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一般向け/高校生向け楽しい化け学
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今日は久々に白衣を洗いました。

二酸化マンガンと思しき褐色の汚れをブラシでこすって根性で取りました。

さて、予告通り今日はビニロンを紹介します。

ちなみに昨日「筆者は最近PVAをよく扱う」と言ってPVAを紹介した続きなのですが、今日も実験でPVAを触ってました。


今日の分子 No.59 ビニロン ---CH2CH(OH)-(C4H6O2)---


ChemSketchで描画


1939年に桜田一郎博士によって合成された日本初の合成繊維。

世界初の合成繊維はナイロン(1937年)であり、ビニロンは世界で二番目の合成繊維である。

強度が高く、耐薬品性も高く、化学反応にも熱にも強い優秀な高分子材料である。

合成繊維は一般的に疎水性(=水をはじく性質)であるが、ビニロンは親水性で吸水性がある。(後述)

なのでビニロンで服を作ると汗を吸ってくれるためその点では綿のような感じである。

70年以上前に作られた繊維なのに、未だ作業服やロープなどに使われている優秀な合成繊維である。


ちなみに開発者の桜田博士は日本の高分子化学者の大権威者で、ナイロンに続いてたった2年で新素材を開発したことも大きな功績であるが、他にも高分子物理の理論式を作った等多くの功績がある。

「高分子」という言葉を日本に定着させたのも彼だとか。



ビニロンはポリビニルアルコール(PVA)とホルムアルデヒドの脱水縮合で合成される。(酸触媒)


ビニロン(部分構造)の生成反応


PVAの隣り合った2つのヒドロキシ基とホルムアルデヒドが脱水縮合し、六員環構造の環状アセタール構造を持つビニロンが生成する。

ビニロンの物性やこの合成反応は高校の化学Ⅱでも習う。

ここで注目すべきは生成したビニロンの構造である。

全てのヒドロキシ基がホルムアルデヒドと反応して消費されるのではなく、分子内にいくらか未反応のヒドロキシ基が残る。

したがってビニロンは程良く親水性である。


ちなみに・・・なぜこのようにビニロンは繊維として使え、PVAは繊維として使えないのだろうか。

PVAもヒドロキシ基を持ち親水性であるが、ヒドロキシ基が多すぎて親水性が高過ぎ、もし繊維にして服として着ると汗に溶けて洗濯糊になってドロドロと溶けてしまうだろう!

しかもヒドロキシ基が多いと分子間力が大きいので、PVAは硬い結晶質の物質であるから繊維に使うのは厳しいでしょう。

そういう中、ヒドロキシ基をいい感じに少なくして親水性・硬さをコントロールできるビニロンは素晴らしい高分子材料なのである!


◎ 参考
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