一般向け/高校生向け楽しい化け学
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さる11月9日・10日はサイエンスアゴラに参加していました。

サイエンスアゴラとは簡単に言うと科学のお祭りで、毎年お台場で開催されます。

私は元素周期表同好会の一員として、えれめんトランプを使って主に小学生に元素と周期表を教えてました。

2日目の晩にはTwitterで絡んでいるフォロワーさんたちとオフ会をしたり、非常に楽しい2日間でした。


元素周期表同好会員たちでお食事をしているとき、会員のKさんがウランガラス(ケータイのストラップ!)を見せてくれました。

ウランガラスとはその名の通りウランUが含まれているガラスで、紫外線を当てると光ることが知られています。

たまたま私が紫外線LEDを持っていたので照射してみると、写真のように美しい緑色発光を示しました!



ケータイストラップのウランガラスの発光
ケータイを持ち上げているのは持主のKさん。UV-LEDを当ててるのは私Chemis。
写真を撮ってくれたのは元素学たんの中の人。


ウランガラスの発光は生で見たことがなかったので感動。

特に私は光化学が専門なので、とてもテンションが上がりました。

・・・ということで今回はウランガラスとその発光過程についてご紹介します。



ウランガラス


ウランガラスとは、ウランがドープされたガラスです。

ウラン由来の黄~緑色に美しく着色し、19世紀初頭から製造が始まったとされます。

ケイ砂SiO2に水酸化カリウムKOHや石灰石CaCO3を混ぜた一般的なガラスに、二ウラン酸ナトリウムNa2U2O7を微量(0.1~1 wt%)混合して作られるそうです。

さらに銅やクロム等の塩を混ぜることで色合いを調節できるそうです。


そしてウランガラスの最大の特徴はやはり、光ること!

ブラックライトで照らすと550 nmくらいの緑色の光を出します。

写真では薄緑色のウランガラスにUV-LEDで370 nmの紫外線(UV)を照射していて、ウランガラスから緑色の発光が見えています。


370 nm紫外線励起によるウランガラスの緑色発光



ウランガラスの発光


ではウランガラスはどのように光っているのでしょうか。

ウランガラス中の発光中心は、ウラニルイオンUO22+です。


ウラニルイオンUO22+の構造

これはU6+イオンにO2-イオンが2つ配位した錯イオンで、直線構造をしています。

実際にはさらに赤道方向(エカトリアル位)に4~6個の配位子がついてガラス中に存在します。


ウラニルイオンは次に示す経路で発光します。



ウラニルイオンの発光過程

1. 紫外線励起
基底状態のウラニルイオンが紫外線のエネルギーを吸収し、もともと最高占有分子軌道(HOMO)にあった片方の電子が最低非占有分子軌道(LUMO)に移動し、励起状態になります。

ちなみにHOMOはウランのfもしくはd軌道と酸素のp軌道から成り、LUMOはウランのf軌道から成ります。
HOMOは酸素に偏っているので、励起すると配位子酸素側から中心ウラン側への電荷移動遷移(LMCT)となります。
ウランガラスの黄色は、このLMCT遷移の紫光の吸収に由来します。


2. 項間交差
励起された直後は図のように電子のスピンの向きがそのままで、2つの電子は逆向きのスピンをしています。(一重項励起状態
しかし振動摂動によって項間交差(ISC)が起こりスピンが反転します。(三重項励起状態

ちなみに三重項励起状態は一重項励起状態よりも安定です。


3. 放射失活
励起状態から基底状態へ落ちるとき、そのエネルギー差に対応する波長の光を放出することで発光が起こります。(放射失活
ウラニルイオンの場合は緑色に発光します。

なお、図のようにウラニルイオンの場合、スピンの反転がおきつつHOMOに遷移しなければなりません。
これは禁制遷移であるため起こりにくく、長い発光寿命(ウランガラスの場合300マイクロ秒程度)になります。
すなわち、ウラニルイオンの発光はりん光です。

ちなみに項間交差なしで一重項励起状態から一重項基底状態へ放射失活したときの光が蛍光で、許容遷移なのでナノ秒オーダーの短い発光寿命を持ちます。
本やwebサイトで「ウランガラスの緑色蛍光」と書いてあることが多いですが、マチガイです。



以上のようにウランガラスは発光します。

マニアックな単語が多かったと思いますが、これが光化学です。

面白いでしょう?

蛍光灯や夜光塗料なんかも、こんな感じに様々な経路で電子が移動し、発光します。

身の回りで光る物質を見つけたら、どのように光っているのかぜひ調べてみてください。

非常に面白い光化学の世界が見えてきますよ!



参考

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