一般向け/高校生向け楽しい化け学
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窒素を含んだ環状化合物は生理活性が強く、天然物や医薬品によく見られます。
そのため昔からよく知られていて、慣用名で呼ばれている物質がとても多いです。
しかし、たくさんあるそれらは名前も似ていて、非常にややこしい。
ピペリジンやピロリジンの誘導体などは有機合成の反応剤として用いられ、私もよく使うのですが名前がややこしくてしょっちゅう調べ直しています。
また最近、トリアジンやカルバゾールなどの含窒素複素環式化合物は有機エレクトロニクス材料にも用いられます。
そこで、私の備忘録としても兼ねて、100種類の含N環化合物をご紹介!



三員環(アジリン系)





アジリジン(Aziridine)、ジアジリジン(Diaziridine)、
アジリン(Azirine)、ジアジリン(Diazirine)、ジアジレン(Diazirene)


もっとも単純なアジリジンはアンモニア臭のする毒性液体。
窒素が二つのものは頭に「ジ」をつける。
N=Nを持つジアジレンだけ語尾が特殊なので注意。



四員環(アゼト系)




アゼチジン(Azetidine)、ジアゼチジン(Diazetidine)、トリアゼチジン(Triazetidine)、
アゼト(Azete)、ジアゼト(Diazete)、トリアゼト(Triazete)


ほとんどの含N環化合物は語尾が「~ine」もしくは「~ole」なのに対し、アゼト(azete)は非常に珍しい名前をしている。



五員環(ピロール系)




ピロリジン(Pyrrolodine)、ピラゾリジン(Pyrazolidine)、イミダゾリジン(Imidazolidine)、
トリアゾリジン(Triazolidine)、テトラゾリジン(Tetrazolidine)、ピロリン(Pyrroline)、
ピラゾリン(Pyrazoline)、イミダゾリン(Imidazoline)、トリアゾリン(Triazoline)、
テトリゾリン(Tetryzoline)、ピロール(Pyrrole)、ピラゾール(Pyrazole)、
イミダゾール(Imidazole)、トリアゾール(Triazole)、テトラゾール(Tetrazole)


ピロールは、2つの二重結合とN上のローンペアから成る6π電子系の芳香族化合物。
ピロールを基本として、語尾を「~ine」とすれば二重結合1つ、「~idine」とすれば飽和になる。
テトリゾリンだけ特殊なので注意。



六員環(ピリジン系)




ピペリジン(Pyperidine)、ピペリデイン(Piperideine)、
ピペラジン(Piperazine)、トリアジナン(Triazinane)、テトラジナン(Tetrazinane)、ペンタジナン(Pentazinane)、
ピリジン(Pyridine)、ピリダジン(Pyridazine)、ピリミジン(Pyrimidine)、
ピラジン(Pyrazine)、トリアジン(Triazine)、テトラジン(Tetrazine)、ペンタジン(Pentazine)
※ トリアジンやテトラジンには異性体があり、位置番号を付して区別する。


ピリジンはベンゼンのCHがNに置き換わったもので、同じく6π電子系。
環の外を向いたNのローンペアはπ軌道に対して直交しているため、π電子数にカウントされない。
Nの数や飽和度の変化による名前の活用がかなりカオス。
ペンタジンは非常に不安定そうだが、少なくとも沸点の220℃までは生きているというのがすごい。
ピリジン、飽和型ピペリジンもその他も最悪に臭い。
これら以外も窒素が入ってる液体物質はどれもとても臭い。



七員環(アゼピン系)




アゼパン(Azepane)、ジアゼパン(Diazepane)、トリアゼパン(Triazepane)、テトラゼパン(Tetrazepane)、
アゼピン(Azepine)、ジアゼピン(Diazepine)、トリアゼピン(Triazepine)


ベンゾ縮環体であるベンゾジアゼピン等は医薬品として重要。
窒素が増えると頭に数詞をつける。



八員環以上




アゾカン(Azocane)、アゾナン(Azonane)、アゼカン(Azecane)、
アゾシン(Azocine)、アゾニン(Azonine)、アゼシン(Azecine)


名前の付け方のわけがわからない。
10π電子系芳香族化合物であるアゾニンは平面形であり、水分子と相互作用したり非常に特異な性質を示すらしい。
11員環以上はIUPAC命名法に従う。



インドール系




インドール(Indole)、インドレニン(Indolenine)、インドリン(Indoline)、
イソインドール(Isoidole)、イソインドレニン(Isoindolenine)、イソインドリン(Isoindoline)、
インドリジン(Indolizine)、プリン(Purine)、インドリジジン(Indolizidine)


インドールはウンコの臭いがする固体。(実際大便に含まれている。)
しかしインドールは薄ーーーーーーく希釈するとジャスミンの香りになる。
インドールやイソインドールの骨格を持つ拡張π系化合物は可視光領域に強い吸収を持つものが多く、例えばジーンズの青色色素であるインジゴ等が有名。
インドレニンはシュードインドール(Pseudoindole)という別名もあるみたいです。



キノリン系




キノリン(Quinoline)、イソキノリン(Isoquinoline)、キノリジジン(Quinolizidine)、
キノキサリン(Quinoxaline)、シンノリン(Cinnoline)、キナゾリン(Quinazoline)、
フタラジン(Phthalazine)、ナフチリジン(Naphthyridine)、プテリジン(Pteridine)


キノリンやキノキサリンも医薬品や色素骨格として重要。
そしてやっぱり臭く、吸い込むとめまいや粘膜炎をおこす。


三環式




カルバゾール(Carbazole)、フェナントロリン(Phenanthroline)、
アクリジン(Acridine)、ナフタジン(Naphthazine)、フェナジン(Phenazine)


カルバゾールやフェナジンは有機エレクトロニクスにおいて非常に重要な位置を占める。
カルバゾール誘導体は電子を放ち陽イオンになりやすいためホール輸送性、フェナジンや先のトリアジン誘導体は電子を受け入れ陰イオンになりやすいため電子輸送性を示し、有機半導体となる。
ちなみに我が友カルバゾールは有難いことに無臭の固体。



その他




ピロリジジン(Pyrrolizidine)、キヌクリジン(Quinuclidine)、DABCO、ヘキサミン(Hezamine)、
DBN、DBU、モルファン(Morphan)、ベンザゾシン(Benzazocine)、
アゼピンドール(Azepindole)、モルフィナン(Morphinan)、ハスバナン(Hasubanan)


DBN(ジアザビシクロノネン)やDBU(ジアザビシクロウンデセン)、DABCO(ジアザビシクロオクタン)は系統名の頭文字を取った略号であり慣用名ではないが、一般の共通認識としてそう呼ばれている。
DBNやDBUは求核性のない塩基、DABCO(ダブコ)は非常に求核性の高い塩基である。
ヘキサミンは一見複雑な構造をしているが、4分子のアンモニアと6分子のホルムアルデヒドを縮合するだけで合成できる。
モルフィナンやハスバナンはアルカロイドの骨格であり、モルヒネやヘロインはモルフィナンの誘導体である。



ポルフィリン系




ポルフィリン(Porphyrin)、クロリン(Chlorin)、コロール(Corrole)、ノルコロール(Norcorrole)、
コリン(Corrin)、サブポルフィリン(Subporphyrin)、フタロシアニン(Phthalocyanine)、
ナフタロシアニン(Naphthalocyanine)、アントラコシアニン(Anthracocyanine)


ポルフィリンフタロシアニンは色素として非常に重要な物質。
これらは中心に金属イオンを取り込み、非常に安定な平面型錯体を作ることができる。
例えばヘモグロビンの酸素結合部位はポルフィリンのFe錯体、クロロフィルの光活性中心はクロリンのMg錯体である。
フタロシアニン類は非常に頑強な人口色素であり、その誘導体は新幹線の青色塗料からDVDの光記録材料まで、身の回りのあふれている。
ポルフィリンやフタロシアニンはヒュッケル則を満たす18π電子系の芳香族。
一方ノルコロールは16π電子系の反芳香族であり、非常に興味深い酸化還元特性を示す。
テトラピロール類は非常に多種の誘導体があり、どれも非常におもしろい性質を持つため、また今度紹介します。



含N環化合物、いかがでしたでしょうか。
CHNだけでできているのに、さらっと書いただけでこんなに種類があります。
いかに有機化合物が多種多様かわかりますね。
有機化合物の多様性に敬意を示しながら、彼らのややこしい名前を頑張って覚えてあげましょう!



参考
『Chemspider』(英国王立化学会(RSC)運営のフーリーデータベース)
↑ 構造式検索でだいぶ遊べます。

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