

というのが原因でした。

そして次に改良を加えました。


◎ 2011年4月30日(約2ヶ月前)実験

次に結晶作りを試みたのは4/30でした。
(2011/4/30の記事「続・結晶作り」参照)

種結晶とエナメル線をしっかり結びつけることにしました。

手順としては

1)エナメル線をアルコールランプで加熱

2)それを種結晶に突き刺して融解させ先端を埋め込むことで固定

でした。


種結晶付きエナメル線 2011/4/30 筆者撮影


また、

・ホコリが入らないようにしつつ通気性を持たせるフタが必要

・振動がないところに静置する

という結晶作りの原則があるので、それを考慮しつつ次の4パターンで5つの容器に仕込みをしました。

(A) ペットボトルの口部分を切断し作ったPETカップにティッシュを被せフタにしたもの。
  (×2個)

(B) ビーカーに、フタとして(A)で副産した穴が開いたドーム状のPETボトルの口部分を被せたもの。

(C) 試験管(フタなし)

(D) ツナ缶の空き缶にティッシュを被せたもの。

です。

また、全て振動のないタンスの上に静置しました。

結論を言うと、(D)ツナ缶だけ成功

(A)~(C)はやはり種結晶が溶ける&落ちてしまいました。

さらに、(B)はホコリがやたらと入ったし、(C)は口が小さすぎて蒸発しない。

(B)は十分蒸発はしたが、種結晶が溶け落ちたのが致命傷。


ツナ缶の条件では径が3mm程の種結晶から、径がおよそ1.5cmの大きな単結晶に成長できました。


溶媒蒸発による再結晶により成長した硼砂の結晶 2011/7/1 筆者撮影


ツナ缶は口が広かったので水がよく蒸発し、ティッシュは通気性が良好でかつホコリ耐性がかなり高かったのが良かったようです。

強いて言うなら、放置し過ぎて全ての水が蒸発してしまったことが反省点です。
(だから底にたくさんの結晶が析出してしまった。溶液が減ったら飽和水溶液を足して結晶が浸かっている状態を保つべきでしょう。)


以上より、いくつかわかったことがあります。

・エナメル線と種結晶は、溶接などでしっかり繋げるべき。

・種結晶は少し大きめのが良い。
 小さいと落ちたり、過飽和で少し解けたときに消え去ってしまう。

・容器は口が大きいのが蒸発しやすくてよい。

・フタはティッシュが最適。通気性、耐ホコリ性が高い。

・溶液は全て蒸発させないよう、ときどき足す。
 干からびると底に粗な結晶が析出して邪魔になる。
 また途中で結晶の頭だけが溶液から出る形になるから形がいびつになる恐れがある。

です。

ちなみに大きめの種結晶は、飽和水溶液をホコリが入らないように放っておいて水を蒸発させると容器の底にそれなりに生じます。


以上です。

種結晶を少し大きめのを使ってもう少し実験してみます。

ちなみに、ホウ砂の結晶作りはなかなか難易度が高いのではないかと思う今日この頃。

ホウ砂は水和水を持った結晶であり、加熱をしたり空気にさらしたりすると結晶水を失う。
(後者がいわゆる「風解」。)

だから加熱したエナメル線を突き刺すと、水が飛んでやたらと大きな穴があいてスカスカになり繋げるのが難しい。

ミョウバンなんかの結晶作りはポピュラーですが、これは結晶性が高く、かつ温度での溶解度差が大きいので「加熱→冷却」型の再結晶で綺麗に大きく結晶が育つからのようです。

まず難易度の低いヤツで練習すべきかもしれません。


今日はお絵かきをしていました。

以前『理科はお絵かきする学問』でも書きましたが、本当に絵は考えを伝える良いツールです。

先日ゲルを合成したのでそのレポートを書いていたのですが、今日は主に図を作っていました。

図を入れると見栄えも良くなるし、文章読まなくてもぱっと見ただけで何が書いてあるか/言いたいか大体わかるので、積極的に入れようと思っています。
(というか、この手のお絵かき筆者の趣味の領域なので、無駄に書いていたりもするのですが・・・)

例えば今日はこんなお絵かきをば。



作ったゲルの構造の模式図 by Adobe Illustrator


作った架橋ポリアクリルアミドゲルの構造の模式図。

やはりベクタ式の絵図の作成ソフトはAdobe Illustratorでしょう。

ベクタ式(ベクトル式)とはビットマップ式(普通の画像)と違って拡大してもぼやけたりギザギザにならない、パソコン上の理論的な曲線で描かれた図のことです。

レポートなど印刷するときはベクタ式で書くと綺麗にできます。

ちなみに、書いたときはベクタ式でしたが、ここにアップした上や下の画像はビットマップ式にしているので拡大したらギザギザになります。

ベクタ式はMSワードやエクセルやIllustrator上で使える高等な画像なのです。


他にも、化学反応式もパソコンで綺麗に書けます。


架橋ポリアクリルアミドの生成反応式 by ChemSketch


上のゲルの具体的な構造(の一部分)が生じる反応式・簡易的な反応機構の一部。

ChemSketchがあれば化合物や反応式を書くのが怖くない。

ChemSketchは化学レポート作成ソフトで、最高に特化した高機能ソフトです。

フリーウェアなのにその辺のシェアウェアよりずっと高機能なのが驚き。

ChemSketchもベクタ式の図を書くことができ、MSワード等と連携させることができます。

ちなみに、ChemSketchは化合物や実験器具などのテンプレートが入っていて、実験操作も簡単に書けます。


ゲルの合成操作 by ChemSketch


ChemSketchは化学系の学生には本当にオススメです。
(英語のソフトなので、最初は『ChemSketchで書く簡単化学レポート(ブルーバックス)』で勉強するのがオススメ。)

ちなみにAdobe Illustratorは8万円くらいして高いです。

筆者のは古いから新しいのが欲しい・・・・8万・・・出そうかな・・・


今日(→書いてる途中で日付が変わってしまった!)マクドナルドで昼食を摂ると、おまけでグラスをもらいました。

どうやら今コカ・コーラとタイアップして、コカ・コーラの350mL缶を象ったガラスのコップがおまけであるらしい。

で、箱の「材質」を見てみると「ソーダライムガラス」と書いてありました。


マクドナルドのおまけのコカコーラ缶グラス:材質にソーダライムガラスと書いてある。
2011/6/20筆者撮影


柑橘でサワーな、えらくおいしそうな名前であるが、残念ながらソーダライムガラスは食べられない。

ではソーダライムガラスとは何でしょうか。

実は、要するに高校化学で習うソーダガラスのことです。

高校化学の教科書を見ると、

「ソーダガラスとは普通のガラスで、ケイ砂・石灰石・炭酸ナトリウムの粉末を混合して、高温で融解して得られるガラス」

と書いています。

実は

炭酸ナトリウム:ソーダ

石灰石:ライム

に対応しています。

ナトリウムは英語でソディウムと言い、ナトリウム化合物のことをソーダと言います。

例えば炭酸ナトリウムは炭酸ソーダ、炭酸水素ナトリウムは重炭酸曹達(重曹)といいます。

一方、英語でライムは「石灰」を意味します。

「石灰」は割とざっくりした言葉で、酸化カルシウム(生石灰)も水酸化カルシウム(消石灰)も炭酸カルシウム(石灰石)、カルシウムそのものも「石灰」と言います。

ゆえに、要するにライムとはカルシウム分のことです。

だからソーダライムガラスとは、ナトリウムとカルシウム(の化合物)が入ったガラス、ということになります。

ちなみにナトリウムを入れるのはガラスの融点を下げるためで(純粋な二酸化ケイ素:石英は融点が高すぎて加工が難しい)、カルシウムを入れるのは化学的安定性を向上させるためです。

ガラスに添加するこれらアルカリ金属・アルカリ土類金属等の酸化物を「網目修飾酸化物」と言います。

他にカリガラス(カリウムが添加されたガラス)や鉛ガラス(鉛が添加されたガラス)、石英ガラス(純粋な二酸化ケイ素のガラス)も重要なのでチェックしておきましょう。


◎ 参考


つい昨日アセチルサリチル酸を合成したので、今日の分子はそれで。


今日の分子 No.57 アセチルサリチル酸 C6H4(COOH)(OCOCH3)


Jmolで描画


慣用名:アセチルサリチル酸。

商品名:アスピリン

IUPAC名称:2-acetoxybenzoic acid

代表的な消炎・解熱・鎮痛薬。

昔はアセチル化されていない普通のサリチル酸C6H4(COOH)(OH)が解熱鎮痛薬として用いられていたが粘膜を刺激し胃を痛める副作用があった。

1897年にバイエル社(独)のFelix Hoffmanはサリチル酸をアセチル化することにより副作用の少ないアセチルサリチル酸を合成した。

なぜアセチル化により副作用が低減できるか → 『隣接基効果~アスピリンとサリチル酸の酸性度の違い』 を参照。

画期的で、20世紀初頭に大ブレイクした超有名医薬品である。

現在でも用いられている。
◎ ちなみに「半分はやさしさでできています」のバファリンもアセチルサリチル酸である。
(小児はアセチルサリチル酸でライ症候群なる病気を引き起こしうるので、子供用はアセトアミノフェンを使っているらしい。)

サリチル酸、アセチルサリチル酸、アセトアニリド、アセトアミノフェンなどは高校化学Ⅱで出てくる重要な医薬品物質です。
(『今日の分子No.33:アセトアニリド』、『今日の分子No.36:アセトアミノフェン』も併せてお読みください。)


アセチルサリチル酸はサリチル酸C6H4(COOH)(OH)がアセチル化されたものである。

サリチル酸に無水酢酸(CH3CO)2Oを反応させて得る。



サリチル酸のアセチル化 → アセチルサリチル酸


ちなみに「-COCH3」(酢酸の-OHが外れたもの)をアセチル基といい、アセチル基を導入する反応をアセチル化反応という。


筆者もこの方法で合成しました。

合成したのち再結晶をし、綺麗な結晶を得ることができました。


アセチルサリチル酸の結晶 2011/06/16 筆者撮影



>> ごりえ様への拍手レス
ブログ内検索
Twitter @Chemis_twit (管理人)
Copyright 放課後化学講義室 All rights reserved



忍者ブログ [PR]