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一般向け/高校生向け楽しい化け学
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今日はアルカンの異性体を求める式について考えていました。
(ホントは期末テストの試験勉強しないといけないんだけどね!!)


高校の定期テストでアルカンの異性体の数を問われることは良くあります。

炭素数を代入したら異性体の数がすぐ計算できるような公式があったらいいなと考えたことはありませんか?


一方、大学入試ではアルカンの異性体数はあまり問われることはないように感じます。

というのも、炭素数5くらいまでなら覚えたらしまいになってしまうので、出題しても意味ないからでしょう。

覚えていなくても炭素数5くらいまでなら少し考えたら簡単に数え上げられてしまうし。

だから普通は覚えようのない不飽和炭化水素や、酸素が入ったものの異性体が問われますね。


しかし!

炭素数が増えると異性体の数は爆発的に増加するので、実はアルカンの異性体の数を求めるというのはある意味めちゃくちゃ難しい問いでもあるのです。
(逆にいえば、そうだから炭素数5くらいまでしか問われないのですが。)

例えば、炭素数20のアルカン(イコサン)の異性体の数はいくつか数えられますか?

アルカンの、炭素数nに対する異性体の数I(n)は次のようになります。

n I(n)   n I(n)   n I(n)
1 1   15 4347   29 1590507121
2 1   16 10359   30 4111846763
3 1   17 24894   31 10660307791
4 2   18 60523   32 27711253769
5 3   19 148284   33 72214088660
6 5   20 366319   34 188626236139
7 9   21 910726   35 493782952902
8 18   22 2278638   36 1295297588128
9 35   23 5731580   37 3404490780161
10 75   24 14490245   38 8964747474595
11 159   25 36797588   39 23647478933969
12 355   26 93839412   40 62481801147341
13 802   27 240215803      
14 1858   28 617105614      

 

アルカンの異性体数は急激に増加する。
アルカンの異性体数は急激に増加する。
 

ということで、人間が普通に異性体を数えられるのはn=7くらいまで、徹夜で頑張ってせいぜいn=10まででしょう。


では本題、異性体の数を算出する関数についてです。

上の異性体数、例えばn=40のときのI(n)=約60兆、はもちろん人間が数えたものではありません。

だから要するに、

異性体の数を算出する数式はあります。


が、残念ながらここにさらっと書けるような代物ではないです。

異性体の数を計算する(すなわち点と点の結び方を数える)には、超高等な数学;グラフ理論が用いられます。

他にも漸化式を立てたり色々あるようですが、難しすぎて数学の苦手な筆者にはわかりません。

特に漸化式を立てるというものに、次のようなもの

http://www.sccj.net/CSSJ/jcs/v5n2/a3/document.pdf』日本コンピュータ化学会、入谷寛(2011/07/31 引用)

がありますが、ちらっと見ただけでもう激ムズなことがわかってしまいます。

しかもこの計算はコンピューターを使ってもn=40まで計算するのに42分を要したらしいです。

なんしか、人間でもコンピューターでも、異性体の数を出すというのはとても難しく時間のかかることなのです。


で、筆者は考えました。

数えれるくらいのnとI(n)の値を使って近似曲線の方程式を求めることにより、もっと大きなnのときのI(n)の値を簡単な代入ですばやく見積もることはできないか、と。

ある種の実験的手法です。

エクセルを用い、1≦n≦10で、nに対してI(n)をグラフにプロットし、6次近似をすると次のような方程式が得られました。

I(n) ≒ 0.00166666666672199000 n6 - 0.04551282051681940000 n5 + 0.50705128215514600000 n4 - 2.82954545510779000000 n3 + 8.27310024236186000000 n2 - 11.53706306053130000000 n + 6.66666698250509000000


相関係数の2乗:R2 = 0.99988322061694500000

この近似曲線をF(n)とします。

するとnと真のI(n)、近似曲線で求めた異性体数F(n)の小数第1位を四捨五入したものは、次のようになります。

 
n I(n) F(n)
1 1 1
2 1 1
3 1 1
4 2 2
5 3 3
6 5 5
7 9 9
8 18 18
9 35 35
10 75 75
11 159 161
12 355 336
13 802 666
14 1858 1253
15 4347 2238
16 10359 3819
17 24894 6257
18 60523 9893
19 148284 15161
20 366319 22603

1≦n≦10ではうまくいったけど肝心のn≧11では全く役に立たなかったよ・・・orz


難しい・・・・

対数取って桁数だけでも求めようとしたけど、やはりずれが大きい。

n=10までの実験値(人間が数え上げられる数)では妥当な曲線を得るのは難しいととわかりました。

一方、I(n)の対数を取ると、nが大きくなるとlog{I(n)}はほぼ直線に乗ることがわかりました。

nとlog{I(n)}の関係
 nとlog{I(n)}の関係
 

数学の神秘ですねぇ。

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今日は実験のプレゼンの割り当てが発表されました。

筆者は以前やった、サリチル酸のアセチル化によるアセチルサリチル酸の合成のプレゼンをすることになりました。
「今日の分子No.57 :アセチルサリチル酸」参照)

近年、大学ではプレゼンの練習に時間を割くようになっているようです。

というのも、いくら勉強ができたとしても、発表能力・チームワーク力等がなければ結局社会に出ても役に立てないからです。

発表能力(表現能力)を鍛えるのには実験のプレゼンは最適です。

企業の入社試験の時も自分が論文に書いた研究についてのプレゼンをやらされたりするようです。



さて、いつも書いているように筆者は無駄に物質の構造や実験装置のお絵かきが好きです。

プレゼンに向けてアセチル化反応装置の図をざっと試作してみました。


アセチル化反応装置の図(試作)。ChemSketchAdobe Illustratorで作成。


リービッヒ冷却管は「蒸留の時に使う」と高校で習いますが、実際は反応容器(ナス型フラスコ)に縦に刺して使うこともかなり多いです。

これは「還流」という加熱操作で、加熱で溶媒が沸騰して気化しても冷却管で冷却されて液体に戻って、またフラスコに落ちてくるから減らなくて合理的、というためです。

ちなみにこの時も「冷却水は下から入れて上から出す」はもちろん鉄則です。

まあ実は上の図での操作では実際は温度が低い穏やかな環境で反応を行っているので、「還流」とまでは気化・液化が起こっていないので水を流す必要もあまりないのですが、念のため。


あと、「ドラフト」と図中にありますが、ここではこれは要するに”排気口”のことです。

反応によって有毒ガスや刺激性ガスが出る場合は、実験者が吸い込んでしまわないように排気口まで直接ゴム管で誘導します。

この実験の場合ですと、冷却管があるとはいえ、溶媒である刺激性の無水酢酸や副生してくる酢酸が出てくるため付けています。


ちなみに、ナス型フラスコと冷却管をつないでいるところの横に描いてる”黒いの”はバネです。

冷却管やナス型フラスコには”爪”がついていて、ここ同士をゴムやばねでひっかければしっかり連結してくれるということです。
(バネ等を付けなければもちろんすっぽ抜けます。)


さてさて、今日はホウ砂の結晶作りのレポートをしたいと思います。

かねてより筆者はホウ砂の結晶作りに励んでいました。

まずはおさらいから。


◎ 2011年2月18日(約5ヶ月前)実験

はじめに結晶作りを始めたのは2011年2月18日です。
(2011/2/19の記事「結晶作りは難しい」参照)

ホウ砂Na2B4O5(OH)4・8H2Oの飽和水溶液に種結晶を吊るし溶媒蒸発法による再結晶で種結晶の成長を試みました。


ホウ砂種結晶をつり下げたホウ砂飽和水溶液 2011/2/18 筆者撮影


残念ながら大失敗でした。

というのも

・種結晶とエナメル線の結びつけが弱く、落ちてしまう。

・種結晶が少し溶けてしまう。
(ホウ砂飽和水溶液が飽和しきってなかったか、大きく過飽和状態になったからか?)

というのが原因でした。

そして次に改良を加えました。


◎ 2011年4月30日(約2ヶ月前)実験

次に結晶作りを試みたのは4/30でした。
(2011/4/30の記事「続・結晶作り」参照)

種結晶とエナメル線をしっかり結びつけることにしました。

手順としては

1)エナメル線をアルコールランプで加熱

2)それを種結晶に突き刺して融解させ先端を埋め込むことで固定

でした。


種結晶付きエナメル線 2011/4/30 筆者撮影


また、

・ホコリが入らないようにしつつ通気性を持たせるフタが必要

・振動がないところに静置する

という結晶作りの原則があるので、それを考慮しつつ次の4パターンで5つの容器に仕込みをしました。

(A) ペットボトルの口部分を切断し作ったPETカップにティッシュを被せフタにしたもの。
  (×2個)

(B) ビーカーに、フタとして(A)で副産した穴が開いたドーム状のPETボトルの口部分を被せたもの。

(C) 試験管(フタなし)

(D) ツナ缶の空き缶にティッシュを被せたもの。

です。

また、全て振動のないタンスの上に静置しました。

結論を言うと、(D)ツナ缶だけ成功

(A)~(C)はやはり種結晶が溶ける&落ちてしまいました。

さらに、(B)はホコリがやたらと入ったし、(C)は口が小さすぎて蒸発しない。

(B)は十分蒸発はしたが、種結晶が溶け落ちたのが致命傷。


ツナ缶の条件では径が3mm程の種結晶から、径がおよそ1.5cmの大きな単結晶に成長できました。


溶媒蒸発による再結晶により成長した硼砂の結晶 2011/7/1 筆者撮影


ツナ缶は口が広かったので水がよく蒸発し、ティッシュは通気性が良好でかつホコリ耐性がかなり高かったのが良かったようです。

強いて言うなら、放置し過ぎて全ての水が蒸発してしまったことが反省点です。
(だから底にたくさんの結晶が析出してしまった。溶液が減ったら飽和水溶液を足して結晶が浸かっている状態を保つべきでしょう。)


以上より、いくつかわかったことがあります。

・エナメル線と種結晶は、溶接などでしっかり繋げるべき。

・種結晶は少し大きめのが良い。
 小さいと落ちたり、過飽和で少し解けたときに消え去ってしまう。

・容器は口が大きいのが蒸発しやすくてよい。

・フタはティッシュが最適。通気性、耐ホコリ性が高い。

・溶液は全て蒸発させないよう、ときどき足す。
 干からびると底に粗な結晶が析出して邪魔になる。
 また途中で結晶の頭だけが溶液から出る形になるから形がいびつになる恐れがある。

です。

ちなみに大きめの種結晶は、飽和水溶液をホコリが入らないように放っておいて水を蒸発させると容器の底にそれなりに生じます。


以上です。

種結晶を少し大きめのを使ってもう少し実験してみます。

ちなみに、ホウ砂の結晶作りはなかなか難易度が高いのではないかと思う今日この頃。

ホウ砂は水和水を持った結晶であり、加熱をしたり空気にさらしたりすると結晶水を失う。
(後者がいわゆる「風解」。)

だから加熱したエナメル線を突き刺すと、水が飛んでやたらと大きな穴があいてスカスカになり繋げるのが難しい。

ミョウバンなんかの結晶作りはポピュラーですが、これは結晶性が高く、かつ温度での溶解度差が大きいので「加熱→冷却」型の再結晶で綺麗に大きく結晶が育つからのようです。

まず難易度の低いヤツで練習すべきかもしれません。


今日はお絵かきをしていました。

以前『理科はお絵かきする学問』でも書きましたが、本当に絵は考えを伝える良いツールです。

先日ゲルを合成したのでそのレポートを書いていたのですが、今日は主に図を作っていました。

図を入れると見栄えも良くなるし、文章読まなくてもぱっと見ただけで何が書いてあるか/言いたいか大体わかるので、積極的に入れようと思っています。
(というか、この手のお絵かき筆者の趣味の領域なので、無駄に書いていたりもするのですが・・・)

例えば今日はこんなお絵かきをば。



作ったゲルの構造の模式図 by Adobe Illustrator


作った架橋ポリアクリルアミドゲルの構造の模式図。

やはりベクタ式の絵図の作成ソフトはAdobe Illustratorでしょう。

ベクタ式(ベクトル式)とはビットマップ式(普通の画像)と違って拡大してもぼやけたりギザギザにならない、パソコン上の理論的な曲線で描かれた図のことです。

レポートなど印刷するときはベクタ式で書くと綺麗にできます。

ちなみに、書いたときはベクタ式でしたが、ここにアップした上や下の画像はビットマップ式にしているので拡大したらギザギザになります。

ベクタ式はMSワードやエクセルやIllustrator上で使える高等な画像なのです。


他にも、化学反応式もパソコンで綺麗に書けます。


架橋ポリアクリルアミドの生成反応式 by ChemSketch


上のゲルの具体的な構造(の一部分)が生じる反応式・簡易的な反応機構の一部。

ChemSketchがあれば化合物や反応式を書くのが怖くない。

ChemSketchは化学レポート作成ソフトで、最高に特化した高機能ソフトです。

フリーウェアなのにその辺のシェアウェアよりずっと高機能なのが驚き。

ChemSketchもベクタ式の図を書くことができ、MSワード等と連携させることができます。

ちなみに、ChemSketchは化合物や実験器具などのテンプレートが入っていて、実験操作も簡単に書けます。


ゲルの合成操作 by ChemSketch


ChemSketchは化学系の学生には本当にオススメです。
(英語のソフトなので、最初は『ChemSketchで書く簡単化学レポート(ブルーバックス)』で勉強するのがオススメ。)

ちなみにAdobe Illustratorは8万円くらいして高いです。

筆者のは古いから新しいのが欲しい・・・・8万・・・出そうかな・・・


フェーリング反応:
フェーリングA液(硫酸銅(II)五水和物の水溶液)とフェーリングB液(酒石酸カリウムナトリウムと水酸化ナトリウムの水溶液)を混ぜたフェーリング液を作る。
アルデヒドをここへ入れると酸化されカルボン酸になり、Cu2+イオンが還元されてCu2+になり酸化銅(I)の赤色沈殿が生じる反応。
アルデヒドの検出ができる。


銀鏡反応:
アンモニア性硝酸銀水溶液(トレンス試薬)にアルデヒドを入れると酸化されカルボン酸になり、銀(I)イオンが還元されて金属銀になって試験管の内側に銀が鏡のように析出する反応。
アルデヒドの検出ができる。


一方・・・

アルデヒドでも、ギ酸HCOOHやベンズアルデヒドC6H5CHOはフェーリング反応を起こさない!(と多く書かれている。)

高校化学でもよく参考書等に載っているようだ。

ちなみにギ酸がフェーリング反応を示さない(より正しくは"示しにくい")のは、ギ酸イオンが銅イオンと安定な錯体を作るからとか何とか。

ベンズアルデヒドがフェーリング反応を示さないのは、フェーリング溶液はアルカリ性であるが、アルカリ性条件ではカニッツァロ反応(ベンズアルデヒドが自己酸化還元反応してしまってベンジルアルコールと安息香酸になる)とよばれる反応が起きてしまうためである。
(と書かれていることが多い。ちなみに銀鏡反応もアルカリ性であるが、銀(I)イオンは酸化力が強いのでうまくいくとかなんとか。)


しかし!

先週学科の友達がベンズアルデヒド(と思われる物質)で見事フェーリング反応を起こしたらしい。

う~む。

根性使って反応温度うまいことしたらベンズアルデヒドでもフェーリング反応することができるのかもしれない。
(もしくはソイツの使ったサンプルがベンズアルデヒドでないかである。)


実は反応条件(反応温度・物質の濃度 etc)を変えると、化学反応の結果が変わることは多々ある。

例えば、ギ酸は実はフェーリング反応を「起こさない」ではなく「起こしにくい」であって、条件いじって頑張ったらフェーリング反応できるらしい。
(むしろ実はいじらなくてもちょっとは起こっているらしい。)

また、ホルムアルデヒドは普通にフェーリング反応を示す(要するに酸化銅(I)を沈殿する)と書いてあるが、還元力が高いため濃度が高かったりすればむしろ金属銅まで還元、すなわち銅鏡反応とでも言えそうな結果を示すらしい。

このように、反応の結果は一概に言えるとは限らないのだ。


今日フェーリング反応関係でネットで検索かけてみたら、幾年前のセンター試験の「出題ミス」(と彼らは言う)を罵り叩く掲示板を見つけた。

なんでも、問題では「フェーリング反応を示す物質」なるものに対して選択肢から「ギ酸」を選ばなければならなかったらしい。

で、彼らは「示さない。終了。」とか「錯体ができるから。○○○参考書にも書いていた。以上。」とか「ギ酸がフェーリング反応しないのは常識。出題者は馬鹿」とか書いていたのですよ。

なんだかすごく残念だと思いました。

これは「化学」でしょうか。

教科書や参考書に書いてあったことを覚えて問題の答えを選ぶ・・・

筆者にはこれが「化学」もしくは「自然科学」しいては「学問・学び」とは思えません。

なんだか、現代日本の中学・高校教育の、こういう冷めた思考を植え付けるような方式がいわゆる理科離れなるものに繋がっているのかもしれないと思いました。


どうでしょうか?

好奇心を持って、頭を使うのが科学だと思います。

だから

「カスタードクリームは砂糖ではなく食塩を使っても作れるのだろうか。負に帯電したタンパク質をプラスのナトリウムイオンで引いて○×△□・・・」

と悩み、現在資料を漁っているJerryさん(梅酒の化学の人)は、罵る彼ら「ハイレベル化学受験生」よりもずーーーっと「化学者」であると思います。
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