一般向け/高校生向け楽しい化け学
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ちょっと書くのが遅れたが、先日一昨日9日、ハンガリーで化学工場の有毒汚泥が流出するという事故が起こった。

酸化アルミニウム工場の大型貯水池の堤防が決壊したらしい。

この汚泥には重金属が含まれていて、すでにこの事故で数人が亡くなっているらしい。

不幸にも大きくて有名なドナウ川にも流れ込んだらしく、汚泥は広い地域に広がってしまうだろう。

さらに、この汚泥が乾燥すれば粉末となり空気中に飛散し、各地へ飛散してしまう恐れもあるようだ。

また化学が叩かれる悲しいニュースである。


なぜ堤防の耐久点検をしていなかったのか。

なぜ決壊したときの最低限の安全策を構じていなかったのか。

なぜ・・・なぜ・・・


筆者は危険物取扱者や化学責任者の免許を持っていて、化学工場のタンクや配管の規定について少しは理解しているつもりだ。

法律には、きちんと点検をして保守管理をするように、っといろんな項で出てくる。

なぜこんな法律や資格があるのだろうか。

それは人の命を守るためである。

化学は、人の生活を豊かにしたり命を守ったりするが、一方でその高度で膨大な力により人を死に追いやる一面も併せ持つ。

現代の高度な技術はその知識を持っている者でなければ制御できない。

だから化け学をやる人間は、このようなことが起こらないように一生懸命勤めなくてはならない。―例え他人がその努力に気づいてくれなくとも―

このような、技術者が持つべき"当たり前"な倫理観念を「技術者倫理」という。


さて、今日は少し重くなっているが、そんな安全に関する化学の話しをしよう。

事故事例;
硝酸を入れていたアルミニウム製屋外タンクに、雨の次の日穴が開いて硝酸が漏れ出していた。

いったい何が起こったのだろうか?

まず硝酸とは、酸化力のある酸でイオン化傾向の小さな銅等の金属も溶かすことができる。


硝酸 Jmolで描画


しかしこれには面白い性質があり、濃度が濃い濃硝酸はアルミニウムや鉄を溶かすことができない。(アルミや鉄は銅よりもイオン化傾向は小さいのに!)

これはアルミニウムや鉄は硝酸と反応すると表面に緻密な酸化膜「不動態」(重要!)を作り、バリアーされるので内部まで硝酸が染み入ることができないためである。

だから濃硝酸はアルミニウムや鉄で出来たタンクに入れる。

しかし不動態を作るのは濃硝酸のときだけで、薄い希硝酸のときは鉄もアルミニウムも溶かしてしまう(もちろん銅等も)。

実はこの事故事例のタンクは、天井の点検がずさんで雨が入ってしまったのである。

すると濃硝酸が希釈されて希硝酸となり、アルミニウム製のタンク壁を溶かしてしまったのである。


このように高校生でも理解できるような原理でも事故は起こっている。

天井の点検さえちゃんとしていればこんな事故は起こらなかった。

すべきことはきちっとする、これは化学に限ったことではない。

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