一般向け/高校生向け楽しい化け学
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昨日はバイト先の塾で日曜大工したり(ドリル等を使って机を作った)、献血に行ったり(14回目)していました。

さて今回は、前回記事「再結晶法(その1:溶解度曲線)」の続きです。


前回は、冷却により高温と低温での溶解度の差で溶液から物質を結晶として取り出せるということを書きました。

これを利用すると混合物から目的物質だけを取り出す分離操作に利用できます。


例えば、硝酸カリウム100gと塩化ナトリウム10gの混合物があるとする。

ここから硝酸カリウムだけを取り出したい。

こういうときに再結晶を使う。

塩化ナトリウムと硝酸カリウムの溶解度曲線は次の様である。




その混合物に水100gを加え60℃まで加熱すると、溶解度曲線より硝酸カリウムも塩化ナトリウムも全て溶けるとわかる。
※ 溶解度曲線を読むと、60℃の水100gには最大で硝酸カリウム109g、塩化ナトリウム37gが溶けるとわかる。

また、溶解度曲線を読むと、水100gには20℃では硝酸カリウム32g、塩化ナトリウム35.8gが溶ける。

したがってこの溶液を20℃まで放冷すると、

・ 硝酸カリウム:100g - 32g = 68g が析出。

・ 塩化ナトリウム: 溶液中には10g(<35.8g)しかないから析出しない。

よって硝酸カリウムの結晶68gのみ析出する。

あとはこれをろ過すれば硝酸カリウムの結晶が得られる。

以上より、硝酸カリウム100gと塩化ナトリウム10gの混合物に水を加えて加熱→放冷で再結晶することで、68gの純粋な硝酸カリウムを得ることができた!


一方、気づくことがあるでしょう。

そう、裏を返せば硝酸カリウムは32g溶液に溶け残っていて、無駄になってしまった。

できるだけ多くの硝酸カリウムを取り出したければ、いくつか工夫がある。

例えば、

1) もっと低温(この場合20℃よりも低温)まで冷却する。

2) (単純に)用いる溶媒(この場合は水)の量を少なくする。

3) もっと加熱(この場合60℃以上)して用いる溶媒の量を少なくする。

等。
(他にも、場合によっては溶媒を変えたり混合溶媒を使ったりすることもある。)


1) より低温まで冷却する。

冷却する温度を20℃より低く、例えば0℃にするとする。

0℃では水100gに硝酸カリウムは最大13g、塩化ナトリウムは最大35.7g溶ける。

・ 硝酸カリウム:100g - 13g = 87g が析出。

・ 塩化ナトリウム: 溶液中には10g(<35.7g)しかないから析出しない。

したがって硝酸カリウムの結晶87gが得られる。

よって先ほどの20℃まで冷却する条件(得られたのは68g)より多く結晶が得られた!


2) (単純に)水の量を少なくする。

ギリギリの量の溶媒を使った方が低温時での溶解量が小さいわけだから、多くの結晶を析出させられる。

今回は100gの硝酸カリウムがあるから、60℃では、100g(水)×100g÷109g = 91.7gの水でもギリギリ硝酸カリウム100gを全部溶かせる。
(=硝酸カリウム飽和水溶液を作れる。)

したがって、この量の水で60℃から20℃へ温度を下げると、

・ 硝酸カリウム:
 20℃では91.7gの水に 32g/100g水×91.7g(水) = 29g 溶ける。
 ⇒ 100g - 29g = 71g 析出。

・ 塩化ナトリウム
 20℃では91.7gの水に 35.8g/100g水×91.7g(水) = 32.8g 溶ける。
 ⇒ 32.8g > 10g だから析出しない。

よって硝酸カリウムの結晶は71g得られ、最初の68gより多く得られた!


3) もっと加熱して溶解度を上げて水の量を少なくする。

冷却する温度を60℃より高く、例えば80℃にするとする。

80℃では硝酸カリウムの溶解度は169g/100g水、塩化ナトリウムの溶解度は38.0g/100g水である。

よって80℃にすると水の量は 100g(水)×100g÷169g = 59.2g の水でもギリギリ硝酸カリウムを全て溶かせる。

したがって、この量の水で80℃から20℃まで温度を下げると、

・ 硝酸カリウム:
 20℃では59.2gの水に 32g/100g水×59.2g(水) = 19g 溶ける。
 ⇒ 100g - 19g = 81g 析出。

・ 塩化ナトリウム
 20℃では91.7gの水に 35.8g/100g水×59.2g(水) = 21.2g 溶ける。
 ⇒ 21.2g > 10g だから析出しない。

よって硝酸カリウムの結晶は81g得られ、最初の68gより多く得られた!


☆) 組み合わせる。加熱して水の量を減らし、より冷却する。

3)と同様に80℃まで加熱して用いる水の量を59.2gに抑え、かつ冷却後の温度を0℃にすると

・ 硝酸カリウム:
 0℃では59.2gの水に 13.3g/100g水×59.2g(水) = 8g 溶ける。
 ⇒ 100g - 8g = 92g 析出。

・ 塩化ナトリウム
 20℃では91.7gの水に 35.7g/100g水×59.2g(水) = 21.1g 溶ける。
 ⇒ 21.1g > 10g だから析出しない。

よって硝酸カリウムの結晶は92g得られ、最初の条件での収量68gよりずっと多く得られた!


以上より、冷却する温度はできるだけ低くし、かつ加熱時の温度を上げるなどすると再結晶での収量を高めることができる。

・・・っというのが高校の教科書にはあんまり載ってなくて残念。

これが実験のテクニックなのである。

今回の計算ではわかりやすく塩の混合物を題材にしたが、有機合成で有機物の混合物(反応物の残り+生成物+触媒等)から目的の生成物を取り出す際も同じ。

できるだけ多くの生成物を取り出したいわけである。


ついでに一点注意。

溶媒の量を少なくしすぎたり、冷却しすぎたりすると他の物(上の例では塩化ナトリウム)も析出したりするので程々にしなければならない!


次回も再結晶のさらに続きを書きます。

ちょっとマニアックですが、綺麗で大きな結晶の得方、育て方についての予定です。

続き「再結晶法(その3:綺麗な結晶の作り方)」

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