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一般向け/高校生向け楽しい化け学
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結晶のX線回折の結果を解析するプログラム(言語;C++)を作ってみました。



筆者手製のXRD解析プログラムの実行イメージ


ピーク角度2θの値を入力すると、格子定数と各ピークに対するミラー指数と面間隔を算出してくれます。

ただし立方晶にのみ対応。(←ここがしょぼい。)

プログラミングは趣味で、たまにちょこちょこ作ってます。
(ただし趣味の域は超えないので難しいのは作れない。)


◎ X線回折(X-ray diffraction;XRD)とは

結晶試料にX線を当てると、いくつかの特定の入射角度で強く反射(散乱)する。

そのピーク角度を測定し結晶情報を得る分析手法。

これはX線が結晶中のある原子面で反射したとき、次の深さの面での反射光と干渉して強めあったときに現れる。

高校物理の波動で習ういわゆる「光路差が半波長の整数倍のとき~~」というヤツで、入射角θで強めあっているときは

2dsinθ = nλ  (d・・・原子面間隔、n・・・整数、λ・・・X線の波長)

という「ブラッグの反射条件」(高校物理の教科書に載っている)が成り立つ。

よって測定されたピーク角度から面間隔がわかり、いくつかのピークを総合することでその結晶の格子定数aが求まる。

逆に使えば種類不明の結晶が何の化合物であるかという同定もできる。


試料が立方晶(面心立方格子・体心立方格子・ダイヤモンド格子etc)のとき、

A = n2λ2/(4a2) ・・・(A)

とおくと、測定されたどのピーク角度θでも

sin2θ/A ・・・(B)

は整数になるという性質がある。

したがって測定された全てのθの値に対して(B)式の値が整数になるAを見つければ(A)式より格子定数aが求まるということである。


本プログラムでは次のような手順でAを決定している。

測定されたθがθ1、θ2・・・・θnのとき

(1) sin2θ1/A = 1となるAを求める。

(2) (1)のAが全てのθで(B)式が整数に近くなるか(±0.2くらい許容)を調べる。

(3) (2)がダメだったら sin2θ1/A = 2、3、4・・・ となるAを求め(1)、(2)を繰り返し、Aを決定する。


ここまでで求めたAは、sin2θ1/Aが整数であると仮定したときで、それ以外のθではいくらかずれているため不完全である。

全ての sin2θ1/A が整数に最も近くなるAを解とすべきである。

具体的に言うと、全てのθの

{(sin2θ/A)-(sin2θ/A に最も近い整数)}2 ・・・(C)

の和が最小になるAがよい。
(二乗しているのは値を正にするため。)

(C)式を数学的に表記すると

    ・・・・(C')

になる。(「round(x)」は「xの四捨五入」を表す。)

したがって(3)で求めたA(粗解A'とする)を基準としてA'近傍でAを変化させ、(C')を最小化するAを求め、それを解として返す。


・・・・という手順である。

実際に実行するとこんな感じです↓

クリックで拡大



筆者手製のXRD解析プログラムの実行画面(試料は酸化マグネシウム)


※ XRDのピーク角度は「2θ」が測定されるので、それを入力します。

格子定数a、面間隔d、ミラー指数(h k l)が算出されます。
(ミラー指数;面を表す番号;反射された面が具体的にどこであったかということ)


という休日の過ごし方(笑)
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テストやプレゼンがあって今週は全然更新できていませんでした。

大丈夫です、なんとかまだ筆者は生きています。



ところで、一昨日久し振りにウェブフォームに投稿が。

なんでも、『ヨードホルム反応の仕組み 』の記事を見てくださり、気に入ってもらえたようです。

以前Twitterで感想をくれた方もそうでしたが、この記事なかなか人気です(笑)

このサイトのアクセス解析を見ても、検索ワードはほぼ毎日「ヨードホルム反応」がダントツの一位。

世の中にはそんなにヨードホルム反応の需要があるのだろうか・・・

世の中の人たちがこんなにヨードホルム反応を"ググる"という事実はちょっと驚きではあるが、しかし確かにヨードホルム反応のメカニズムを詳細に記しているwebサイトは少ない。

特に、素反応に全てバラしてひとつずつ解説しているサイトはココ以外に今のところ見たことがない。

筆者のこの記事で化学の知的探究心を満たし、化学教育に少しでも貢献できたということであれば光栄である。


あと今回の投稿では、その感想に加え銀鏡反応の質問もありました。
(質問・回答;「Q11」

上のリンクの回答を読んでいただければわかりますが、実は銀鏡反応の詳細なメカニズムは未解明です。(たぶん)

だから教科書やネットを探しまくっても「答え」は見つけられません、誰も知らないから。

一般に、固相が関係する化学反応のメカニズム解明は難しいとされる。

分子一個一個の反応だけでは不十分で、固体として析出するためにたくさんの周りの物質となんらかの相互作用をしなければいけないからだ。

例えば電気分解の電極表面上での反応の解析も困難である。


しかし研究結果を自由に書ける論文になら、不完全ではあれど妥当っぽい記述が見つかります。

昨日大学で論文を探してみると、下のような反応が提案されていることがわかりました。




銀鏡反応でアルデヒドが酸化される機構。文献[1]を一部改変


青巻き矢印は電子1つが奪われる一電子移動反応(酸化反応)ですが、この部分が未解明なようです。


銀鏡反応の面白いところは容器の内壁に銀が析出して銀鏡が成形されることである。

と言うことは、容器の壁の表面で反応が起こっているのではないかと予想されます。

実は化学反応において「壁」(相と相の境)とは重要なファクターになっています。

壁の表面で起こる反応を専門的には「wall reaction」(壁面反応)といいます。

銀鏡反応では次の図のように、試験管の内壁(ガラス;Si-OH, Si-O-)と銀(I)錯体が相互作用し、そこに水和アルデヒドが電子を渡しに来るのではないかと考えてみたりしました。




銀鏡反応の「wall reaction」?


「わからないこと」を考えるのは楽しいです。

自由に考えることができるから。


◎ 参考

[1]. Hisao Kurotani, What is the work of ammonia in the silver mirror reaction?, 化学教育 18(3), 223-225, 1970-07-20, 日本化学会



前回は農薬とサリンは構造がとても似ていることを書きました。
(サリンは元々農薬研究の過程で生まれました。)



サリン、Malathion(農薬;殺虫剤)、Malathion酸化体(殺虫活性物質;人間にも猛毒)


前回;『今日の分子 No.72 :サリン』

今回は農薬やサリンはどのように体内で働き致死性を示すか、何故農薬は虫に効いて人間には効かないか、を解説します。

結論を言うと農薬やサリンはアセチルコリンエステラーゼと言う酵素を阻害することで対象を死に至らしめます。

アセチルコリンエステラーゼとはどのような酵素かということから説明しましょう。



◎ アセチルコリンとアセチルコリンエステラーゼ

アセチルコリンとは、骨格筋の調節や睡眠、学習、情緒に関する神経伝達物質である。

アセチルコリンは構造化学的にはコリンと酢酸のエステルである。
(アセチル化されたコリンという意味)




アセチルコリン(上)、コリン(左下)、酢酸(右下)の構造


アセチルコリンが関わる一連の神経伝達を簡単に書くと;

(1) 前シナプスニューロンという神経細胞に刺激が到達する。

(2) 前シナプスニューロンからアセチルコリンが放出され、後シナプスニューロンという神経細胞にくっ付く。

(3) 後シナプスニューロンのイオン透過性が変化し、神経刺激が起こる、すなわち情報が伝達される。

(4) アセチルコリンエステラーゼという酵素がアセチルコリンを分解し、元の状態に戻る。

ということである。

ゆえにアセチルコリンは神経伝達物質として作用していて、アセチルコリンエステラーゼがアセチルコリンを壊すことで神経伝達は終了する。


さて、アセチルコリンエステラーゼは次の模式図のようにしてアセチルコリンをコリンと酢酸へ加水分解する。




アセチルコリンエステラーゼ(AChEと略)によるアセチルコリンの加水分解


とても美しい生体内触媒反応である。

たんぱく質であるアセチルコリンエステラーゼ(以後AChEと略)はとても大きな分子で、図のようにちょうどアセチルコリンと結合できるスペースがある。

アセチルコリンの持つカルボニル基にAChEの-OHが結合することから反応は始まる。

このときアセチルコリン分子をAChEに固定するため、ちょうどアセチルコリンの正電荷側とくっ付く負電荷ポケットがある。

これによりがっちりアセチルコリンを捕まえ、-OHとカルボニル基とを反応させ基質-酵素複合体となるのだ。

しかもこのときAChEの-OHのHはすぐ隣にあるNに渡され、とても効率がいい。

基質-酵素複合体中の元カルボニル基の=Oは-O-となっており、アセチルコリンの元エステル結合はとても切れやすくなっている。

そしてここが切れコリンとアセチル化酵素になる。

アセチル化酵素は加水分解されると酢酸とAChEになり、AChEは再生される。

すなわちAChEは反応中で正味消費も生成もされない触媒と言うことになる。

したがって正味の反応は

アセチルコリン + 水 → コリン + 酢酸

となりアセチルコリンの加水分解となる。

このような美しく仕掛けられた酵素反応により我々は今筋肉を動かして息を吸い、吐いているのだ。



◎ サリンや農薬(有機リン系殺虫剤)とアセチルコリンの反応

上に示したように、AChEはとても巧妙にアセチルコリンを分解している。

しかし精密なものほど壊れやすい。

ここにサリンや有機リン系殺虫剤がやってくるとどうなるのだろうか。

具体的に、サリンとAChEの反応を見てみよう。




AChEとサリンの不可逆的な結合


サリンのP=OはアセチルコリンのC=Oと似ている。

AChEはアセチルコリンとよく似たサリンと同様に結合を作ってしまう。

そして前例でコリンが抜けたのと同様に、サリンの場合はHFが切れて抜ける。

すると残るのはAChEとリン酸(の誘導体)とのエステル。

このエステル結合は強くて、前例の酢酸のように加水分解されてくれない

結果AChEは再生しない。

このようにサリンはAChEと不可逆に結合する。

一番上の図のMalathion酸化体(殺虫活性物質)も同様にAChEと不可逆的な結合を作る。

よってサリンやMalathion酸化体はAChEの「不可逆的阻害剤」と言える。

このようにしてAChEが再生できず正常な作用をしなくなるとアセチルコリンが分解されなくなり(4)の神経伝達過程がうまく回らなくなる。

するとアセチルコリンは神経細胞に溜まったままになり次の神経刺激は伝えられなくなる。

したがって筋肉が麻痺し、呼吸不全に陥り、死に至る。

これがサリンや有機リン系殺虫剤の致死性の所以である。



◎ 農薬が人間と虫を殺し分けられる理由

農薬は都合良く虫だけを殺せなければならない。

サリンやをMalathion酸化体を農薬として撒くと、虫はおろか人間まで殺してしまう。

では農薬には何か小細工がしてあるはずだ。

もう一度サリンと農薬の構造を見てみよう。



サリン、Malathion(農薬;殺虫剤)、Malathion酸化体(殺虫活性物質;人間にも猛毒)


そう、サリンと農薬(Malathion)の違いはP=OかP=Sかである。

似ているが、MalathionのようにP=SならAChEを阻害することはない。

しかしそうすると虫も殺せなくなってしまうが・・・

虫と人間の違い、それはMalathionを酸化しMalathion酸化体にするスピードである。



虫と人間の体内でのMalathionの反応


・ 人間;酸化より加水分解が速い

・ 虫;加水分解より酸化の方が速い


Malathionは酸化されてMalathion酸化体になると毒性を発揮する。

虫は体内の酵素ですぐにMalathionが酸化されて猛毒のMalathion酸化体となり、死に至る。

一方、人間はMalathionが酸化されるスピードよりも加水分解されて無毒化されるスピードの方が速いのである。

したがって人間の体の中ではMalathion酸化体が生成しないので、人間は死なないのである。



◎ 参考




一昨日21日、オウム真理教の裁判が事実上終結しました。

戦後日本で起こった最悪のテロ、地下鉄サリン事件。

これにより「サリン」という本来マニアックであるはずの神経毒物質が有名になってしまった。

我らの化学が悪用された、悲しい事件である。

筆者はこのサリンと言う化合物を通して、「知識を持つ」とは何かを考えてみたい。

また、サリンと殺虫剤(農薬)の共通点についても触れてみます。



今日の分子 No.72 :サリン CH3P(=O)FOCH(CH3)2


Jmolで描画


IUPAC正式名:2-(Fluoro-methylphosphoryl)oxypropane

メチルホスホン酸フッ化物(リン酸の2つのヒドロキシ基-OHがフルオロ基-Fとメチル基-CH3に変わったもの)と2-プロパノールとのエステルと言える。
※ ホスホン酸;HP(=O)(OH)2

無色無臭の液体。

極めて強い殺傷性の神経毒で、これを吸入すると神経に障害をきたし呼吸困難や脳や目などに神経系の重い後遺症を残し、死に至らしめる。

日本では1994年の松本サリン事件、1995年の地下鉄サリン事件で使用された。


第二次大戦中ドイツで開発された有機リン系化合物である。

本来は農薬(後述)の開発で発見された物質である。

開発者たちの名前の頭文字から「サリン」と呼ばれていると言う。

「ソマン」、「タブン」という類似構造を持つ姉妹品が存在し、サリンとこれらは化学兵器として用いられている。


サリンを合成する原料は全て(規制はされているものの)市販されていて、かの組織はそれらを購入し合成できたのだという。

合成法をここに書くことはできない。

しかし市販の原料という縛りでサリンを合成したのは合成化学的にはすごい。

また、もし一般人が同じ方法で真似したとしてもほぼ間違いなく失敗して製造者が死ぬ結末になるであろうこの困難な合成をやってのけた。

かなり化学の知識に長けた者が合成設計したのだとわかる。

実際、東大卒や医者など、組織には日本最高クラスの有識者が所属していた。



学問をやって知識を付けることは、その分だけ危険な人間になることである。

と筆者は考えている。
(筆者の先生も同じようなことを言っていた。)

有識者はその知識を悪用することで他者を危険にさらすことができる。

筆者はサリンの合成法を大学の講義で習った。

たった7段階の反応で合成ができる。
(もし真似しても己の死が待っているだけだが。)

ニトログリセリン等の爆薬の合成法も知っている。

「ここに電気陰性度の高い官能基を付けたら良いだろう」等、分子設計の知識もいくらかはある。

化学の知識を付けた分、確実に潜在的に危険な人物になっている。

もし学問を進め知識を持ったなら、自分のその力に対して責任を持たなければならないと思う。


学問には二面性がある。

人を生かすも殺すも使い方次第。

化学で言うなら例えばニトログリセリンの例がある。

これは第一次大戦で使用され数え切れぬほどの人を殺した殺人化合物である。

しかし一方で、ニトログリセリンは血管拡張剤でもあり狭心症患者にとっては命の化合物である。

さて、ニトログリセリンは悪の化合物か、正義の化合物か。

どっちでもないと思う。

どう使うかは人間次第である。



さて、化学の話をしましょう。

サリンは農薬として使われる殺虫剤分子ととても構造が似ています。

実はサリンは最初から化学兵器を作るために開発されたのではなく、農薬開発の過程で生まれました。

サリンも元々は人を幸せにするための技術の1パーツだったのです。

結果、農薬研究は神経毒研究を発展させ、神経毒研究は農薬研究を発展させたのですが。



サリン、Malathion(農薬;殺虫剤)、Malathionの酸化体(猛毒)


どれも同じようなリン酸類似の有機リン系化合物である。

サリンも上の農薬Malathionも、神経伝達物質のアセチルコリンをコントロールするコリンエステラーゼというたんぱく質にくっ付いて阻害します。

結果神経系が正常に作動しなくなり、死に至らしめます。

しかしなぜサリンは人間を殺す物質であるがMalathionは人体に毒性が低くて虫だけを殺す殺虫剤であるのだろうか?

両者には決定的な違いがある。

サリンはP=OであるがMalathionはP=Sであるところである。

一方、P=OであるMalathionの酸化体はP=SがP=Oに変わっただけで猛毒である。

すなわちP=Oは人体に猛毒、P=Sは虫にだけ効く、と言うことになる。

実は正確に言うと、虫の体内ではMalathionは酸化態になりコリンエステラーゼにくっ付いて虫を殺しています。

このことについては次回の記事で解説しましょう。

『農薬の殺虫機構とサリン』



今回は筆者の考え方を長々と書いてしまいました。

しかし、これは大切なことだと思うのです。



◎ 参考




今日は今朝からトリメチルアルミニウムの構造を考えていました。

世の中にはなんとも奇妙な分子がたくさんいます。

特に高校化学をきちんと勉強した人には受け入れがたいような分子が。

そんな変な分子を並べてみたいと思います。


◎ Na2



Na2分子の構造(左)、電子式(右)

ナトリウムの二原子分子。

八電子則も満たしてない。

金属の分子は奇妙に思えるかもしれませんが、ナトリウム蒸気中に実在します。

3s軌道の電子を使いσ結合で結合している。

これは分子軌道を考えると、原子状態で気体になるのではなくおのずと二原子分子になるであろうことは容易に予想できる。


Na2を紹介したら次のコイツも言っておきたい。


◎ W2



W2分子の構造

タングステンの二原子分子。

なんと6重結合をしている!!

σ結合が2本、π結合が2本、δ結合が2本の計6本。

今のところ最大の多重結合を持っている分子らしい。


多重結合が来たら、次はもっと変な結合を考えたい。


◎ ジボラン B2H6



ジボランの構造(上)と電子式(下)

水素の手が二本ある超変な分子。

でもこれでも常温で普通に安定。

普通に考えられるボランBH3はむしろ不安定で、ボランは通常二量体であるこのジボランで存在する。

水素の手が二本あるが、これはB-H-Bの「3中心」間で「2電子」で共有結合をしているからである。

これを「三中心二電子結合」といい、「半結合」と言ったりもする。

何故こんな結合をするかというと、単量体のボランには空の軌道があり8電子則を満たしていなく、ちょっとでもマシになろうと隣の違うボランの水素にひっついて行くからである。


三中心二電子結合で、ついにコイツをば。


◎ トリメチルアルミニウム [Al(CH3)3]2


トリメチルアルミニウムの構造

トリメチルアルミニウムも、実際は二量体を形成する。

炭素の手が5本になっているが、これも三中心二電子結合である。

ホウ素やアルミニウム等13族元素はこのように三中心二電子結合をしやすい。

トリメチルアルミニウム(アルキルアルミニウム)は高分子の工業的合成で必要な重要な物質である。

あとこの分子はAl-C結合がある。

このような金属-炭素結合がある化合物を「有機金属化合物」といい、奇妙に見えるが触媒などで超重要な化合物である。


有機金属化合物つながりで言うと、こんな変な化合物もある。


◎ ツァイゼ塩 K[PtCl3(CH2=CH2)]


ツァイゼ塩の構造

1827年に見つかったプラチナの錯塩。

有機金属化学の歴史の始まりである。

なんとプラチナはエチレンの二重結合と結合している!

こういう錯体を「π-錯体」という。

この様な構造はかなり奇妙に見えるだろうが、今となっては珍しくはない。


π錯体絡みで言うと、このサンドイッチが思い出される。


◎ フェロセン Fe(C5H5)2



フェロセンの構造

C5H5環(シクロペンタジエニル環:「Cp」と略される)に鉄が挟まった分子。

Cp環に鉄が突き刺さっているようにも見える。

FeはCp環の5つのCと均等に共有結合していると言える。

Cp環は形式電荷-1で平面な構造をしていて、なんと五員環なのに芳香族。

Cp環が付いたサンドイッチ型の有機金属化合物は他にもたくさん種類がある。

綺麗な黄色をしたとても安定な分子。

筆者はこれを使った実験で操作ミスをして先生に呆れられたことがあり、苦い思い出のある物質である。

☆ フェロセンに関しては『アセチルフェロセンの結晶』も参照。


っと、書いていくときりがないのでとりあえずこの辺で。

他にも、もっと知っている化合物でも変なのはある。

例えばO2

こいつの構造は本当は「O=O」ではない。
※ 『今日の分子No.51 :酸素』参照。

他にもNO2とかも変な分子である。

こいつは奇数電子分子であり、ラジカルである。

しかしそのラジカルの電子をN-O結合に参加させ「奇数電子結合」をしていたり・・・・

世の中は変わり者で溢れています。

しかしこんな分子たちは、ただ単に「例外」みたいなやつではなく、分子軌道法で考えると結構すんなり理解できるのが面白い。


◎ 参考
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