一般向け/高校生向け楽しい化け学
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油脂は最もポピュラーな生体分子ですが、そのわりに高校生にはあまり理解度が高くないようだと今日改めて感じました。
(ヨウ素価とかケン化価とかの計算がややこしいため、難しいと感じているからだろうか?デカイ分子で構造解析もややこしいからという理由もあるかもしれない。)

油脂とは何か、ちょっと紹介してみたいと思います。


まず油脂とは、「1分子のグリセリンと3分子の高級脂肪酸がエステル結合したもの」です。

 ※ 高級脂肪酸とはカルボン酸R-COOHで炭化水素基「R-」の炭素数が大きい(15とか17とか)分子です。

グリセリンが3つの脂肪酸とエステル結合している分子を化学的には「トリグリセリド」、もしくは「トリ-O-アシルグリセリン」と言います。

油脂分子は、下図のように房が3つついたバナナみたいな形をしていて、房1つ1つが高級脂肪酸の部分、ヘタがグリセリンの部分に相当します。



油脂の構造。バナナのような形をしている。


高級脂肪酸の種類・組み合わせによってたくさんの種類の油脂が存在します。

☆ 例;『今日の分子No.12 :ジパミトイルカプリリルグリセロール』

油脂は植物や動物の体に含まれ、主にエネルギー源になる物質です。

体に保存して食料のないときにゆっくりと消費することができ、即効性の糖に対して保存型の燃料と言うことができます。

しかし保存してしまうのが裏目に出ることがあり、お腹まわり等に保存されるコイツらは脂肪と呼ばれて人間には忌み嫌われています。


「油脂」と言いますが、これは「油」と「脂」の総称です。

どちらも「あぶら」ですが、「油」は常温で液体である油脂、「脂」は常温で固体である油脂です。

液体の油脂("油")は植物や魚等に多く含まれていて、固体の油脂("脂")は動物の肉に多く含まれています。

魚の煮汁は冷めても固まりませんが、豚肉の煮汁は冷めると脂が固まって白くなりますよね。

◎ 冷たい水の中で暮らす魚は、体の流動性を保つために融点の低い油脂を使わなければならない!!


さてここで、油脂の種類によって常温で液体だったり固体だったりする理由を化学的に考えたくなります。

結論を言えば

・ 二重結合のない/少ない油脂 → 固体;脂




「脂」である油脂。



・ 二重結合の多い油脂 → 液体;油




「油」である油脂。


です。
(もちろんのことですが、油脂のどこに二重結合があるかと言うと、脂肪酸部分の「R-」の炭化水素基部分です。)

なぜ二重結合の数で違いが現れるのかと言うと、詳しくは高校で習いませんがそれは構造化学的な問題になります。

「固体になりやすい」性質を発現する原因の一つとして、「分子が密に、綺麗に配列することができる」ということがあります。

綺麗に配列すると分子間力が大きく働くため固体になりやすい。

下図のように、飽和高級脂肪酸からなる油脂は3つの炭素鎖が直線で均一な形をしていて、かつその鎖は動きやすいため結晶になると互いにぴったりくっ付いて飽和脂肪酸鎖、油脂分子は綺麗に並ぶことができる。

すると油脂分子間に働く引力が強くなるため、固体になりやすい。



飽和脂肪酸から成る油脂は綺麗な形をしていてピッタリ配列することができる。


一方不飽和高級脂肪酸からなる油脂は?

残念ながら二重結合は自由に回転することができないのでイビツな形をした分子になります。

だから綺麗に並ぶことができず、固体になりにくい、常温で液体になってしまう、ということなのです。



飽和脂肪酸から成る油脂は二重結合が固くてイビツな形になる。ゆえに整列しにくく液体になる。
(ちなみに自然の不思議で、ほとんどの油脂の二重結合はシス型になっています。)



不飽和高級脂肪酸からなる液体の油脂、"油"は二重結合を持つため付加反応を起こすことができます。

例えば水素付加。

触媒を用いて水素を付加すると二重結合をなくすことができるので固体になります。

これを応用したのがマーガリン。

液体であった植物性油脂に水素を付加して固体化 → パンに塗れる!!! という発想です。

(しかしこのときにトランス脂肪酸が・・・!!!この話は後日しましょう・・・)


他にもヨウ素を付加することもできます。

二重結合が多いほど付加するヨウ素が多いので、ヨウ素の反応量をその油脂の不飽和度のモノサシにすることができます。

このように定義された値がヨウ素価。

詳しくはコチラ。2011/2/22の記事『ヨウ素価』


あと、まだ油脂には重要な反応があります。

それは「けん化」。

「油脂をアルカリ(NaOHやKOH)と反応させてグリセリンと高級脂肪酸塩を得る」・・・(☆)という反応。


けん化反応


「けん化」の「けん」は、「セッケン」の「けん」。

「けん化」を漢字で書くと「鹸化」なので、「石鹸」の「鹸」ですね。

すなわち「けん化」とは「セッケンになる反応」です。

※ セッケンについてはコチラを御参照ください。
『今日の分子No.1 :F-ギトニン』
『今日の分子No.11 :ラウリン酸ナトリウム』
『リンスインシャンプーの化学』


セッケンとは高級脂肪酸塩のことです。

すなわち上に書いた説明(☆)を書きかえると、「けん化」とは「油脂からセッケンを作る反応」なのです。

これ重要。

アルカリと混ぜてるので、脂肪酸はできません!脂肪酸ができます!

「けん化 = セッケン化反応」なのだから、生成物はきとんとセッケン(=脂肪酸塩)を答えてください。

「けん化 = セッケン化反応」ということがわかっていれば、もう間違えないはずです。

今日はこれが一番言いたかったのです。

もう一度言います。

「けん化」とは「油脂からセッケンを作る反応」なのです。

大切なことなので2回言いました(笑)


あと、「けん化価」という値がありますが、これはどうということもなく特に難しくない値です。

「1gの油脂をけん化するのに必要なKOH(もしくはNaOH等)のミリグラム数」と定義されていますが、要する油脂の分子量のモノサシです。

けん化価が大きいと油脂の分子量は小さいということになります。


◎ 参考

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