一般向け/高校生向け楽しい化け学
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この三日間、教職科目の理科教育法という集中講義を受けていました。
(大学では夏休みに「集中講義」と呼ばれる数日間連続で一日中行われる講義があります。)
本当に面白く楽しい三日間を過ごさせてもらいました。
「授業」のはずですが、もう完全に夏休みの楽しい思ひ出です(笑)
6人で班を作って三日間色々な実験や観察等に挑戦するのですが、学部・学年が全く違う班員の皆さんともとても仲良くなれて面白かったです。
本当に日本の理科教育に必要だなと思える「探求学習」や「試行錯誤」というキーワードの大切さがわかりました。
アゲハ蝶や青虫の観察、紙コップの謎、水糊で紙を貼ったときのデコボコの謎等、色々課題がありましたが、その中で「梅干しから食塩を取り出す」という実験がありました。
班で色々やり方を考えて、家に帰って台所でやるというものでした。
簡単そうですがなかなか難しいもので、理系大学生の成功率は1%程らしいです。
班のメンバーも誰も成功できませんでした。
が、結論を言うと、筆者は成功しました。
(先生曰く正攻法でなくて、普通その方法での成功例がない方法だったらしいですが・・・化学が専攻である筆者は分離精製の実践的・経験的技術に長けていた点があるのかもしれません。)
こんな方法でやりました。
まずガラスカップに種を除いた梅干し(1個, 21 g, 塩分10%)を入れ箸でよく潰し、そこへ水50 mlを加えて箸で混ぜてよく溶いた。
次にこのペースト状の梅干しをガーゼを用いて濾し、赤色透明の液体をマグカップに得た。
そして得た液体を鍋に移しガスコンロで空焚き状態になるまで加熱(蒸発乾固)すると・・・
真っ黒に・・・
普通、「梅干しから絞った塩水から水を蒸発させれば塩が出てくるだろう」と思いますが、実際は色々な有機物が溶けているので、料理で空焚きしてしまった時のように有機物が炭化して真っ黒焦げになります。
で、普通はここであきらめるようですが、筆者はあきらめませんでした。
以前にも紹介しましたが、筆者が分離精製がうまくいかなくて困っていたとき「頑張ったらいける!!実験は根性でなんとかなる!」という大学院生さんのお言葉を思い出し、この焦げの中から食塩を取り出そうとしました。
その中に物質が含まれているなら、そこまで目的物質を追い込んだなら、そこからなんとかそれを取り出そうと努力すべき!
気になるその方法は・・・
企業秘密です!
(来年度のこの授業受ける生徒や、この実験を出前してもらう中学生たちの学びの機会を失いたくないですからね。ここでネタバレはしません!)
で、筆者は頑張って結局しょっぱい綺麗なNaClの白色固体を得ました。
収率は40%。
逆に言えばこの写真の倍以上の量の食塩が(大きめの)梅干し1個に含まれているということになり、ちょっとびっくり。
自分で考えて試行錯誤するのはとても面白く、大切。
ぜひ「探求的な」ことをやってみてください。
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先日紹介した『化学ビデオ講座No.3 :ニトロベンゼンの還元によるアニリンの合成』に関連して、ニトロベンゼンを紹介します。
今日の分子No.62 :ニトロベンゼン
Jmolで描画
慣用名:ニトロベンゾール、ミルバン油。
特有の臭いがする淡黄色油状液体。
味は甘いらしい。
水に不溶で、引火性があり有毒。
比重が約1.2なので水に沈む。
最も単純なニトロ化合物である。
コールタールから得られる。
1834年にE.Mitscherlichという人が初めて単離に成功したらしい。
靴や部屋の研磨剤、塗料の溶剤、皮製品の仕上げ剤、香料として用いられる。
ちなみに、ニトロベンゼンは化学的には「ニトロ化合物」であるが、日本の法律(消防法)ではニトロ化合物でなく「石油類」に分類されている。
これは、ニトロベンゼンはニトロ化合物である割には安定であり、爆発性がないからである。
(しかし引火性・発火性はあるため引火性液体第4類危険物第3石油類であると決められている。)
あと、ニトロ基の部分はややこしいですが下記のような構造になっていてNもOもオクテッド則を満たしています。
ニトロベンゼンの構造(共鳴構造式) ※二つの酸素原子は上共鳴式により等価
ニトロベンゼンや、その他ニトロベンゼン誘導体は合成化学的にはベンゼンを混酸(濃硫酸:濃硝酸=3:1で混ぜたもの)でニトロ化して合成する。
ベンゼンのニトロ化
少し詳しく述べると、まず硝酸が硫酸によりH+化、脱水してニトロニウムイオンNO2+を生じる。
ベンゼン環は比較的電子が多くマイナス雰囲気なので、そこへニトロニウムイオンが寄って行って「求電子付加」し、H+が取れてニトロベンゼンが生成する。
ニトロベンゼン(やその誘導体)は還元することによりアニリン(や対応する誘導体)に変換できる。
Fe/HClやSn/HCl、H2/Ni、Zn(Hg)/HCl等の還元法がある。
(先日紹介した『化学ビデオ講座No.3 :ニトロベンゼンの還元によるアニリンの合成』も参照)
また、アニリン(やその誘導体)を酸化することによりニトロベンゼン(や対応する誘導体)に変換できる。
酸化剤としてはトリフルオロ過酢酸CF3COOOHが用いられる。
すなわち、芳香族ではニトロ基とアミノ基が変換でき、これが合成化学的には非常に重要。
ニトロ基はベンゼン環から電子を引っ張るのでメタ配向性で、アミノ基はベンゼン環へ電子を押し込むのでオルト・パラ配向性である。
例えばアニリンからm-クロロアニリンを合成したいときには、アニリンを一旦酸化してニトロベンゼンにしてからクロロ化してm-クロロニトロベンゼンにし、還元してm-クロロアニリンにする。
(そのままアニリンをクロロ化してもo-クロロアニリンとp-クロロアニリンができてしまう!)
このように、ニトロ基とアミノ基の相互変換は配向性のパズル的合成の一手を担う。
◎ 参考
- 『ボルハルト・ショアー現代有機化学〈下〉』, K.Peter C. Vollhardt, Neil E. Schore著, 野依良治監訳, 化学同人; 第4版 (2004/06)
ところで、先日古いデジカメを分解してみました。
デジカメの中身
注!
電気機器の分解は非常に危険です!
電池を抜いたりしても、依然内部のコンデンサーに電気が蓄えられたりしていて触ると高圧電流に感電する恐れがあります!
だから絶対やってはいけない!
・・・っということになっているんですが、筆者は分解したいし、みなさんも一度分解してみることを(自己責任で)薦めたいところです。
百聞は一見に如かずで、一度バラして中を見てみると教科書で見るよりも色んなものを得ることができます。
「危険だから池で遊んではならない」、「危険だからノコギリで工作をしてはいけない」、「危険だから機械を分解してはならない」・・・何でもかんでも禁止するのは教育上良くはないと思います。
「理科離れ」を是正するためにも子供たちにはぜひ「本物」を見てもらいたく・・・・
・・・話が逸れてきましたね(笑)
筆者が教職志望なことや、教育関係者の方とよくつるんでいるのでこういう話題に興味があって、ついついそっちの方にに話がそれたりしてしまいます。
ということで話を戻します。
筆者は化学ですが、電気も好きです。
(でも結局、実は電気機器に入っている素子に使われている化合物が好きだったり・・・)
で、子供のころからラジコンからパソコン・ケータイまで色々バラしてきましたが、デジカメは初挑戦でした。
といっても、最近の電気機器は非常に高度なものになっていて、あの緑色の基盤を見ても具体的にどんな配線になっているのかはよく分からない。
(わかる人もいるだろうが、専門ではない筆者にはわからない。)
が、基盤についている素子が何かはわかります。
例えばこれ、デカイ黒いのとその隣の緑のやつはコンデンサーです。
代表的な素子;コンデンサー
コンデンサーとは、高校物理でも習いますが、電気を蓄える素子です。
一般に、中に二つの電極板とそれらに挟まれた絶縁体(誘電体)から成ります。
これは電解コンデンサーであろうか。
誘電体といえば、強誘電体(電場をかけていなくても自発分極を持つ物質)であるチタン酸バリウムは誘電率が真空の2万倍くらいだったりするらしい。
この黒くてデカイコンデンサー(約3.5cm、300V、160μF)はフラッシュ用で、これに電気をためて一気に放出することで瞬間的に大電流を流してフラッシュを焚くようです。
ちなみに余談ですが、高校物理や世間一般にはこの素子は「コンデンサー」と呼ばれますが、大学などの専門的な場では「キャパシター」と呼ばれます。
で、化学の人は「冷却管」のことを「コンデンサー」と呼びます。
(ex. リービッヒ冷却管 → リービッヒコンデンサー)
ややこしい。
他にも、例えばこれはデジカメの心臓部、CCDイメージセンサです。
CCDイメージセンサ
CCDとは「Charge Coupled Device」の略で、要するに人間で言うと「目」の役割をしています。
CCDイメージセンサは、光が当たると電荷を生じる半導体素子である「フォトダイオード」と、その生じた電荷を元々素子上に二次元的に並んだ状態から一列に配列し直してコンピューター部に輸送するための「CCD」から成る。
これらは主にケイ素から成る半導体素子で、適切な不純物(p型にするにはホウ素等、n型にするにはリン等)を用いてp型やn型にして接合し作られている。
ちなみにこの半年は大学で半導体工学の授業を取っていたのでこの分野は(趣味の領域としては)結構詳しくなれた。
ちなみに次学期は電子回路の授業を取ろうと思います。
完全に趣味です(笑)
でも大学はそんな風に好きな授業を取れるのが素晴らしい。
勉強したければいくらでもする機会が与えられている。
ちなみに筆者の専門は有機半導体なので、半導体工学や電気回路を勉強するのはかなり実用的である。
化学だから化学だけを勉強すればいいわけではない。
多分野が複合した分野こそ、応用性・新規開発性があって面白い。
とりあえず「化学ビデオ講座」のナンバーを増やしてみます。
今日は有機合成、高校でも習うニトロベンゼンの還元によるアニリンの合成です。
還元剤には鉄粉を用いています。
(☆ スズを用いてもできます。重要!)
化学ビデオ講座No.3 :ニトロベンゼンの還元によるアニリンの合成
<動画の要約>
まず鉄粉・蒸留水・塩酸を用意した。
反応装置を組み立て、3つ口フラスコに蒸留水と鉄粉を入れた。
加熱撹拌しながら、温度計を取ってゆっくりと塩酸を加えた。
次に滴下漏斗でニトロベンゼンを加えた。
すると黒色物質(四酸化三鉄)を生じつつ、アニリン(の塩酸塩)を生じた。
反応終了後、フラスコを水に浸けて冷却し、炭酸カリウムを加えて反応液中の塩酸の中和・アニリン塩酸塩からアニリンの遊離を行った。
蒸留し、水+ニトロベンゼン+アニリン液を得、分液漏斗に入れた。
そこへ塩化ナトリウムを加えて(塩析の原理)よく振って上層に有機層(アニリン+ニトロベンゼン)を得た。
得た有機層を低温で蒸留してアニリンを得た。
(※ 高温で蒸留するとニトロベンゼンも出てきてしまう。)
<解説>
ニトロベンゼンを鉄―塩酸でアニリンに還元する反応である。(ベシャンプ還元と言う。)
C6H5-NO2 + 6H+ + 6e- → C6H5-NH2 + 2H2O
スズを用いた反応式は高校化学の教科書にも載っているが、鉄を用いた場合は載っていない。
鉄を用いた場合は反応が少し難しくなる。
まずFeがFe2+になることで(すなわち塩化鉄(II)になることで)ニトロベンゼンを還元する。
C6H5NO2 + 3Fe + 6HCl → C6H5NH2 + 3FeCl2 + 2H2O
次にFe2+がFe3+になることでニトロベンゼンを還元する。
C6H5NO2 + 6FeCl2 + 6HCl → C6H5NH2 + 6FeCl3 + 2H2O
さらに、塩化鉄(II)と塩化鉄(II)と水が反応して四酸化三鉄を生じ、塩酸を再生する。
FeCl2 + 2FeCl3 + 4H2O → Fe3O4 + 8HCl
以上の反応を足すと、結局、
C6H5NO2 + 9Fe + 4H2O → 4C6H5NH2 + 3Fe3O4
となる。(塩酸は反応前後で正味消費されていないので触媒的役割をしている。)
しかし、アニリンは塩基であるのですぐ塩酸と反応しアニリン塩酸塩になる。
C6H5NH2 + HCl → C6H5NH3+Cl-
これをアニリンに戻すために塩基である炭酸カリウムを加えている。
C6H5NH3+Cl- + K2CO3 → 2C6H5NH2 + 2KCl + CO2 + H2O
また、反応液中には塩酸もたくさん残っているので炭酸カリウムで中和する。
2HCl + K2CO3 → 2KCl + CO2 + H2O
反応後の反応液は残った鉄粉や、生じた四酸化三鉄、塩化カリウム等が混ざっている。
ここからアニリンだけを取り出さねばならない。
だからまず液体だけ取り出すため蒸留し、水が入っているので分液漏斗で有機層を分離する。
有機層にはニトロベンゼン等が入っているので、これをさらに蒸留する。
蒸留するとき、動画では「アセトンで洗ってヒートガンで加熱する」と言っているが、これは水が入ってしまわないようにしているのである。
上の動画でわかるように、有機合成は合成反応自体の操作よりも、後処理と生成物の分離に大きく労力を必要とする。
単に教科書の化学反応式を見ただけではこれはなかなか理解できないのだ。
実験をするとさらに色々問題に直面する。
反応物の濃度は?
フラスコの大きさは?
何ミリグラムくらい生成物が欲しい?
後処理での水や塩基・酸、抽出時に加える塩はいくらぐらい入れるべき?
等など。
化学は、教科書を読むだけではわからないのです!!
が、それが本当に面白い!
◎ 参考
- 『ボルハルト・ショアー現代有機化学〈下〉』, K.Peter C. Vollhardt, Neil E. Schore著, 野依良治監訳, 化学同人; 第4版 (2004/06)
昨日の『化学ビデオ講座No.1 :アルミニウムと塩酸の反応』に関連して、今日はアルミニウムと水酸化ナトリウムの反応です。
アルミニウムが両性元素であるため酸だけでなくアルカリとも反応するということと、水素の性質がどっちもわかる一口で二度おいしいお得な実験動画です。
化学ビデオ講座No.2 :アルミニウムと水酸化ナトリウムの反応
<動画の要約>
アルミホイル(Aluminium foil)を水酸化ナトリウム水溶液(a solution of sodium hydroxide)に入れると、気泡(H2)を生じながら溶けた。
生じた気体を風船にして閉じ込めると、風船は空中に浮かび、火をつけると爆発的に燃焼した。(すなわち、生じた気体とは水素である。)
<解説>
アルミニウムは「両性元素」であり、酸にもアルカリにも水素の発生を伴って溶ける。
(『化学ビデオ講座No.1 :アルミニウムと塩酸の反応』も参照)
反応式は
2Al + 2NaOH + 6H2O → 2Na[Al(OH)4] + 3H2
である。
生じる塩;Na[Al(OH)4]はテトラヒドロキソアルミン酸ナトリウムと言い、Na+と錯イオン[Al(OH)4]-(テトラヒドロキソアルミン酸イオン)から成る。
両性元素には他に亜鉛Zn等があり、Znも同様にNaOH水溶液に水素を生じながら溶ける。
また、酸化物Al2O3やZnOも酸にもアルカリにも溶けるので「両性酸化物」と呼ばれる。
これらは高校化学でも出てきて重要。
水素は分子量2で空気の平均分子量29より小さく軽いので、風船にすれば浮かぶ。
水素は非常に着火しやすく(空気中での最少発火エネルギーがなんとたった約0.02mJ!!)、激しく燃焼・爆発して非常に危険な気体である。
ちなみに筆者は高校生の頃3週間程カナダの高校に研修で通ったことがあったのだが、ZnとHClを反応させて生じた水素を動画と同じような感じでゴム風船に詰めて火をつける実験をさせてもらった。
日本ではあまり聞かない実験であるが、欧米では人気な実験なんだろうか?
本当に「ボン!」っと音を立てて吹っ飛んだ。
ダイナミックなところが欧米ウケするのだろうか・・・
※ 参考;テトラヒドロキソアルミン酸イオン
普通[Al(OH)4]-という化学式であらわされる錯イオンだと書かれるが、実際はもう少し難しい。
実際は[Al(H2O)2(OH)4]-という、Al3+を中心とした6配位の錯イオンである。
(いつもの書き方は水が省略されている。)
だから実は8面体構造をしている。
この錯イオンは水和Al3+イオンである[Al(H2O)6]3+の内4つのH2OのH+が電離した形とも捉えられる。
Al2O3(水に不溶)にNaOHを加えると、水中に微量存在するこの水和アルミニウムイオンの電離平衡を電離側に進ませる(中和する)ため、Al2O3が溶けるのである。
>> 田村由光様への拍手レス
◎ 参考
- 『チャート式シリーズ 新化学I』野村 祐次郎(著), 辰巳 敬 (著), 本間 善夫(著), 数研出版 (2003/11/1)
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