一般向け/高校生向け楽しい化け学
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さて今回も再結晶法について。

前々回記事「再結晶法(その1:溶解度曲線)」、前回記事「再結晶法(その2:分離手段)」の続きです。


今日は再結晶で綺麗な結晶を作る方法について書きます。

再結晶では「加熱→冷却」で溶解度の差を利用して析出させる方法と、溶媒を蒸発させて濃縮し析出させる方法がありますが、どちらでも大体共通です。

再結晶で結晶を析出させるとき、鉄則があります。

1、再結晶中は静置する。振ったり動かしたりしない!

2、ゆっくり放冷する。熱いまま氷水に浸けたりして急冷しない!
 (「加熱→冷却」型の再結晶の時)

3、ホコリやゴミが入らないようにする。



基本的に再結晶では有機合成などで生成した物質を分離・精製し純度を上げるために行われます。

よって再結晶ではできるだけ大きくて、純度の高い(=不純物を含まない)結晶を得たい。

小さくて不純物を含んだ粗な結晶ではダメ。
(融点が測りにくくなるし、純度が低いのでは意味がない。)

実は、加熱した溶液を冷却し、飽和溶液になる温度よりも低してもすぐには結晶が析出しないことが多い。

このように飽和量以上の物質が溶けている状態を過飽和と言います。

物質は何か土台となる物(=核)を見つけて、そこから結晶を成長させます。

だから土台が何もない状態では過飽和になっても結晶はなかなか析出しないのです。

一方過飽和の状態では溶質が押し合いへし合いしていて、できることなら析出したいと思っています。

よって何かの衝撃で核ができると一気に析出します。

振ったり動かしたりして衝撃を与えると一気に至るところから結晶が析出してしまって小さく、不純物を含んだ粗い結晶になってしまいます。

だからゆっくり析出させるため、溶液は静置して放冷し出てきてくれるのを待つべきです。

また、氷水などで一気に冷却すると、一気に過飽和を行き過ぎて溶質が激しいフラストレーションを持つためガンガン素早くたくさんの核を作り結晶化します。

すなわち、不純物を含んだ小さな結晶が得られてしまいます。

だからゆっくり析出させるため、加熱した溶液はできるだけやさしくゆっくりと放冷すべきです。

そう、結晶作りの根本原理は「ゆっくり、やさしく」なのです。

最後に、ホコリやゴミの混入もアウトです。

ホコリやゴミは溶質にとっては結晶成長の恰好の土台、すなわち核になります。

だから溶液中にホコリが入っているとホコリを核としてどんどん結晶ができてしまいます。

たくさんホコリが入るとその分たくさんの結晶が析出し小さなものが得られてしまうし、第一ホコリが不純物。

だからホコリが入らないように注意が必要です。


ちなみに、逆にいえばうまく結晶が析出しないときは核を作れば析出させられることがあります。

例えば、ガラス棒でビーカー内壁をこする、種結晶を入れる、等です。




数センチレベルの綺麗な単結晶を得ようと思ったら、溶媒蒸発法が良いでしょう。

容器に飽和溶液を入れ、成長させたい種結晶を吊るし、ホコリが入らない程度に通気性のあるフタをする。

あとは振動のないところに数か月なり放置して溶媒を蒸発させればOK!


ホウ砂種結晶をつり下げたホウ砂飽和水溶液 2011/2/18 筆者撮影


原理は、上に述べたように結晶は核を土台として成長するということ。

核が意図的に吊るした種結晶だけならば、理想的にはそこからだけ結晶が析出、すなわち結晶の成長が起こります。

溶媒蒸発法では溶媒がゆっくり蒸発し濃縮されゆっくり過飽和になるので種結晶を核としてゆっくり成長が起こります。

「加熱→冷却」型ではどうしても温度変化が急激に起こってしまいがちなので種結晶以外の場所からも結晶化が起こってしまうことがしばしば。


溶媒蒸発による再結晶により成長した硼砂の結晶 2011/7/1 筆者撮影


溶媒蒸発法の場合、特に天敵なのはホコリ。

密栓できない分、ホコリはまず確実に入ってきます。

先ほど述べたようにホコリを核として結晶が析出し得ます。

すなわちホコリがあるとホコリから結晶が析出して、種結晶に析出する分が奪われて、結果種結晶の成長が妨げられます。

小さな穴を空けたラップ、折りたたんだティッシュ等をフタにして通気性を保ちつつホコリが入らないように工夫しましょう。



以上で一応再結晶法シリーズは終わりです。

が、次回は筆者のホウ砂の結晶作りの結果のレポートを書くつもりなので、次回も結局再結晶絡みの記事になる予定です(笑)

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