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一般向け/高校生向け楽しい化け学
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さっき部屋に転がってたユンケル(栄養ドリンク)の成分表示を見ると、添加物としてプロピレングリコール(CH3CH(OH)CH2OH)が入っていました。

高校化学では2価アルコールの「エチレングリコール」が出てきますが、グリコールとはなんぞやということも合わせて紹介します。


今日の分子No.64 :プロピレングリコール CH3CH(OH)CH2OH


sMoleBuilderで描画


別名:メチルエチレングリコール、1,2-プロパンジオール。

プロパンに2つヒドロキシ基(-OH)が置換した二価アルコール。

1,2-グリコール(後述)の一種である。

無色無臭、吸湿性の粘稠な水溶性液体。

引火性がある有機溶媒である。

低用量では人体には比較的低毒性であるが、高濃度だと目に入ると発赤等を起こし、さらに長期間暴露すると皮膚に悪い。


工業的にはプロピレンを酸化し酸化プロピレン(プロピレンオキサイド)を作り、それを加水分解することで製造される。



プロピレングリコールの工業的製法



毒性が比較的低く、さらに親水性かつ新油性なので食品用の乳化剤として用いられる。

すなわち、水に加えると本来水に溶けない有機物を溶かす(分散させる)ことができる。

ユンケルに添加されている理由はこのためではないかと思います。


また不凍液としても用いられる。

エチレングリコールも不凍液として用いられるが有毒なので使いづらい。

一方プロピレングリコールやグリセリンは毒性が低い/無いので代用されたりしている。


他にも、プラスチックの原料として使われる。

※ 例えば、2価アルコールと2価カルボン酸を反応させるとポリエステルができる。
 エチレングリコールとテレフタル酸からポリエチレンテレフタレート(PET)ができる。



<<グリコールとは?>>

グリコールとは、脂肪族の炭化水素鎖に2つのヒドロキシ基が置換した有機化合物の総称である。

要するに二価アルコールのことである。

ただし、1つの炭素に2つのヒドロキシ基が置換している化合物はグリコールとは言わない。
※ 1つの炭素に2つの-OHを持つ化合物、例えばCH2(OH)2等はカルボニル化合物を水に溶かした時に生じる化合物(水和物)で、普通純粋なそれを分離することは難しい。

隣り合った炭素に-OH基が置換しているグリコールを1,2-グリコール、1つ飛ばしで置換しているものを1,3-グリコール、等と言う。


<1,2-グリコールの例>


エチレングリコール (1,2-エタンジオール) sMoleBuilderで描画



プロピレングリコール (1,2-プロパンジオール) sMoleBuilderで描画



<1,3-グリコールの例>


トリメチレングリコール (1,3-プロパンジオール) sMoleBuilderで描画



○ 参考;
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自作の結晶構造模型(一億倍)


結晶構造の模型を作ってみました!

作り方はオリジナル!!
(まあ同じ作り方をしておられる方もいるかもしれませんが・・・)

外箱を透明下敷きで作ったのがポイントです。

なかなかのクォリティー!

以前から作ってみたかったんですが、どう作ったらうまくできるかずっと模索してました。

透明の箱の中に切った発泡スチロール球を入れると教科書に3D画像で載ってるような充填モデルが作れる・・・というアイデア自体は何かの参考書の写真かなんかで見たことがあります。

が、実際どうやって作るかが問題です。

筆者は分子模型を作るので、発泡スチロール球やそれを切るための器具(電熱線カッター・孔定規など)は分子模型の作り方を流用できます。

問題は外装の透明な箱。

球の大きさと箱の大きさはぴったり合わせなければなりません。
(少しでもずれると全然ダメになります。)

だから市販のアクリル箱では無理なのです。

ちょうど良いサイズのものを3年程探していましたが、やっぱり無理ということがわかったので箱を自作することにしました。
(箱は自作できるが球は自作できない→自作するならサイズは箱で合わせるしかない。)

が、ホームセンターに売ってるアクリル板は分厚いし高いし加工しにくいし・・・ということで諦めていました。

が、アイデアというのは唐突に湧いてくるもんです。

透明な下敷きを使おうと思い当りました。

PET製の透明下敷きなら切りやすいし、格子の展開図を書いたら曲げるところをカッターで浅く切れ込みを入れたら綺麗に曲がります

やってみたら大成功!

念願のクォリティーの物が作れました!!



体心立方格子




面心立方格子




六方最密充填




ちなみに試作したこれら結晶構造にはこだわりがあります。

大体ちょうど1億倍のサイズになるようにしています。

すなわち1cmが1Åに対応するように作っています。

体心立方格子はLi、面心立方格子はAl、六方最密充填はMgです。

例えば今回作成した面心立方格子は球の半径1.5cm・格子定数4.2cmですが、実際のAlは半径1.4Å・格子定数4.0Åで、なかなかの精度です!!

だからいろんな距離をモノサシで実際に測れます。

また、筆者が作ってきた分子模型と同じく1億倍なので、例えば「Liの単位格子とエタノール分子の大きさ比べ」なんていう夢の共演もできます。

近いうちに作り方のページを作ろうと思います。


テンション上がって無駄に沢山写真を撮ったので上げておきます。



体心立方格子の外箱(透明下敷き製)




2段目まで積んだ体心立方格子





六方最密充填の外箱




六方最密充填~1段目




六方最密充填~2段目




六方最密充填~3段目




昨日ホームセンターで三角フラスコ(300mL、¥820-)を買いました。

結晶作りしていると面白いことに気づいたので台所でちょっと実験しようかと。

ということで今回は三角フラスコを紹介してみます。


今日の器具No.6 :三角フラスコ


パイレックスガラス製300mL三角フラスコ
2011/9/8 筆者撮影


かなりポピュラーな実験器具。

円錐型であり、横から見た形が三角のフラスコである。

世間で専らこれは「三角フラスコ」と呼ばれるが、実は化学系の人間はこれをあまりそう呼ばない。

普通、化学の人はこれを「エルレンマイヤーフラスコ」という。
(英語でもそう呼ばれるようです。)

もしくは「エルレンマイヤー」や「マイヤーフラスコ」等と略して呼ぶ。

これは考案者エミール・エルレンマイヤーから来ているらしい。

☆ エミール・エルレンマイヤー(1825-1909)
19世紀のドイツ人化学者。
リービッヒ(リービッヒ冷却管の考案者)やケクレ(ベンゼンのケクレ構造式の考案者:ケクレもリービッヒの弟子)やブンゼン(ブンゼンバーナーの考案者)の下で学んだという。
三角フラスコの発明以外にも、ナフタレンの発見やケト-エノール互変異性についての功績があるらしい。


筆者自身、大学2年の冬くらいになってやっと実験の時に先生が言う「エルレンマイヤー」が「三角フラスコ」であると理解した。

全く当たり前にこれは「三角フラスコ」だと思っていたので、まさか別の呼称があるとは微塵も思っていなかったのでなかなか衝撃であった。

が、今となっては「エルレンマイヤー」の方が当たり前になっていて、逆にバイト先の塾などで説明するときは「エルレンマイヤー・・・じゃなくて三角フラスコと言おう・・・」と考えてからじゃないと「三角フラスコ」と言えなくなるほど「エルレンマイヤー」が定着してしまった。

そのくらい化学の場ではこのフラスコは「エルレンマイヤー」と呼ばれます。


三角フラスコは、スタンドに固定しないと手が離せない丸底フラスコと違って、底が平らなのでそのまま置けるという画期的なフラスコである。

溶媒や溶液の一時保存、加熱して物質を溶解させたり、再結晶操作を行うとき等によく用いられる。

口に”スリ”や”ツメ”のあるものもあり、溶液の保存時にスリ栓をしたり、再結晶のために飽和溶液を作るため加熱還流するときに冷却管を取り付けたりもできる。



よくやる使い方。加熱還流をするため玉付き冷却管を差す。
ChemSketchを使用して作図。
ちなみにChemSketchの実験器具テンプレートでも「Erlenmeyer flask」と表記されている。


ちなみに、試験管・ビーカー・フラスコはきちんと使い分けなければならない。

例えば溶媒を置いておくときにはよく三角フラスコに入れるが、ビーカーに入れておくのはあまり良くない。

というのも、ビーカーは口が広いので空気中のホコリが入ったり、横から他の薬品が跳ねて混入したりしてしまう恐れがあるからだ。

三角フラスコは口がすぼまっているためゴミが入りにくいし、それに揮発性溶媒を入れてもあまり蒸発しないで済む。

☆ ちなみになんでもかんでも栓をしたら良いというわけではない。
エーテル等の揮発性溶媒を入れてスリ栓をすると、内圧が上がって栓が飛ぶ恐れがある。
実際ジエチルエーテルをマイヤーフラスコに入れてスリ栓をして盛大に栓が吹っ飛んでいった場面を見たことがある。


このように、三角フラスコ ―― エルレンマイヤーフラスコはなかなか使い勝手の良い素晴らしいフラスコなのです。


◎ マイヤーフラスコはホームセンターやamazonでもよく見かけますね。




炭素数4、5のカルボン酸は非常に不快な臭いがするが、エステルになるととても良い香りになると昨日書きました。
『今日の分子No.63 :酪酸』『今日の分子No.54 :イソ吉草酸』参照)

低分子量のエステルは果実臭がし、実際果実に含まれています。

具体的にどんなエステルが果実の香り成分なのか紹介しましょう。

生活環境化学の部屋様の『◆ 果物の香りをつくる/エステル類ほか ◆』もご参考に。


<果実の香りの例>

◎ バナナの香り成分



酢酸3-メチルブチル (別名:酢酸イソペンチル)



◎ リンゴの香り成分



ペンタン酸3-メチルブチル (別名:吉草酸イソペンチル)



◎ ラム酒の香り成分



プロパン酸2-メチルプロピル (別名:プロピオン酸イソブチル)



◎ ブドウの香り成分



2-アミノ安息香酸メチル (別名:アントラニル酸メチル)




エステルは生物界にたくさん存在し、様々な役割を果たしている。

これは、カルボン酸誘導体の相互変換は活性化エネルギーが低くて比較的簡単で、便利だからであるらしい。


香りという生体的な役割を持ち上記のように植物に多く含まれている他、動物も「香り」に準ずる面白い働きのためにエステルを使っている。

例えばフェロモン(生物同士が情報交換するために使う化学物質)。

フェロモンは香りとは違うが、匂いと同じような感じで体に取り込むことにより生体刺激となる。

フェロモンにも香り成分と同じようにエステルが多いらしく、特にcis・trans異性や光学異性を持つ立体特異的な部分を持つ物質が多い。

例えば、ある種のガのフェロモンの次の物質;



酢酸cis-7-ドデセニル


がある。

ちなみにこの物質は面白いことに、たまたまゾウの性誘因フェロモンと同じ分子らしい。

ガとゾウが同じフェロモンを使うなんて、たまたまってあるもんだなと思いますね。


ちなみに、『ボルハルト・ショアー現代有機化学〈下〉』という筆者が大学で使っている教科書にこのことが載っているのだが、この教科書の著者はなかなかユーモアがあってこの事実を次のように書いている;

ゾウは,性誘因フェロモンとして数種類のガが用いるのと同じ分子を用いている.しかしゾウはこの事実に対して,感動している様子がまったくない.
(ボーっとしているゾウの写真が挿絵としてついている)


以上、エステルの香り(+フェロモン)としての具体的な例でした。


参考;


ここ数日間受けていた理科教育法で聞いた青虫の話にも関連して、こんな分子を紹介します。

高校の化学Iにも関係する基本的な分子です。


今日の分子No.63 :酪酸 CH3CH2CH2COOH


Jmolで描画


炭素数4の直鎖飽和モノカルボン酸。

炭素数4(⇒ブタン)のカルボン酸だからIUPAC正式名称は「ブタン酸(butanoic acid)」。

慣用名;酪酸(butyric acid)。

なぜ「酪酸(butyric acid)」というかと言うと、バター(butter)から初めて単離されたからである(1869年)。

「butyric acid」はラテン語で「バターの酸」という意味だという。


水溶性の油状液体。

弱酸であり、皮膚に対して腐食性がある。

なにより、非常に臭い。

あまりの臭さに「特定悪臭物質」として規制対象にあるらしい。

種々の有機物の発酵・腐敗で生じる。

炭素数5のカルボン酸であるイソ吉草酸(⇒『今日の分子No.54 :イソ吉草酸』)等と同じように足の裏の臭いの元であったり、屁の臭いの成分であるという。

また、アゲハ蝶の青虫を触った時頭から出る臭角(オレンジ色のYの字型のヤツ)の放つあの不快な臭いの元も酪酸や吉草酸等の炭素数4・5のカルボン酸類であるらしい。

ひたすらに不快な臭いのする化合物なのである。

※ カルボン酸の不快臭については『今日の分子No.54 :イソ吉草酸』も参照。


一方、酪酸はプラスチックや可塑剤、界面活性剤、香料等の原料になる。

酪酸は臭いが、酪酸のエステルは果実のような甘く心地よい香りがする。
(多くの低分子量エステルは果実のような香りがし、実際バナナやパイナップル等に含まれる香気成分はエステルである。)

また、酪酸や酪酸誘導体は抗がん剤になるのではないかと世界中で本気で注目されているらしい。

臭かったり、良い香りになったり薬になったり、なかなか不思議な物質である。


◎ 参考

・ 『Organic compound Bible』(iPadのapp)
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