一般向け/高校生向け楽しい化け学
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前回記事と関連して、今日はベンゼン置換体の「位置」について。


高校の化学Iで習う、ベンゼン置換体の「オルト」、「メタ」、「パラ」。

フェノールはオルト・パラ配向性だとか、ニトロベンゼンはメタ配向性だとかいうやつです。

例えばクロロベンゼンを例にとると、オルト(ortho-)位、メタ(meta-)位、パラ(para-)位は次のようになります。



クロロベンゼンのオルト位・メタ位・パラ位


化合物の名前で言うと、キシレンを例にとると次の3つあるってやつですね。



キシレンの3つの異性体



さて、こんなに慣れ親しんだ3つの位置、オルト・メタ・パラですが、

3つだけですか?

「え!?もうないじゃん!?」って思われるかもしれません。

では問います、ここは何位ですか?



ここは何位?(クロロベンゼンの場合)


高校じゃ習わないんですよねぇ~。

「でもそこにはもう置換基入ってるし・・・」と思われるかもしれませんが、実は後述のようにここが反応する場合もありますし、名前がちゃんと付いているのです。

さて、そんなマイナーで仲間外れにされている位置の名前は・・・

イプソ位!! (ipso位)



クロロベンゼンのオルト位・メタ位・パラ位・イプソ位


この4つの位置を知って初めてベンゼン置換体の「位置」を網羅したことになります。


ちなみにオルト・メタ・パラ・イプソの名の由来は次のようらしいです。(全部ギリシャ語)

・ ortho:正規の

・ meta:越えて

・ para:越えて

・ ipso:それ自身に

なんとなくそんな感じがしますね。


ではお待ちかねの反応にいきたいと思います。

まずは高校でも習うオルト・メタ・パラ位の置換反応から。


○ オルト・パラ置換

ヒドロキシ基やメチル基等の電子供与基があると、導入基にかかわらずオルト位とパラ位が置換されやすい。(オルト・パラ配向性

例;フェノールのニトロ化 → o-ニトロフェノール + p-ニトロフェノール




○ メタ置換

ニトロ基やカルボキシル基等の電子受容基があると、導入基にかかわらずメタ位が置換されやすい。(メタ配向性

例;安息香酸のニトロ化 → m-ニトロ安息香酸




以上は高校でも習う芳香族の置換反応である。

ではイプソ位が置換される反応とはどんな反応であろうか?

要するに、ベンゼンに元々入っていた置換基が他の置換基に変わる反応である。

「そんな変な反応見たことね~よ~」と思われるかもしれません。

でも、

ひとつだけ高校で習うんです。

さて、驚きの事実ですが覚えていますか?

この反応です↓。


○ イプソ置換

ベンゼン環に電子受容基が入っていて、かつ電子受容基がたくさん入っていたり、強塩基を用いたり、高温に加熱したときにイプソ位が置換される。

例;ベンゼンスルホン酸ナトリウムをNaOHとともに融解するとナトリウムフェノキシド(と亜硫酸ナトリウム)が生成する。




こいつが立派なイプソ位置換反応なんですよ。

実は一般的なオルト・パラ置換やメタ置換は「芳香族求電子置換反応」と呼ばれ、導入基がベンゼン環の電子を求めて近づいてくる反応ですが、イプソ置換は「芳香族求核置換反応」と呼ばれ、全く別のメカニズムの反応です。


一般的に芳香族求核イプソ置換はニトロ基等電子受容基が(共鳴できる位置に)たくさん入って電子が欠乏したベンゼン環に起こります。

例;1-クロロ-2, 4-ジニトロベンゼンとアンモニアを加熱する → クロロ基-Clがアミノ基-NH2に置換する。(塩化アンモニウムが副生する。)



☆ オルト・メタ・パラにしろイプソにしろ、「ある置換基から見て」オルト位だとかイプソ位だとか言います。
(上の例では置換されたのは「ニトロ基から見たらメタ位orパラ位じゃないか!」ってなりますが、クロロ基から見るとイプソ位です。)


電子受容基が少ない場合で強塩基を用いた場合はベンザイン機構で起こることもあります。

例;液体アンモニア中でクロロベンゼンをカリウムアミドKNH2と反応させるとアニリンが生成する。



ただし普通この場合は元々メタ位であった場所に導入基が入ったものも生成します。
『今日の分子No.77 :ベンザイン』参照)


以上のように、重要なのに忘れられている「イプソ位」。

いつも仲間外れで可愛そうなのでこの機に覚えてあげましょう!



◎ 参考

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