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一般向け/高校生向け楽しい化け学
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昨日のニュートリノのかのニュース(『光速超えるニュートリノ 「タイムマシン可能に」 専門家ら驚き「検証を」』)にはただ驚くばかりの筆者です。

とりあえず色んな研究機関に検証してもらわないとどうしようもないですね。

筆者は化け学専攻なわけですが、素粒子物理も興味があるので(と言っても大衆向けの科学書籍で読んで満足くらいの理解度ですが。。。)、今回の発見は非常にテンションが上がりました。

ニュートリノ・・・筆者は「素粒子物理にも興味がある」と言うよりも、「原子」「分子」「素粒子」・・・っと小さい粒々が好きなだけの気もしますが(笑)


さて昨日バイト先に置いてあったアルコール消毒ジェルの成分表示を見るとこんな分子が入っていたのでちょっと紹介。

最近グリコールネタが多いですな。



今日の分子No.67 :1,3-ブチレングリコール CH3CH(OH)CH2CH2OH


ChemSketchで作図、Jmolで描画


系統名;1,3-ブタンジオール。

2価のアルコールであり、1,3-グリコールの一種。
(グリコールについてはこちらを参照:『今日の分子No.64 :プロピレングリコール』

無色透明の水溶性液体。

毒性は低く、皮膚に対しても刺激性は低いという。

保湿剤・溶媒として用いられ、多くの化粧品等に入っている。

「さらっとした保湿剤」であり、たとえば化粧水を作る際に配合されるらしい。

例えばこんな風に手作り化粧品の基材として売っているようです。

手作り化粧品用基材 1.3ブチレングリコール100ml

1,3-ブチレングリコール(1,3-BG) 500ml

他にも合成化学的には、他のグリコール類と同じくポリエステルの原料として用いられる。


1,3-ブタンジオールは工業的にはアセトアルデヒドから作られる。

具体的にはアセトアルデヒドCH3CHO二分子を水酸化ナトリウム塩基性条件下で縮合させ(アルドール縮合)、生じたアセトアルドールCH3CH(OH)CH2CHOをニッケル触媒下水素で還元して合成されます。



1,3-ブチレングリコールの工業的製法


◎ 参考
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前回記事で油脂について紹介しました。

今回はそれに関連して、油脂の親戚の「蝋」を紹介しましょう。


今日の分子No.66 :パルミチン酸ミリシル CH3(CH2)14COOCH2(CH2)28CH3


ChemSketchで作成、Jmolで描画


脂肪酸であるパルミチン酸C15H31COOHと、高級一価アルコールであるトリアコンタノールCH3(CH2)28CH2OHとのエステル。
(炭化水素基CH3(CH2)28CH2-をミリシル基と言います。)

ミツバチの巣を形作る蜜蝋の主成分。

代表的な蝋である。

蝋状の固体。
(「蝋状」というか、蝋そのものです。笑)

床に塗るワックスとして、蝋燭として、クレヨンや絵具などの画材の材料として、幅広く用いられます。


油脂は高級脂肪酸とグリセリン(3価アルコール)であるエステルでした。

一方、蝋は高級脂肪酸と高級一価アルコールのエステルです。
(中にはトリグリセリドであるが慣用的に蝋とよばれるものもあるようです。また、2価アルコールのエステルのものもあるようです。「蝋」の定義は曖昧であるとのこと。)

果実に例えると、油脂が房が3つのバナナ型分子なのに対し、蝋は房1個ヘタ1個のトウガラシみたいな形の分子です。

また、"ヘタ"は油脂はグリセリンですが、蝋は色々な種類の高級アルコールであるという違いがあります。



油脂(バナナ型分子)と蝋(トウガラシ型分子)


具体例として、蝋には上記のようなパルミチン酸ミリシル等があります。

蝋は可燃性で、古来よりロウソクに使われたりしています。


余談ですが、最近のロウソクは「燭」ではありません。

あの白い蝋っぽいのは蝋(高級アルコールの脂肪酸エステル)ではなく、高級パラフィン(高級アルカン)です。

今やミツバチの巣から取るより石油から作る方が楽になってしまったようです。


◎ 参考


油脂は最もポピュラーな生体分子ですが、そのわりに高校生にはあまり理解度が高くないようだと今日改めて感じました。
(ヨウ素価とかケン化価とかの計算がややこしいため、難しいと感じているからだろうか?デカイ分子で構造解析もややこしいからという理由もあるかもしれない。)

油脂とは何か、ちょっと紹介してみたいと思います。


まず油脂とは、「1分子のグリセリンと3分子の高級脂肪酸がエステル結合したもの」です。

 ※ 高級脂肪酸とはカルボン酸R-COOHで炭化水素基「R-」の炭素数が大きい(15とか17とか)分子です。

グリセリンが3つの脂肪酸とエステル結合している分子を化学的には「トリグリセリド」、もしくは「トリ-O-アシルグリセリン」と言います。

油脂分子は、下図のように房が3つついたバナナみたいな形をしていて、房1つ1つが高級脂肪酸の部分、ヘタがグリセリンの部分に相当します。



油脂の構造。バナナのような形をしている。


高級脂肪酸の種類・組み合わせによってたくさんの種類の油脂が存在します。

☆ 例;『今日の分子No.12 :ジパミトイルカプリリルグリセロール』

油脂は植物や動物の体に含まれ、主にエネルギー源になる物質です。

体に保存して食料のないときにゆっくりと消費することができ、即効性の糖に対して保存型の燃料と言うことができます。

しかし保存してしまうのが裏目に出ることがあり、お腹まわり等に保存されるコイツらは脂肪と呼ばれて人間には忌み嫌われています。


「油脂」と言いますが、これは「油」と「脂」の総称です。

どちらも「あぶら」ですが、「油」は常温で液体である油脂、「脂」は常温で固体である油脂です。

液体の油脂("油")は植物や魚等に多く含まれていて、固体の油脂("脂")は動物の肉に多く含まれています。

魚の煮汁は冷めても固まりませんが、豚肉の煮汁は冷めると脂が固まって白くなりますよね。

◎ 冷たい水の中で暮らす魚は、体の流動性を保つために融点の低い油脂を使わなければならない!!


さてここで、油脂の種類によって常温で液体だったり固体だったりする理由を化学的に考えたくなります。

結論を言えば

・ 二重結合のない/少ない油脂 → 固体;脂




「脂」である油脂。



・ 二重結合の多い油脂 → 液体;油




「油」である油脂。


です。
(もちろんのことですが、油脂のどこに二重結合があるかと言うと、脂肪酸部分の「R-」の炭化水素基部分です。)

なぜ二重結合の数で違いが現れるのかと言うと、詳しくは高校で習いませんがそれは構造化学的な問題になります。

「固体になりやすい」性質を発現する原因の一つとして、「分子が密に、綺麗に配列することができる」ということがあります。

綺麗に配列すると分子間力が大きく働くため固体になりやすい。

下図のように、飽和高級脂肪酸からなる油脂は3つの炭素鎖が直線で均一な形をしていて、かつその鎖は動きやすいため結晶になると互いにぴったりくっ付いて飽和脂肪酸鎖、油脂分子は綺麗に並ぶことができる。

すると油脂分子間に働く引力が強くなるため、固体になりやすい。



飽和脂肪酸から成る油脂は綺麗な形をしていてピッタリ配列することができる。


一方不飽和高級脂肪酸からなる油脂は?

残念ながら二重結合は自由に回転することができないのでイビツな形をした分子になります。

だから綺麗に並ぶことができず、固体になりにくい、常温で液体になってしまう、ということなのです。



飽和脂肪酸から成る油脂は二重結合が固くてイビツな形になる。ゆえに整列しにくく液体になる。
(ちなみに自然の不思議で、ほとんどの油脂の二重結合はシス型になっています。)



不飽和高級脂肪酸からなる液体の油脂、"油"は二重結合を持つため付加反応を起こすことができます。

例えば水素付加。

触媒を用いて水素を付加すると二重結合をなくすことができるので固体になります。

これを応用したのがマーガリン。

液体であった植物性油脂に水素を付加して固体化 → パンに塗れる!!! という発想です。

(しかしこのときにトランス脂肪酸が・・・!!!この話は後日しましょう・・・)


他にもヨウ素を付加することもできます。

二重結合が多いほど付加するヨウ素が多いので、ヨウ素の反応量をその油脂の不飽和度のモノサシにすることができます。

このように定義された値がヨウ素価。

詳しくはコチラ。2011/2/22の記事『ヨウ素価』


あと、まだ油脂には重要な反応があります。

それは「けん化」。

「油脂をアルカリ(NaOHやKOH)と反応させてグリセリンと高級脂肪酸塩を得る」・・・(☆)という反応。


けん化反応


「けん化」の「けん」は、「セッケン」の「けん」。

「けん化」を漢字で書くと「鹸化」なので、「石鹸」の「鹸」ですね。

すなわち「けん化」とは「セッケンになる反応」です。

※ セッケンについてはコチラを御参照ください。
『今日の分子No.1 :F-ギトニン』
『今日の分子No.11 :ラウリン酸ナトリウム』
『リンスインシャンプーの化学』


セッケンとは高級脂肪酸塩のことです。

すなわち上に書いた説明(☆)を書きかえると、「けん化」とは「油脂からセッケンを作る反応」なのです。

これ重要。

アルカリと混ぜてるので、脂肪酸はできません!脂肪酸ができます!

「けん化 = セッケン化反応」なのだから、生成物はきとんとセッケン(=脂肪酸塩)を答えてください。

「けん化 = セッケン化反応」ということがわかっていれば、もう間違えないはずです。

今日はこれが一番言いたかったのです。

もう一度言います。

「けん化」とは「油脂からセッケンを作る反応」なのです。

大切なことなので2回言いました(笑)


あと、「けん化価」という値がありますが、これはどうということもなく特に難しくない値です。

「1gの油脂をけん化するのに必要なKOH(もしくはNaOH等)のミリグラム数」と定義されていますが、要する油脂の分子量のモノサシです。

けん化価が大きいと油脂の分子量は小さいということになります。


◎ 参考



新しい元素が周期表に増えるらしいです!!

3ヶ月程前から言われていたらしいが不覚にも全然知らなかった・・・

------------追記2012/6/3------------
元素名・元素記号が決まりました!
青字部分が追記です。
-----------------------------------------


今回増えるのは114番と116番の元素らしいです。


赤色の元素が今回追加される114番と116番。
また、水色の元素はまだ未承認。2012/6/3現在


で、先に確認しておきたいのは「増えるとは何ぞや」ということです。

114番と116番元素(と思われるもの)はそれぞれ1999年と2000年に、重イオン加速器で核反応を起こして生成され「発見」されました。

114番(uuq)と116番(uuh)のできた核反応は

48Ca + 242Pu → 287uuq

48Ca + 245Cm → 291uuh

とのこと。

「発見」とはその原子が2個以上、複数の研究所で見つかる(生成される)ことを言います。
(※ 1つの研究所で「できた!!」と言っても嘘や間違いかも知れない。このくらいの重さの原子になると何秒間も生きていられないので、後でサンプルを提出したりして確認することができないのである。)

「発見」するのは要は作ればいいのですが、元素に名前がついて周期表に追加されるのは大変で時間もかかる。

まず発見の関係者が先取権を腹黒く奪い合い、そしてその元素の物性等もある程度確認され、委員会がゴーサインを出すまで納得させなければならない。

今回、2011年6月1日に114番と116番元素がIUPAC(国際純粋・応用化学連合)とIUPAP(国際純粋・応用物理学連合)に正式に認可されたようです。


今まで114番はウンウンクアジウム、116番はウンウンヘキシウムという系統名で呼ばれていました。

※ 「ウン」は「1」、「クアジ」は「4」を表します。
 すなわち「ウンウンクアジウム」は要するに「114」を表しています。

認可されたので名前が付けられます。

114番元素=フレロヴィウム(Flerovium)、116番元素=モスコヴィウム(Moscovium)が提案されているようです。

もう少ししたらそのうち「Fv」とか「Mv」とかそんな感じの記号の元素が増えることでしょう。

→114番はフレロビウムFl、116番はリバモリウムLvになりました!
116番は何回か名前案が変わったりしてややこしかったようです。



ちなみに2009年に112番元素が「コペルニシウム」元素記号「Cn」として周期表に加わったばかり。

ロマンですねぇ。



あとさらにちなみに・・・

我々日本人が切望するのは113番元素の認証!!

113番、系統名ウンウントリウムuutは日本の理化学研究所で2004年に発見された元素。

まだ命名には至っていない。

ちなみに寿命は0.000344秒らしい。

名前を付けるなら「ニッポニウム」とか「ジャパニウム」とかだろうか。


特に「ニッポニウム」は日本の核物理学界にとってはイロイロ思うところのある元素名。

1908年、現在43番のテクネチウムTcを日本人の小川博士が発見したと言い、ニッポニウムNpと名付けた。

しかし実は測定機器が悪くて、実は75番のレニウムRe(当時未発見)だったという。

もう少しうまく測ることができていたらレニウムはニッポニウムだったかもしれない。

惜しかったのである。

ちなみに元素記号「Np」は今は「ネプツニウム」に使われていて被るのでもう使えない。残念。

あと「ジャパニウム」はマジンガーZですね。

アニメ由来の元素名なんてとっても日本的で良いじゃないですか?

と言いたい。

まあ実際のところは「ジャニウム」記号「Jp」(周期表初の「J」!?)か「リケニウム」記号「Rk」(理化学研究所でできたから)が提案されているようですが。


このようにまだ名前のない113~118番は一応発見されているわけですが、どんな名前になるか楽しみですね。



◎ 参考


前回のプロピレングリコールに関連してエチレングリコールを紹介します。

エチレングリコールは有毒なのですが、中毒になった時の対処法が面白いです。


今日の分子No.65 :エチレングリコール HOCH2CH2OH


sMoleBuilderで描画


IUPAC系統名;1,2-エタンジオール。

二価アルコールであり、最も単純な1,2-グリコール。

粘稠な無色無臭の液体。

舐めると甘いらしいが、毒性が高い。

引火性の有機溶媒であり、第四類危険物(引火性液体)として取り扱いが規制されている。

不凍液に用いられたり、ポリエステル(PET、PEN(ポリエチレンナフタレート)等)の原料として使われる。


☆ PETの合成

エチレングリコールとテレフタル酸の脱水縮合重合により合成されている。


PETの合成



エチレングリコールは石油化学製品であり、工業的には次のように合成される。

1. 石油(ナフサ)のクラッキング(熱分解)でエチレンを合成する。

2. エチレンを銀担持アルミナ触媒下気相酸化により空気酸化して酸化エチレン(エチレンオキシド)を合成する。

3. エチレンオキシドを水と反応させて加水分解してエチレングリコールを得る。



エチレングリコールの工業的製法



不凍液の誤飲などでエチレングリコール中毒になったとき、エタノールを中毒量ギリギリまで服用させるというユニークな方法が取られることがあるらしい。

これは、エチレングリコールは代謝されて初めて毒性を示すので、毒性が低めのエタノールを代わりに代謝させることでエチレングリコールの代謝を抑制し、エチレングリコールの代謝産物が危険な量まで体に蓄積されないうちに排泄させようという作戦であるらしい。

だからメタノール中毒のときも同じようにエタノールを大量摂取するという方法が取られるという。

ちなみに有毒であるエチレングリコールやメタノールはお酒のアルコール度数を高いようにごまかすため、過去故意に混入された事件があるらしい。


◎ 参考

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