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一般向け/高校生向け楽しい化け学
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「【◎◎の】△△【××】」というフォーマットのブログ等の表題が流行っているらしいので便乗。


今日は「元素鉱物」と呼ばれる鉱物について少しだけ紹介。
(数時間前に岩石マニアの或るオジさんと喋ってたので、そんな気分なのです。)

元素鉱物とは、単体元素(と、もしくは合金)から成る鉱物である。

普通、鉱物は酸化物(例:Al2O3;ボーキサイト)やケイ酸塩(例:Fe2SiO4;鉄カンラン石)等で存在している。

これらを電気分解したり還元したりして、例えばボーキサイトからアルミニウムだとか、磁鉄鉱から鉄だとか、単体を得る。

が、世の中には元素そのもの、すなわち単体の塊の鉱物もある。

例えば黒鉛C、ダイヤモンドC等は良く知られている。

自然金Au、自然白金Pt等、イオン化傾向の小さな金属は単体で得られる。

また、自然アンチモニーSbや自然砒As等の非金属元素も単体で鉱物として得られることがある。

元素鉱物は多く「自然○○」という名の付け方をされるようです。


中でも面白いと思うのは、自然水銀。

なんと、単体の水銀の鉱物があるのです。

もちろん液体です。

写真を見ると、岩石の表面に小さな水銀滴がついています。

岩の隙間にしみだしていたりするらしいです。

とても不思議。

北海道で採れるらしい。

金属の精錬技術は高等で難しいですが、水銀はもともと単体で得られるので、太古の昔も水銀は単体で簡単に得ることができたようです。

だから平安時代に奈良の大仏が作られた時、単体の水銀を使うことができたのでしょうか。
(水銀に金を溶かし(アマルガム)、金メッキを施すために使ったようです。)


ところで、岩石の分析法の一つに「舐める」という操作があるらしいです。

舌は敏感なので、舐めれば粒の大きさがわかり、砂岩かレキ岩か・・・等がわかるらしいです。

が、岩石学者は命知らずなのでしょうか。

もし舐めたのが自然砒とか自然水銀だったらどうするつもりなのでしょうか。

「ぺろっ!しみ出す液体・・・これは自然水銀!!」

なんて、わかってしまった時点で最悪の状況です。


岩石学者でない人たちは、くれぐれも迂闊に岩を(物理的な意味で)舐めないようにしましょう。

もしかしたら猛毒の元素鉱物かもしれません!


◎ 参考

・ 岩石マニアのオジサンのお話
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最近身の回りでガソリンの話題が多いので、ここでちょっと紹介してみます。

「オクタン価」とか「ハイオク」等という、どうにもアルカンに関係ありそうな単語がガソリンスタンドに書かれています。

一体何のことでしょうか。

(比較的)安い「レギュラー」と高い「ハイオク」のガソリンの違いは?

そして「オクタン価」の「オクタン」はいわゆる”オクタン”(CH3(CH2)6CH3)ではないのだ!!


今日の分子 No.56 イソオクタン (CH3)3CCH2CH(CH3)2


Jmolで描画


IUPAC正式名称:2,2,4-トリメチルペンタン。

分子式がC8H18の枝分かれアルカンであり、直鎖のオクタン(CH3(CH2)6CH3)の構造異性体。

常温で常温では無色透明の液体。

ガソリンの成分である。

ガソリンは炭素数5~10くらいの炭化水素の混合物で、原油を「化学変換」して得られる。

ガソリンの詳しい組成は
ガソリンの成分の詳細分析』, シグマアルドリッチ社, 2011/06/11引用
を参照。


さて、ガソリンの一成分のイソオクタンは「オクタン価」を決める指標となっています。

オクタン価とはガソリンのアンチノック性を表す指標です。

まず「アンチノック性」とは;

車のエンジンでは、気化したガソリンと空気をシリンダー内に吸い込み、圧縮しプラグで点火して、この爆発により運動エネルギーを生み出している。

一方、点火プラグで点火する前に自然着火してしまうと、エンジンから「コンッ!」とか「カラカラ」という異常な音が出る。

これをノッキングという。

ノッキングが起こると燃費が悪くなり、場合によってはエンジンの故障などにつながる。

なので、アンチノック性(ノッキングしにくい性質=自然着火しにくい性質)の高いガソリンが求められる。

一般に炭素数が等しい場合は、芳香族>枝分かれアルカン>ナフテン>アルケン>直鎖アルカン、の順にアンチノック性が高い。


イソオクタンは枝分かれアルカンで安定して燃える性質があり、ノッキングを起こしにくい。

なのでアンチノック性を示す指標として「オクタン価」を導入し、イソオクタンをオクタン価100と定義されている。

逆に、直鎖ヘプタンは非常にアンチノック性が低いため、直鎖ヘプタンはオクタン価0と定義されている。

イソオクタンと直鎖ヘプタンの混合率をオクタン価としてアンチノック性の指標にしている。

例えばイソオクタン:直鎖ヘプタン=70:30の混合油はオクタン価70と言える。

ガソリンに対して燃焼試験を行い、もしこの「イソオクタン:直鎖ヘプタン=70:30の混合油」と同じだけのアンチノック性が測定されれば、そのガソリンは「オクタン価70のガソリン」と言える。

市販のレギュラーガソリンはオクタン価89以上で、ハイオクガソリン(=高オクタン価ガソリン)は96以上である。


イソオクタン以上にアンチノック性が高い物質もある。

そのためそれらアンチノック性の高い物質をガソリンに混合し、オクタン価を高めることができる。

オクタン価100を超えることも可能。

昔はテトラエチル鉛(C2H5)4Pbという物質がオクタン価向上のため添加剤として入れられていたが、鉛による環境汚染の回避のため現在は使われていない。
(※ 飛行機用のガソリンには有機鉛系化合物が未だ使われている。)

最近はエチルターシャリーブチルエーテルC2H5OC(CH3)3が使われている。


ちなみに、普通のレギュラーガソリン用エンジンの車にハイオクを入れてもほとんど意味がないらしい。

逆に、ハイオク車にレギュラーガソリンを入れるとノッキングで壊れるという。

難儀である。


以上、イソオクタンが「ハイオク」とか「オクタン価」とかの正体でした。

筆者は「オクタン価じゃなくてイソオクタン価の方が正確だ!むしろ直鎖のオクタンは非常にオクタン価が低い!」と思うので、どなたかガソリン会社に勤めたらぜひ名称変更してください(笑)


◎ 参考


ここ数日更新が遅れてすみませんでしたが、やっとテストシーズンが終わったので復活します。


さて、以前「低融点の合金」にて「ガリウムの融点は27.78℃」としていましたが、文献によっては29.76℃とされていることもあるようです。

一般的には後者、29.76℃と認知されているようです。

ちなみに『Newton[別冊]完全図解周期表』には前者の27.78℃と書いてありました。

文献によって値が変わることはたまにあります。


さて、ガリウムの融点がより一般的に言われているっぽい29.76℃ならセシウムの融点28.4℃より高くなってしまいますが、それでもガリウムが夏場限定の液体金属であることには変わりありません。

むしろ「水銀が唯一の常温で液体の金属」とするのは今のグローバル社会では宜しくない表現で、赤道直下の常夏の国では年中ガリウムは液体でしょう。

また、ガリウムは人肌で温めても溶けます。

ガリウムには毒性がないようなので、実際手にガリウムを乗せて溶かすという不思議な体験をすることができます。

が、「うかつにやると後悔します。ガリウムに毒性はないとされていますが、手にこげ茶色のシミがつくのです。ガリウムで遊ぶ時はビニール袋に入れるようお勧めします。」とのこと。
(『世界で一番美しい元素図鑑』より。この本の著者は本当に面白いのでオススメ!)

ちなみにセシウム(融点28.4℃)でこの遊びできません。

なぜなら、周期表を見てもらえれば一目瞭然ですが、セシウムはアルカリ金属です。

こんなの手に乗せたら自然発火するは、強アルカリなのでただれるわで大変なことになるでしょう。


ちなみにガリウムは沸点が高いことも特徴。(沸点2830℃)

水銀(沸点356.58℃)は高温にすると揮発するので、水銀温度計は高温に耐えられません。

しかしガリウムを温度計に使うと30℃~2800℃くらいの範囲で温度が測定できる高温用温度計になります。

また、ある種のガリウム合金(ガリンスタン;インジウム、スズとの合金)は融点-19℃を示し、欧米では今敬遠されている水銀に取って代わって体温計に使われているようです。

この体温計かなり欲しい・・・欧米へ旅行したらお土産に買って帰ろっと。


◎ 参考


ちょっと面白いことを知りました。

高校で習う典型的な化学工業の反応プロセスのオストワルト法。

教科書では3段階で書いてある。

1. 白金触媒でアンモニアを酸化し一酸化窒素を発生
4NH3 + 5O2 → 4NO + 6H2O

2. 一酸化窒素が酸素と反応し二酸化窒素を発生
2NO + O2 → 2NO2

3. 二酸化窒素を水と反応させると硝酸と一酸化窒素が発生
3NO2 + H2O → 2HNO3 + NO

という手順で硝酸を得る、と。


しかしどうやら実際は第三段階が違うようです。

二酸化窒素そのものが水と反応するのではなく、実は化学平衡にある四酸化二窒素が水と反応するらしい。

3-1. 二酸化窒素の会合
2NO2 → N2O4

3-2. 四酸化二窒素と水が反応
N2O4 + H2O → HNO3 + HNO2

ここで亜硝酸HNO2が生じるが、不安定なので加熱条件で不均化反応を起こすらしい。

3-3. 亜硝酸の不均化(自己酸化還元)
3HNO2 → HNO3 + 2NO + H2O

この3-1・3-2・3-3をひとまとめにすると3の式になる。


こんなように、素反応を考えていくと結構細かく分かれていて難しい。

たぶん3-3式もさらに細かく分けられると思います。

で、いろいろ調べていたらこんなページを発見。

「科学技術振興機構」の四酸化二窒素と水の反応のページ

アニメーションで四酸化二窒素と水の反応が表されています。
(「反応シミュレーション」をクリック)

科学技術振興機構が運営する「理科ねっとわーく」というwebサイトで、小学校~高校の教員向けに理科教材を提供しているようです。

上の例ではおそらく高校生向けの化学のページでしょう。

しかし・・・上のリンクには他にも反応シミュレーションがいくつか見れるようになっていますが、「1,3-ブタジエンとエチレンの反応」なんて思いっきり大学有機化学のディールス=アルダー反応・・・なかなかやりますねぇ・・・

なかなか面白いwebサイトなので、今後いろいろ引用するかもです。


◎ 参考


フェーリング反応:
フェーリングA液(硫酸銅(II)五水和物の水溶液)とフェーリングB液(酒石酸カリウムナトリウムと水酸化ナトリウムの水溶液)を混ぜたフェーリング液を作る。
アルデヒドをここへ入れると酸化されカルボン酸になり、Cu2+イオンが還元されてCu2+になり酸化銅(I)の赤色沈殿が生じる反応。
アルデヒドの検出ができる。


銀鏡反応:
アンモニア性硝酸銀水溶液(トレンス試薬)にアルデヒドを入れると酸化されカルボン酸になり、銀(I)イオンが還元されて金属銀になって試験管の内側に銀が鏡のように析出する反応。
アルデヒドの検出ができる。


一方・・・

アルデヒドでも、ギ酸HCOOHやベンズアルデヒドC6H5CHOはフェーリング反応を起こさない!(と多く書かれている。)

高校化学でもよく参考書等に載っているようだ。

ちなみにギ酸がフェーリング反応を示さない(より正しくは"示しにくい")のは、ギ酸イオンが銅イオンと安定な錯体を作るからとか何とか。

ベンズアルデヒドがフェーリング反応を示さないのは、フェーリング溶液はアルカリ性であるが、アルカリ性条件ではカニッツァロ反応(ベンズアルデヒドが自己酸化還元反応してしまってベンジルアルコールと安息香酸になる)とよばれる反応が起きてしまうためである。
(と書かれていることが多い。ちなみに銀鏡反応もアルカリ性であるが、銀(I)イオンは酸化力が強いのでうまくいくとかなんとか。)


しかし!

先週学科の友達がベンズアルデヒド(と思われる物質)で見事フェーリング反応を起こしたらしい。

う~む。

根性使って反応温度うまいことしたらベンズアルデヒドでもフェーリング反応することができるのかもしれない。
(もしくはソイツの使ったサンプルがベンズアルデヒドでないかである。)


実は反応条件(反応温度・物質の濃度 etc)を変えると、化学反応の結果が変わることは多々ある。

例えば、ギ酸は実はフェーリング反応を「起こさない」ではなく「起こしにくい」であって、条件いじって頑張ったらフェーリング反応できるらしい。
(むしろ実はいじらなくてもちょっとは起こっているらしい。)

また、ホルムアルデヒドは普通にフェーリング反応を示す(要するに酸化銅(I)を沈殿する)と書いてあるが、還元力が高いため濃度が高かったりすればむしろ金属銅まで還元、すなわち銅鏡反応とでも言えそうな結果を示すらしい。

このように、反応の結果は一概に言えるとは限らないのだ。


今日フェーリング反応関係でネットで検索かけてみたら、幾年前のセンター試験の「出題ミス」(と彼らは言う)を罵り叩く掲示板を見つけた。

なんでも、問題では「フェーリング反応を示す物質」なるものに対して選択肢から「ギ酸」を選ばなければならなかったらしい。

で、彼らは「示さない。終了。」とか「錯体ができるから。○○○参考書にも書いていた。以上。」とか「ギ酸がフェーリング反応しないのは常識。出題者は馬鹿」とか書いていたのですよ。

なんだかすごく残念だと思いました。

これは「化学」でしょうか。

教科書や参考書に書いてあったことを覚えて問題の答えを選ぶ・・・

筆者にはこれが「化学」もしくは「自然科学」しいては「学問・学び」とは思えません。

なんだか、現代日本の中学・高校教育の、こういう冷めた思考を植え付けるような方式がいわゆる理科離れなるものに繋がっているのかもしれないと思いました。


どうでしょうか?

好奇心を持って、頭を使うのが科学だと思います。

だから

「カスタードクリームは砂糖ではなく食塩を使っても作れるのだろうか。負に帯電したタンパク質をプラスのナトリウムイオンで引いて○×△□・・・」

と悩み、現在資料を漁っているJerryさん(梅酒の化学の人)は、罵る彼ら「ハイレベル化学受験生」よりもずーーーっと「化学者」であると思います。
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