一般向け/高校生向け楽しい化け学
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今日もまた東北関東大震災関連で話を書きます。

今の原発の最悪の状況はもうニュースでお知りでしょう。

ニュースを見ていると専門家が「ジルコニウムが反応して水素が発生した」と言っていました。

筆者はハッとしました。


実は筆者、核燃料を生で見たことがあります。

"ペレット"と呼ばれる放射性の二酸化ウランそのものも目の前で見ました。

2年ほど前、原子燃料工業株式会社の工場に友達と3人で超少人数社会見学に行ったのです。

そのときもらった資料が先ほど見つかりました。

発電に使ういわゆる核燃料は燃料集合体()というウランのパッケージです。

これは要するに、二酸化ウランを固めた数百個の小さなペレットを金属の管(燃料被覆管)に入れ、その管をさらに何十~数百本も束ねたものです。

この燃料被覆管に使われる金属はジルカロイというジルコニウム(Zr)の合金(少量のSnや微量のFe、Niも入っている)です。

この燃料集合体を水に浸して湯を沸かして発電するのが福島原発などの沸騰水型原子炉です。


ジルコニウムが燃料被覆管に使われる理由は、管の中のウランが発する中性子をほとんど吸収せずに透過する性質があるからです。

もし中性子を吸収してしまう金属を管に使ってしまうと外に中性子が飛んでいかず、核反応が起こりません。

一方、ジルコニウムのイオン化傾向はアルミニウムと亜鉛の間であり、結構酸化されやすいです。

しかしジルコニウムは表面に緻密な酸化膜、いわゆる不動態を形成するため内部までは酸化されにくいので大丈夫なのです。


燃料集合体が水から露出してしまい、メルトダウンしてしまった現状では、原子炉内には高温のジルコニウムと水蒸気が存在していると示唆されます。

高温ではジルコニウムは酸素や水等と反応してしまうようです。

筆者は原子炉内で水蒸気とジルコニウムが下式のように反応して水素が発生したのではないかと考えました。

Zr + 2H2O → ZrO2 + 2H2

そして発生した水素は先日12日に書いたように格納容器の小さな隙間から抜け出て建屋と容器の間に溜ったのでしょう。

ちなみに福島原発1号機の建屋の上部だけが吹っ飛んだ理由は、水素は軽いため建屋の上部に溜ったからなのでしょうかね。


以前核燃料工場に見学に行ったのはなかなか面白い体験でした。

きっかけは原発等に見学に行ったことのある友達の誘いでした。

黄着衣(薄黄色の白衣)を着せられ、帽子を被せられ、駅の改札みたいな放射能検出器を通らされたりする経験はなかなかできません。

今ニュースで口にされる"モニタリングポスト"も見ました。

二酸化ウランそのものであるペレットなんかは、1センチくらいの円柱のくせに一般家庭6ヶ月の電力をまかなえ、これ一個で数十万円だとか説明されました。

ちなみに駅の改札みたいなので厳重に検査されるのは体に放射性物質が付いていないか調べるだけでなく、ペレットを盗んでないかもチェックするためです。

セキュリティーはかなりきつかったです。

もちろん、生で目の前にウランがあるのですから放射線浴びまくりでした。
(しかしそうまで放射能に近づいてもほとんど体に被害はないものなのです。)

3人という超少人数で行けたので、質問がいくらでもできて楽しかったです。

普通学校行事等で大人数でぞろぞろと行くと1回質問できたら良いほうです。

質問がいっぱいできたと言うよりか、工場技術者とべらべら喋りながら工場を回っていたと言ったほうが正確です。


「二酸化ウランを一旦還元性雰囲気で加熱し~~~」っという過程を説明してもらったとき、

筆者「還元性ガスは何ですか?」

技師「水素です。」

筆者「じゃあ二酸化ウランの還元が起こっているんですね。ならその後ウランを再酸化せず金属ウランで燃料にした方が燃料のウラン原子密度が高くて良いじゃないですか?」

技師「金属ウランじゃ反応性が高すぎるからです。」

等と言う、核物理の場なのに化学の質問ばっかりしてたら

技師「あなた化学系の人ですか?」

っとバレてしまいました(笑)


しかし今世間は笑えない状況ですねぇ・・・


英国では日本の原子炉の設計と自国の原子炉の設計を比べて、自国で地震が起こったときのための課題はないかと考察しているようです。

大切なことは、次またこうならないように反省し対策を考えることでしょう。

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