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一般向け/高校生向け楽しい化け学
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今日Jmolの分子データベースを特に意味もなく見てると、こんな面白い分子を見つけたので掲載。

「今日の分子」No.13、キュウリアルコール C9H15OH


Jmolで描画


キュウリアルコール・・・変な名前(笑)

IUPAC正式名称を付けてみると

ノナ-(E)-2-(Z)-6-ジエン-1-オール

どっちにせよ変な名前(笑)


全く知らない分子だったので、とりあえずネットで検索。

すると信頼できそうな特許のwebページのハウス食品の項やその他HPが引っかかった。

とりあえず、キュウリアルコールはその名の通りきゅうりに含まれているらしい。

そしてきゅうりの香りはこの分子が原因らしい。

ハウス食品はこのキュウリアルコールとキュウリアルデヒドなどなどを混ぜてわさび香味調合品の特許を取っているらしい。

要するにこの分子は食品にわさびの香りを付けるのに使える。

マイナーな割りに結構役に立っている分子だ。

身近に使われていても知らない分子は山ほどあるのが面白いところ。

色んな分子のデータが入っている講談社ブルーバックス文庫「パソコンで見る動く分子辞典」の付属ソフトJmol(ブルーバックス版)はオススメ。


>> 芦髙實様への拍手レス


◎ 参考
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昨日は脂肪酸について紹介したので、今日はそれと関連して脂肪酸とグリセリンから成る油脂を紹介します。

「今日の分子」No.12、ジパミトイルカプリリルグリセロール CH2(OCOC15H31)CH(OCOC15H31)CH2OCOC7H15


Jmolで描画, クリックで拡大


3つ脂肪酸とグリセリンから成るエステルを油脂といいます。

ちょうどバナナの房のようで、ヘタのようなグリセリンにバナナのように3つ脂肪酸がぶら下がってます。

上の分子では、右下の部分がグリセリンで、そこに2つのパルミチン酸(C15H31COOH)と1つのカプリン酸(C15H31COOH)が縮合しています。

分子の名前を見てみましょう。

グリセロールとありますが、これはグリセリンのことです。

名前は要するに、2つのパルミチン酸・(1つの)カプロン酸とグリセリンのエステル、ということです。

昨日「今日の分子 No.11」で書いたように、これに水酸化ナトリウム水溶液を加えるとけん化されて3つの脂肪酸ナトリウム(パルミチン酸Na×2 + カプリン酸Na)とグリセリンが生成します。


昨日 リンスインシャンプーの化学 をアップしました。

日ごろ使っているシャンプーやリンスですが原理を知っている人は少ないと思います。

リンスインシャンプーなんかは実は結構面白い化学的現象を組み合わせてるんで、ぜひぜひ読んでみてください。

で、それに出てきた分子をちょっと紹介します。


「今日の分子」No.11、ラウリン酸ナトリウム C11H23COONa


Jmolで描画


名前を正しく言うとドデカン酸ナトリウム。

ラウリン酸やステアリン酸等、長いアルキル基にカルボキシル基(-COOH)が付いたカルボン酸を脂肪酸といいます。

これらの脂肪酸とグリセリンとのエステル(酸とアルコールが脱水縮合したもの)は動植物の油脂に含まれるため、脂肪酸と呼ばれるのです。

脂肪酸とグリセリンのエステルに水酸化ナトリウム等を加えると加水分解して脂肪酸ナトリウムとグリセリンになります。

またこの反応を"けん化"といい、"けん"はセッケンの"けん"です。

要するにセッケンになるという意味で、ラウリン酸ナトリウムもセッケンに使われます。

なぜラウリン酸ナトリウムがセッケンとして機能するかは リンスインシャンプーの化学 を見てみてください。

ちなみにこのけん化反応やセッケンの原理は高校化学でも重要な単元なのでちゃんと理解すること。


「有機化学の歴史と化学者 第四弾」

4日間続けた『有機化学の歴史と化学者』特集の連載一旦ラスト。

今回の話題は「ノーベル賞の設立」

取れに伴い、関連する分子を「今日の分子」としてあげます。

「今日の分子」No.10、ニトログリセリン C3H5(ONO2)3


Jmolで描画


もう少し正式な名前を言うと三硝酸グリセリン。

すなわちグリセリンと硝酸3つからなる硝酸エステルということ。

よく間違われるが、ニトログリセリンは「ニトロ」と名が付くがニトロ化合物ではない。

ニトロ化合物とはR-NO2の部分を持つ有機化合物で、ニトログリセリンはR-O-NO2という構造を持っている硝酸エステルである。

しかしニトロ化合物も硝酸エステルもとても不安定で、さらに分子内に酸素原子をたくさん持っているため空気がなくとも少しの摩擦や衝撃で爆発する。

ニトログリセリンもとても不安定であり、1846年に初めて合成されたときわずか一滴を加熱するとビーカーが割れて吹き飛んだという。

そのときはあまりにも不安定であるため爆薬としての実用化は不可能であるとされた。

しかし不可能を可能にする者が天才と呼ばれる者である。(と思う。)

1866年、スウェーデン生まれの化学者アルフレッド=ノーベルはニトログリセリンを珪藻土にしみこませて安定化し、ダイナマイトを発明した。


ノーベルはダイナマイトの発明前、ニトログリセリンの研究中に弟と5人の助手を失っている。

彼は安全な爆薬を作るため努力し、そして衝撃などに安定なダイナマイトを開発した。

しかしダイナマイトは戦争に使われ、むしろ人殺しの兵器として使われ、さらに彼は皮肉にもそれで莫大な利益を得てしまった。

自分の発明が人殺しに使われ心を痛めた彼は、その財産を使ってノーベル賞を設立した・・・

・・・っと子供向けの伝記や、お話で言われたりするが、これはあまりにも美化しすぎである。

実際は実業家として武器製造工場を買い取ったり、ダイナマイトの軍事利用の利権をかけて裁判を起こしたこともあった。

彼の恋人が平和主義者だったことが、ノーベル平和賞の設立のきっかけになったとかなんとか。

ちなみに「ノーベル数学賞」がないのは彼の知り合いにダイッキライな数学者がいたからだとか。


ニトログリセリンは個人的に思い入れが強い物質です。

これはダイナマイトとして殺人兵器に使われることが有名だが、実は人の命を助ける薬にもなる。

ニトログリセリンには血管拡張作用があり、重要な強心剤である。

子供のころこれを知った筆者はその二面性にとても複雑な思いを抱いた。


「悪い化学物質」や「正義の化学物質」なんてものはない。

化学物質を正しく使うも悪しく使うも人間次第である。


「有機化学の歴史と化学者 第三弾」

今日は特異な性質を示す不飽和化合物;芳香族炭化水素の発見について。

「今日の分子」は高校でも習い、かなり重要であるその代表例のベンゼン。

「今日の分子」No.9、ベンゼン C6H6


Jmolで描画


正六角形に並ぶ炭素同士が単結合と二重結合を交互にした分子。

そしてその単結合-二重結合はクルクルと回る、と表現される。

もしくは「1.5重結合」をした分子として表現される。

現代の量子化学的に言うと厳密には後者の表現が事実に近い。

ベンゼンの構造


ベンゼンの面白いところは二重結合があるはずなのに普通の条件では付加反応をしない点にある。

たとえば二重結合を持つヘキセンでは、臭素水を加えるだけでもジブロモヘキサンになってしまう。

しかしベンゼンでは、むしろ置換反応が起きてしまう。

なぜかというと、「二重結合」ではなく、クルクル回っているようなイメージの「1.5重結合」になっていて、結合が安定化しているからである。


この分子を最初に発見したのは、実は電磁誘導の法則で有名なファラデーである。

しかし彼にはその化学式や構造を解くことはできなかった。

その9年もの後、ミッチェルリッヒという化学者がC6H6という分子式を明らかにした。

しかし彼にも構造はわからなかった。

その後30年以上にわたりいくつかの構造式が考案されたが、どれも駄目だった。

なぜこんなにも苦労したのだろうか。

それはベンゼンが不飽和結合を持っているだろうのに、付加反応をしなかったからである。

当時は全くそれが理解できず「不飽和結合はないのだろう」と考えたが、それには無理があったからである。

しかし1865年、ケクレによってついにその構造が考案された。

「二重結合と単結合が交互に並び、それがめまぐるしく回っている」というケクレ構造式。

そして、だから二重結合としての性質は変わっているという理論である。

今日は「回っている」というのは間違っていて、常にその平均、まさに「1.5重結合」をしていると考えられている。

しかし彼の理論は今となってはその点少し微妙であるが、量子化学のなかった当時で考えると理にかなっていると言えた。

ベンゼン・ベンゼン環は有機化学で非常に重要なものであり、この発見でベンゼン置換体の異性体の数は矛盾無く説明できるようになり芳香族化合物の整理・体系化が可能となった。


ケクレのフルネームは「フリードリヒ・アウグスト・ケクレ・フォン・シュトラードニッツ」である。

長い・・・覚えれねぇ・・・

もし筆者がこの名前なら、テスト5教科受けたらひとつは自分の名前のスペルを間違える自信がある。

また、彼のベンゼン構造式の発想について、「夢の中で自分の尾を噛んだ蛇がグルグル回っていた。」という逸話は非常に有名である。

あまりにも有名すぎる伝説で、筆者の高校化学の教科書にも載っていた。

しかしこれは彼が自分の講義にユーモア性を持たせるための持ちネタとしてでっち上げたウソ話だと言われたりするが、本人がそう言ってるんだしまあいいじゃないかと思う。


彼は実は昨日紹介したリービッヒの弟子である。

彼は最初ギーセン大学に建築学を学びに入学した。

当時ギーセン大学にはリービッヒが勤めていた。

彼はリービッヒの有機化学の講義を聴き、とても感動して一旦退学し、有機化学専攻で入りなおしリービッヒの門下生となった。

彼は他にも炭素の原子価が4であるなど、重要な発見をしている。


気づいたんだけど、この3日間は化学史の話をしているというよりか、リービッヒにまつわる筆者のダイスキ化学者特集になってしまっている気がする・・・

特にリービッヒについては一日で書ききれないほどネタがある。

細かいことは今度「化学者特集」の項目を作ってまとめようかな。

若干脱線気味なことだし、この「有機化学の歴史と化学者特集」はとりあえず明日書いて休刊にしようかな。
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