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一般向け/高校生向け楽しい化け学
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サッカーボール型分子として有名なフラーレンC60




Jmolで描画


しかしその構造式を見たことありますか?

高校の教科書には載っていません。

なぜなら、3次元球状のフラーレンを平面で描くとわけわからなくなるからです。




ChemSketchで描いたフラーレンのややこしい構造式


だから高校の教科書には3Dの分子模型だけ載っています。

しかし世の中にはフラーレンの誘導体の化合物があり、化学専攻の学生/化学者はしばしばフラーレンユニットの構造式を描く必要が生じます。

そんなときは大抵、フラーレンの"裏側"を省略して描きます。

例えば




"裏側"を省略したフラーレンの構造式


等。

では構造式がわかったから、さっそく描いてみよう!!

・・・っと、いつかの若き筆者は手描きで描こうとしたが、

全然うまく描けない。

どうしてもバランス良く描けない・・・フラーレンに見えない・・・

これを読んでいる皆さんも、そもそも

「いや・・・こんな複雑なの手描きで描けないっしょ・・・」

と思われるかもしれない。

が、くやしくて仕方ない筆者はフラーレンの描き方を必死に研究しました。

そして

誰でも描ける

描き方を覚えられる

描き方を開発しました!

今回はそんな筆者オリジナルの手描きフラーレン構造式の描き方を紹介します!




なぜ描けない?


まず、なぜ上の構造式はうまく描けないのだろうか。

それは、

16面も描かなければならない。

対称軸が斜めで交差する。

立体的に見せるための微妙な細さ・斜めさが要求される。

という原因があるためであると考えた。

そこで、筆者はそもそも「見せる面」を変えることにした。




見方を変えたフラーレンの構造式


前の図のフラーレンを少し縦に回転させると、このように見える。

するとこの図は

12面しかない!

対称軸が縦横に直交!

面が少なくなったことにより線も少なく!

という大きな利点がある。

しかも後述のようにめちゃくちゃ描き方を覚えやすい

ということで、さっそくこの図を使ってフラーレンの構造式を手描きしてみましょう!



フラーレン構造式の手描き方


※ まずは定規使わずフリーハンドで描いた方がいいです。

1. 六角形を2つ描く。





ポイント;
・ 本当は正六角形ではなくほんの少し縦長になるのですが、正六角形で描くと見栄えが良くなります。
(大抵最後「ちょっとこのフラーレン細すぎ・・・」ってなるので、気持ち横幅を稼ぎます。)


2. 六角形の上下のくぼみに五角形を描く。





ポイント;
・ 立体感を出すため正五角形ではなく若干縦に潰します。


3. 2で描いた2つの五角形を六角形で囲む。





ポイント;
・ 立体感を出すため、1番上と1番下の六角形はできるだけ縦に圧縮。


4. 左右のくぼみに五角形を描く。





ポイント;
・ 全体的に丸くすることを意識して、あんまりとんがらないように。


以上!

六角形、五角形、六角形、五角形」と順番に描くだけで骨格は基本的に出来上がります!

でもこのままでは少し不細工だろうし、かつ構造式としての仕上げがあるので・・・


5. 見栄えを良くするため補正する。





ポイント;
・ 大抵縦長になってしまっているので、一番上下の六角形を潰す。
・ 上下、左右は線対象なので、対称性に注意する。
・ 垂直な線、水平な線をしっかり押さえる。
・ ここで定規入れをする。


6. 二重結合を描き加える。





ポイント;
・ 左右対称・上下対称に描くと綺麗で、間違えない。
・ まずど真ん中にナフタレンを描き、順に炭素の手が4本であるように描くと間違えない。
・ ルールを決めて描く;例えば「六角形の中にしか二重結合は描かない」等とすると間違えないし綺麗に描ける。


以上で

完成!!

なんとこれだけでややこしいフラーレンが描けてしまうのです!

ね?簡単でしょ?



描いた構造式で遊ぶ


せっかくフラーレンを描いたのだから、これを改造して誘導体にしてみましょう。

例えばフラーレン誘導体として有名な[60]PCBMという化合物なら、上図の一番下のベンゼン環の1つの二重結合を解いて、シクロプロパンを作って・・・




手描きしたPCBMの構造式


とすれば出来上がり!

初見で見せられると「パソコンじゃなきゃ描けないだろう・・・」という感じのこんな化合物も、簡単に描けてしまうのです!


※ [60]PCBM(フェニルC61酪酸メチルエステル)




ChemSketchで描いたPCBMの構造式


有機薄膜太陽電池n型半導体材料。

有機化合物なのに、n型の半導体になります。

なぜなら長い共役系を持つフラーレンユニットは比較的安定に電子を受け取ることができるからです。

わざわざフェニル基を付けたりエステルにしたりしているのは、有機溶媒に溶けやすくするためです。
(ただのフラーレンは一般的な有機溶媒に溶けない。)



◎ アルドリッチ社HPのPDFファイルにたくさんのフラーレン誘導体が載ってます。

『有機薄膜太陽電池の基礎』アルドリッチ社

フラーレンが今回のような描き方で載っています。

今回は2つの平面構造式;五角形が中心のものと、ナフタレンが中心のものを紹介しましたが、このPDFファイルにはベンゼンが中心に描かれているものもあります。

誘導体に応じて見やすい角度にしているようですね。



◎ ここまで頑張った後に言うのもなんですが、パソコンだと超簡単に描けます。

パソコンでの描き方は次回紹介します。

→ 次回記事;『誰でもできる!フラーレンの描き方【パソ描き】』
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