一般向け/高校生向け楽しい化け学
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今日友達とリチウムイオン電池の溶媒のお話になったのでそれについて。


今日の分子 No.35 炭酸エチレン C3H4O3


WinMOPACで計算・描画 ※二重結合省略


珍しい形の分子に見えるが、炭酸(H2CO3)とエチレングリコール(HO-CH2CH2-OH)が二ヶ所エステル結合で繋がっただけの分子。

だから名前は炭酸エチレン。

別名で1,3-ジオキソラン-2-オンやエチレンカーボネートとも呼ばれる。

極性のある有機溶媒であり、リチウムイオン電池でリチウムイオンを溶かすための電解液として使われる。

ちなみにこの分子、筆者が受けた阪大プレ(だったような気がする・・・)の模擬試験で出てきた経験があります。

極性を答えさせるものだったかな・・・ちょっと記憶が怪しい・・・


大きな極性がなければイオンを溶かすことは出来ない。

水が食塩を溶かすことが出来るのは、水分子が強く分極していて極性溶媒となっているからである。

水分子はH-O結合においてOが強くHから電子を引っ張っているので分極しているため極性が現れる。
(あと分子が点対称でないのも要因になっている。)

ここで極性の大きさの指標として「双極子モーメント」(単位はdebye)という物理量が定義されている。

一般に双極子モーメントの数値が大きいほどその分子は極性が大きいと言える。

例えば水の双極子モーメントは1.94 debyeである。

他に例えば硫化水素は1.02 debye、エタノールは1.47 debyeである。



この数値の比較により、水はかなり極性の大きな分子でありイオンや他の極性分子を良く溶かすだろうと予想される。

実際、水は極性が非常に大きく優れた極性溶媒であるとされている。

では、この炭酸エチレンはどうだろうか。

分子軌道計算ソフトWinMOPACで双極子モーメントを計算してみると・・・

結果、4.616 debye

デカイ!!!!

半端なく大きい値である。

水の1.94 debyeでさえ異常に大きな双極子モーメントだと言われるのに、炭酸エチレンはケタ違いに大きな双極子モーメントを持っている。

すなわち炭酸エチレンはイオンを溶かすのがズバ抜けて得意な溶媒なのである。

だからリチウムイオン電池でリチウムイオンを溶かすための溶媒として使われているのである。


一方、溶媒としては優秀な炭酸エチレンにも欠点がある。

炭酸エチレンは引火性の油であり、非常に燃えやすいという危険性があるのだ。

少し前にパソコンのリチウムイオンバッテリーが発火しリコールがかかって回収になったりしていましたが、これは熱を放散しにくい構造/状況になったリチウムイオンバッテリーが高熱になり炭酸エチレンが発火したからだと言われています。

しかし炭酸エチレンほどリチウムイオンを溶かすことの出来る優秀な溶媒はそうないので、この危険性をいかに抑えるかという対策を考えつつ炭酸エチレン若しくは類似の極性有機溶媒を使い続けるしかないのです・・・


※ 某大学の教授がリチウムイオン電池の「全固体化」に成功したとか。

要するに液体フリーで発火の危険性なし!という優れもの。

まだまだ身近なところにも化学の力で何とかなる問題が転がっています。

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