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一般向け/高校生向け楽しい化け学
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実はなんと紫外可視吸光光度計を買いました!!!

・・・と言っても、古くてもう動かないジャンク品なんですけど。

なんとヤフオクで1000円でした。

私は研究で吸光光度計をよく使うのですが、分解して中身の勉強をしたりパーツ取りに使えるなということで。


ということで、今回は紫外可視吸光光度計を分解して、その光学系がどのようになっているか解説します。


紫外可視吸光光度計の原理



そもそも紫外可視吸光光度計とは?

紫外可視吸光光度計とは、物質の紫外光~可視光の吸収を測定する装置です。

物質がどの波長の光をどれだけ吸収するかが分かり、波長ごとに測定することで吸収スペクトルが得られます。

紫外~可視領域の光吸収は物質の電子遷移と対応しているので、吸収スペクトル測定は物質の電子状態を知るための最も基本的な測定です。

他にも、ある波長における物質固有の吸収の強さ(モル吸光係数)をあらかじめ決めておくと、サンプル溶液中のその物質の濃度を測定することもできます。

上図のように、ランプから出た白色光から分光器回折格子プリズム)で単色光を取り出し、サンプルに当ててその光の減衰を検出することで測定します。

それでは実際にどんな構造をしているか見てみましょう。


紫外可視吸光光度計の解体

1. 外見



まずは外見。

これは日本分光社製のUbest-55というダブルビーム型(後述)の紫外可視吸光光度計です。

装置上に制御パネルがあり、測定内容に合わせたプログラムパッケージ(カード型)を差し込んで使います(残念ながらもう動かない)。

サンプルは手前の窓を開けてセットします。

さて、蓋を順に開けていってみましょう。


2. 外装の取り外し



光学系が入った黒いカバーと、セル室が見えます。

セル室とは、サンプルをセットする部屋で、測定したいサンプル(溶液、薄膜、粉末等)や測定内容(吸収スペクトル測定・反射スペクトル測定・温度変化測定等)に合わせて交換します。

今は積分球(後述)という装置がセットされています。


3. 光学系カバーの取り外し





黒いカバーを取り外すと、非常に綺麗な光学系が出てきました(セル室も取り外しています)。

・ ランプ室
 短波長領域用の重水素ランプ(185~400 nm)と長波長領域用のタングステンランプ(350~3000 nm)がセットされており、ランプ室のミラーが動くことで光源の切り替えを行います。いずれも曇りのない新品同様のランプです!

・ 分光器(ツェルニー-ターナー方式)
 回折格子とミラーとスリットがあり、光の回折現象によって単色光を取り出します。回折格子の角度を変えることで取り出す波長を変えられます。

・ チョッパー
 扇風機の羽のようにモーターにミラーが付いたもので、一定周期で高速回転することで単色光を参照サンプル(ブランク)測定用と試料測定用の光に分割します。このようにブランクと測定試料を常に同時に測定する方法をダブルビーム方式といい、光源の揺らぎや減衰に起因する測定エラーを減らすことができます。

・ セル室
 奥にブランク(空っぽもしくは溶媒だけ)、手前に測定したい試料をセットします。

・ 検出器室
 光を検出する光電子増倍管があります。ミラーによってブランク光も試料光もどちらも1つの検出器に誘導されます。


4. 積分球の分解



最も一般的に測定されるのは溶液サンプルですが、この吸光光度計には主に固体を測定する積分球(高価!)がセットされていました。

積分球とは、上の写真のように中が真っ白に塗られた球で、固体サンプルを反射した光が集められて下部の光電子増倍管に送られるという器具です。

光の通過しない固体サンプルを測定でき、拡散反射スペクトルや、それを換算することで得られる吸収スペクトルを測定できます。

ちなみに、積分球がセットされているときは上で紹介した検出器室の光電子増倍管は使いません。


【動画】紫外可視吸光光度計の機械的動作(始動・初期化)

この吸光光度計、測定はできないんですが、なんと電源を入れるとちゃんと始動して、光学系の初期化が行われます。

どこがどう動いて何をするのか、百聞は一見にしかずなので、動画を撮ってみました。



初期化動作解説

0:03: 電源投入
0:08: スリットが回転して初期化される(カチャカチャと音が鳴る)。
0:16: 黄色いカットフィルターが初期化される(カンカンカンと音が鳴る)。
0:23: チョッパーの回転が始まる(けたたましい音が鳴る)。
0:26: 回折格子の角度を変えるモーターが回り、分光器が初期化される。
1:00: ランプが灯る(キューンと音が鳴る。ランプ室の穴が光り、手前の壁に反射光が映る)。
1:20: シャッターが初期化される(カンカンと音が鳴る)。

といった感じです。

カッコイイですね。


いつも使っている装置ですが(研究室の吸光光度計のメーカーは島津ですが)、なかなか中を見ることはないので非常に勉強になりました。

実際にやってみるのが一番勉強になりますね。
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