一般向け/高校生向け楽しい化け学
[152]  [151]  [150]  [149]  [148]  [147]  [146]  [145]  [144]  [143]  [142


今日は酸素分子を紹介します。

「そんな簡単な分子!」っと思うかもしれませんが、酸素はなかなか複雑な難しい分子です。

塾で授業してると、高校化学ではO=Oという構造式を習うのでそう教えますが「実は違うんだよね~・・・」と思いながら教えています。

まず物性から、そして酸素の本当の姿を説明しましょう。


今日の分子 No.51 酸素 O2



Jmolで描画(空間充填モデル)


酸素の単体。

無色無臭の、水に少し溶ける気体。

液化酸素は淡青色、固体は青色である。
(酸素分子の会合体が生じていると予想されている。)

酸素は気体でも液体でも固体でも常磁性体であり、特に液体酸素が磁石に引き寄せられてくっつくのは有名。

同素体にO3がある。
(酸素または空気中で無声放電すると生じる。)


非常に身近な分子であり、空気中に約20%存在する。

生物は酸素を吸い、細胞内で燃焼反応を起こすことで化学エネルギーを得て生命活動を行う。

植物は光合成により二酸化炭素と水に光エネルギーを与え反応させ、炭水化物(ブドウ糖)を作り出す。

そのとき副産物として酸素を生じる。

6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6H2O + 6O2
(この反応式の両辺に水があるのは、まず12個の水を消費して反応が始まり、結果最終的にたまたま6個の水が再生しているということをあらわしています。)

中学生の理科の引っ掛け問題でよく出るが、日中植物も酸素を吸って呼吸している。

ただ、日中は光合成が活発なため、酸素の消費より生産のほうが多い。


通常、酸素は酸化剤として反応する。
(ただしフッ素や六フッ化白金との反応のときのみ還元剤として振舞う。)

酸素は化学的に活性な物質であり、希ガス、ハロゲン元素、貴金属元素(金・白金など)以外の全ての元素と直接化合して酸化物を作る。

特に熱や光を出して酸素と化合することを燃焼という。

ある物質がそれ以上酸素と化合しなくなるまで燃焼することを完全燃焼という。

例;C + O2 → CO2

一方、燃焼反応の生成物がまだ燃焼できる化合物であったとき、その燃焼反応を不完全燃焼という。

例;2C + O2 → 2CO

ただし、普通に燃やしても進まない酸素との化合は普通燃焼反応といわない。

例;2CO2 + O2 → 2CO3
(コロナ放電で生じる。二酸化炭素は不燃物であり、この反応は燃焼ではない。)

燃焼反応は一般に複雑であり、多段階の素反応から成る。

また、酸素濃度や圧力が変わると可燃物の発火のしやすさが変わるなどの重要な現象がある。

そのため「燃焼学」という独立した学問・学会があるほどである。


酸素の実験室的製法としては過酸化水素の分解がある。

このとき、触媒として二酸化マンガンやカタラーゼを使う。

2H2O2 → 2H2O + O2

工業的製法は、主に空気の液化分離法である。

また、中・小規模では吸着分離法(ゼオライトに酸素を吸着させ、分離する方法)も使われ、膜分離法による酸素富化等も行われている。


他にも、酸素濃度・酸素ラジカル除去能力と老化速度が関係していることや、酸素元素発見のもととなった「フロギストン説」等の逸話も面白いが、今日は割愛する。



では、本題(?)。

高校では酸素の電子式、構造式は次のように教わる。




高校で習う酸素分子


が、これは現実的ではない!

実際、常温常圧の我々の周りの空気中に、上のような構造をした酸素分子はほとんど存在していないという。

驚くべきことに、実際的に存在している酸素分子は次のようにビラジカル構造(ラジカルを二つ持った構造)をしている。




酸素分子の実際的な構造


普通、ラジカルは不安定であり、しかも分子内に二つもラジカルを持つ分子なんてめったにない。

理由は、量子化学的に考えると明快だが少し難しい。

次のように古典的に考えるとわかりやすいかもしれない。
(が、この古典的な説明は本当みたいな嘘みたいな本当みたいな嘘って感じで、誤魔化した説明であるが・・・)

酸素原子は孤立電子対を二つも持っているので、酸素原子二つが近づくのは電子同士の反発を招き不利である。

なので、二重結合せず単結合してちょっと原子間に距離を置くことでつりあいを保っている。

もしくは逆に、二重結合するほどの距離には反発により近づけない、と考える。

このように、酸素の本当の姿はビラジカルなのだ。

通常状態でラジカルだから、酸素が関係する多くの反応はラジカル反応で進む。

たとえばクメン法のクメンヒドロペルオキシドの生成反応や、脂肪の酸化などは酸素がラジカルであると認めると生成物が-O-O-結合を持つことが理解できる。

また、ラジカル(不対電子)を持つ物質は磁性を持つので、酸素が常磁性であることも説明できる。

環境問題や健康などで話題になっている「一重項酸素」や「三重項酸素」という物も、上の構造式から理解できる。
広島大学大学院の生物圏科学研究科のページにわかりやすく載ってます。)


以上。

酸素は実は安定な分子ラジカルだったのです。

学校で習うことが必ずしも全て「妥当」であるとは限らない。
(「ウソ」ではなくとも。)

だから酸素を教えるとき「う~ん・・・」と思いながら教えるのですが、勉強にはステップというものがあるので、まずは基本の八電子則で構造を考えるんですよね。


◎ 参考

・ 『高圧ガス保安技術 第8次改訂版』高圧ガス保安協会著(2011)

拍手

ブログ内検索
PR
Twitter-bot

Twitter @Chemis_twit (管理人)
Copyright 放課後化学講義室 All rights reserved



< カウンター since 2010/9/24 >