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一般向け/高校生向け楽しい化け学
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わたくしナノな世界を扱ってまして、最近原子や分子の数を数えることが多いです。

ということで、コインやコップの中に原子や分子はいくつあるのか数えてみることにしました。

原子や分子はとても小さいので、ちっちゃい物体中にでもたくさん詰まっています。

一方で、原子・分子がほとんどないスカスカな場所や、とても小さな世界もあります。

さて「ここ」にはいったいいくつの原子・分子があるのでしょうか、数えてみましょう!



一円玉

まずもっとも身近な純物質の1つである一円玉を取り上げてみましょう。

一円玉は純粋なアルミニウムAlでできています。

さて、一円玉の中にアルミニウム原子はいくつ含まれているでしょうか。

一円玉の質量は1 g、アルミニウムの原子量は27なので、

(一円玉中のAl物質量) = (1 g) ÷ (27 g/mol) = 0.04 mol

です。

物質量アボガドロ定数NA = 6.0×1023 個/molをかけると原子の個数になりますから、

(一円玉中のAl原子数) = (0.04 mol) × (6.0×1023 個/mol) = 2×1022

です。

すなわち20000000000000000000000個、さらに言えば2×1000億×1000億個です。

こんなにちっちゃい一円玉でも極めて大量のアルミニウム原子が含まれているわけです。

原子の小ささがよくわかりますね。


またこのように原子・分子の数を数える時、「20000000000000000000000個」とか言ってるとわけわからないので、「0.04 mol」のように値が小さくわかりやすい物質量という量を使うわけです。



コップの中の水

さて次はコップの中の水分子H2Oの数を数えてみましょう。

例えばコップの中に200 mLの水が入っていたとします。

水の密度は1 g/cm3ですから、2 dLの水は200 gです。
☆ 1 cm3 = 1 mLです。

原子量は水素Hが1、酸素Oが16なので、水H2Oの分子量は18です。

したがって

(コップ中の水の物質量) = (200 g) ÷ (18 g/mol) = 11 mol

です。

個数で言うと、アボガドロ定数をかけて

(コップ中の水分子数) = 7×1024

です。

コップ一杯の水を飲むということは、なんと7000000000000000000000000個もの水分子を飲み込んだことになるのです。

分子がとても小さなものであることがよくわかりますね。


ダイヤモンドの指輪

分子は普通とても小さなものですが、中にはとても大きな分子もあります。

例えばダイヤモンド。

1カラット、すなわちたった0.2 gのダイヤモンドでも数万円~数十万円はお値段がはります。
(ものにも依りますが。)


さて、そんな高い高い1カラットの中にはいったいいくつのダイヤモンド分子が含まれているのでしょうか。

答えはズバリ、たった1分子!

ダイヤモンドは炭素原子Cが三次元的にたくさん結合した巨大分子で、あの一塊の端から端まで1つの分子です。

このように、世の中にはたった1分子でできた物もあるのです。



ペットボトルの中の空気

次は空気中の分子の数を数えてみましょう。

私たちを包んでいる空気は目に見えませんが、たくさんの分子で構成されています。

乾いた空気は主に窒素N2(78 vol%)、酸素O2(21 vol%)、アルゴンAr(1 vol%)で構成されています。

うちわで仰ぐと風が顔に当たりますが、これはまさに空気中の分子が顔にぶつかっているわけで、空間が分子で詰まっている証拠です。

さて、空気中にはどのくらいの量の分子があるのでしょうか。

例えば1 Lの空ペットボトル中の空気の量を計算してみましょう。

気体の体積と物質量の間には、次の理想気体の状態方程式という関係式が成り立ちます。

PV = nRT

◎ P:圧力、V:体積、n:物質量、R = 8.3 kPaL/(K・mol):気体定数

これは理想気体にのみ当てはまる式ですが、常温常圧ならほぼ理想気体と同じように計算できます。


さて、上の式にP = 1013 hPa(常圧)、V = 1 L、R = 8.3 kPaL/Kmol、T = 300 K(= 27℃)を代入して計算すると

(ペットボトル中の空気分子の物質量n) = 0.04 mol

となります。

すなわち20000000000000000000000個であり、何も入ってなさそうなペットボトルでもものすごい数の空気分子が入っています。


また、最初の例のように小さな一円玉中のアルミニウム原子の数も0.04 mol。

空気は1 Lで0.04 molなので、空気がいかにスカスカなものなのかがわかります。



宇宙空間

では真空でさらにスカスカな宇宙空間にはどのくらいの分子があるのでしょうか。

理屈の上では真の真空は完全にからっぽで、全く分子はありません。

宇宙は真空といいますが、実際には10-9Paくらいの極々微小な圧力があります。

すなわちちょっとだけ分子があります。

では1 Lのペットボトルに「宇宙の空気」を詰めたらどれくらいの分子が存在するのか、計算してみましょう。

低圧の時も理想気体として考えることができるので、また理想気体の状態方程式:

PV = nRT

を使います。

宇宙では、P = 1×10-9 Pa、T = 3 K(= -270℃;寒い!)なので、V = 1 Lのとき

(宇宙空間でのペットボトル中の分子の物質量n) = 4×10-14 mol

です。

おおお!!だいぶ少ない!!

個数で言うと、200億個。

ついに数えられる数に!
(数えるのだいぶしんどいけど!)


ちなみに現在人間が到達できる限界の真空は10-11 Paくらいらしいです。

この圧力でも1000個/cm3くらいの数密度で分子が存在します。

原子や分子がいかに小さく大量に存在してるかがよくわかりますね!



参考
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最近反応機構の記事が人気みたいなので、今回はみんな大好きベンゼンの反応を解説します。

高校化学には化学反応がどう起こっているのか途中過程が出てこない。⇒ 「化学は暗記物」 という構図ができているように思えます。

化学は暗記ではなく考える学問、結果を覚えるだけではなくて、その途中経過も大切!
(もちろん、結果を覚えることも大切なのですが。)

私は化学反応がどのようにして起こっているのかを表す「反応機構」というものをぜひ知って頂きたい。

ということで、お勉強的ですが反応機構に関する記事も書いていこうと思います。


塩化鉄(Ⅲ)FeCl3存在下、ベンゼンC6H6に塩素Cl2を反応させると置換反応が起こり、クロロベンゼンC6H5Clが生じる。

さて、この反応はどのようにして起こるのか。

素反応に分けて見ていきましょう。

そして3つのポイント;

A. 触媒FeCl3の役割は?

B. どのように起こる?

C. 反応のドライビングフォースは?

を明らかにしていきましょう。


※ 反応式中の「巻き矢印」は電子対の動きを示しています。
「こっちから→こっちへ」電子が動くことを表しています。



ベンゼンのクロロ置換反応機構


1. Cl2の活性化



Cl2が塩化鉄(III)の鉄イオンに配位する。

するとCl2の「Cl」が「Cl+」の状態になる。

極端に書くと式の右に示したような構造で、一番左のClが「Cl+」の状態になっている。


2. 求電子付加



活性化されてプラス的なClと、マイナス的なベンゼン環が引き合う。

するとベンゼンの1つの二重結合が解かれてCl+が付加した形になる。
(ベンゼン環は壊れてしまう。)

◎ プラス的なClがベンゼン環の「電子」を「求」めて「付加」するので求電子付加と言う。


3. H+の脱離:ベンゼン環の再生



Clと同じ炭素にくっついているHがH+として抜けると、安定なベンゼン環が再生するとともに電気的に中性になることができる。

すると「Cl付加→H脱離」で全体としてはベンゼンのHがClに置換したことになる。


4. FeCl3の再生



生じたベンゼン環再生のために脱離したH+と、Clを活性化させた時に生じた錯イオン[FeCl4]-からHClとFeCl3が生成。

⇒ FeCl3は反応前後で正味変化しないので、触媒である。

※ 今回はわかりやすくするため反応3と4を別々に書いたが、FeCl4-が塩基として働いてH+を抜きに行くので、普通反応3と4は1段階で書かれる。


以上をまとめるとよく知った反応式



になる。

このように「求電子付加→脱離」して正味置換が起こる反応を求電子置換反応といいます。

特に芳香族化合物の反応なので、芳香族求電子置換反応と呼ばれます。

混酸を用いたニトロ化、塩化アルミニウム触媒でのアルキル化・アルカノイル化等も芳香族求電子置換反応の一種です。

それぞれ活性種はNO2+、R+、RCO+で、同じように「求電子付加→H+脱離」の反応機構で進みます。


では冒頭のポイントの答えをまとめると;

A. 触媒FeCl3の役割は?
⇒ 反応活性種Cl+を作る。

B. どのように起こる?
⇒ 「求電子付加→H+脱離」で正味置換反応が起こる。

C. 反応のドライビングフォースは?
⇒ プラス的なCl+とマイナス的なベンゼン環との引き合い、安定なベンゼン環の再生。

です。

反応機構の記事のたびに書いている「自然の摂理;プラスとマイナスが引き合う」がちゃんと成り立っていますね。

以上、高校化学では明かされず終いの反応機構と触媒の役割の一例でした。


参考




今回のテーマはずばり分子のダンス!

我々の身の回りにある分子たちは常に活発に熱運動を行っています。

並進:分子が直線移動すること。

振動:結合が伸縮、変角すること。

回転:分子がくるくる回転すること。

分子のダンスは「振動」に由来します。



ベンゼンの振動モード

では兎にも角にも、さっそく分子のダンスを見てみましょう。

ベンゼンC6H6を例に取ります。

量子力学的な計算により、ベンゼンは主に次の4種類のダンスを踊ることがわかります。

※ このページでは量子力学計算ソフトGAMESSを用いて計算した結果を描画ソフトMolekelで出力しています。自前で計算しているので完璧ではありませんが、だいたいこんな感じです。


1. C-H伸縮振動

ベンゼンのC-H伸縮振動(GIFアニメ)
C-H結合が伸び縮みする振動モード。

ベンゼンさんノリノリです(笑)

このように結合が伸び縮みする振動を伸縮振動と言います。

原子の結合とは、ちょうど2つの球がバネで繋がれた様なモデル(調和振動子)で表すことができます。

そのバネのビヨンビヨンの仕方で、このような伸縮振動や後述する変角振動が起こります。


2. C-C環伸縮振動

ベンゼンC-C環伸縮振動(GIFアニメ)
次はC-C結合が伸び縮みする振動モード。

なんだか生物みたいなウネウネした不思議な振動です。

伸縮振動の中でも、このように特に環が伸び縮みする環伸縮振動と言います。


3. C-H面内変角振動

C-H面内変角振動(GIFアニメ)
C-H結合の角度が変化する振動モード。

環伸縮と似ていてわかりにくいですが、この振動では上下のC-Hはほぼ固定されているのが特徴です。

よく見ると、C-H結合の振動はベンゼン環と同一平面内で起こっていることがわかります。

これが面内変角振動と呼ばれる所以です。


4. C-H面外変角振動

C-H面外変角振動(GIFアニメ)
こちらもC-H結合の角度が変化する振動モード。

連続でブリッジをしているような振り付けです。

こちらはわかりやすく、ベンゼン環に対して垂直にC-H結合が振動しているのが特徴です。

これが面外変角振動と呼ばれる所以です。


これら4つがベンゼンのダンスです。

ベンゼンの可愛らしいダンス、いかがだったでしょうか?



IRスペクトルと分子の振動

ところで、分子がこのようにダンスをするにはその分エネルギーを与える必要があります。

分子の振動のエネルギーは赤外線(IR)のエネルギーに相当します。

なので分子に赤外線を当てると、分子はそれを吸収して振動運動を始めます。

また、各振動モードに対して特有の波長の赤外線を吸収する性質があります。

例えばベンゼンの場合、上記4つの振動モードは次の4つのピークに対応します。


ベンゼンのIRスペクトル(計算値。実測値とは少しズレているので注意。)

横軸が照射した赤外線の波数(Wave number:波長の逆数)。

縦軸は透過率(Transmittance)で、下向きのピークが吸収を表しています。

このように、照射した赤外線の波長に対して透過or吸収強度を測定したスペクトルを赤外吸収スペクトルIRスペクトル)と言います。

基本的にIRスペクトルの吸収波長は官能基に特徴的なものであり、異なる物質でも同じ官能基を持っていればほぼ同じ位置にピークを示します。

したがって、IRスペクトルは測定物質がどんな官能基を持っているかを教えてくれる便利なツールです。


以上、ベンゼンのダンスとそれに対応するIRスペクトルについてでした。

分子のダンス ― 振動モードを理解することは、有機化合物の同定や、量子力学的挙動を考える上でとても重要です。



使用ソフト・計算条件
  • Firefly(PC-GAMESS), 3-21Gレベルで振動計算
  • Facio
  • Molekel
参考




鉄は酸素があると酸化されてサビる――


これは小学生でも知っている事実です。

しかし、「酸素がないところで選択的にサビる」という驚きの現象があります。


例えば上図のように、一方が大気に解放されている水道管があるとする。

すると大気に触れている上部は酸素が多い状態になり、深く埋まっている下部は酸素が少ない状態になる。

するとなんと、酸素がほとんどないはずの水道管深部が酸化されサビてしまうのだ!

これは、酸素濃度の高いところと低いところが触れ合うことによって形成される「酸素濃淡電池」の原理によります。

今回はそんな不思議な濃淡電池を紹介することにします。



濃淡電池

例えば次のような電池を考える。



電解質溶液(NaCl aq)は素焼き板で左右に分けられていて、それぞれの部屋には白金電極が浸されている。

左の部屋は1気圧の酸素が溶けていて、右の部屋には2気圧の酸素が溶けているとする。

このような状態の時、左右の物質が同じにもかかわらず2つの電極間に起電力が生じ、電池として作用する。



上図のように左の電極で水の酸化反応が、左の電極で酸素の還元反応が起こる。

これは一見とても不思議な事のように見えるが、実はとても簡単。

左右の部屋で酸素濃度を合わせようとしているのです。

左の部屋は酸素が少ないので酸素を増やす反応:水の酸化が起こります。

右の部屋は酸素が多いので酸素を減らす反応:酸素の還元が起こります。

このように、濃度差によって電池反応が起こって電流が流れる電池を濃淡電池と言います。


濃淡電池は酸素に限ったものではありません。

酸素の代わりに水素を用いてもいいし、過マンガン酸カリウムを用いてもいいです。

また、左右の部屋で濃度差が大きいほど起電力も大きくなります。



酸素濃淡電池と腐食

さて本題。

なぜ水道管は酸素がない場所でサビてしまうのか。

水道管は鉄でできていて、開口部が酸素が多く、深部は酸素が少ない。

内部は水で濡れている。

これと等価な電池の図を書くと、次のようになります。



したがって先程と同様に酸素濃度を合わせるために、酸素の少ない左の部屋では酸化反応が、酸素の多い右の部屋では還元反応が起こるでしょう。

しかし、さっきと違うところは電極が鉄であるところです。

鉄は水素よりイオン化傾向が大きく、水よりも酸化されやすいため、水の酸化ではなく電極である鉄の酸化が起こります。



したがって酸素の少ない水道管深部でサビが進行します。


電池の考え方を応用すると、このように摩訶不思議な腐食現象もスッキリ理解できます。

この他にも、金属の腐食は電池反応で解釈できるものがたくさんあります。

このような電気化学的な腐食を抑えるため、実際の水道管やパイプラインには犠牲電極や外部電圧印加といった工夫がなされています。

私たちが水道から綺麗な水を飲めるのも電気化学のおかげです!



参考





くぅ~疲れましたw これにて(学会が)完結です!

一山超えたときはやっぱりコレ、EtOH!!

一山越える前にストレス溜まってるときもコレ、EtOH

そんでもって、特に何もない平和な時もやっぱりコレ、EtOH!!

さて、今回は筆者が最近お世話になりっぱなしのこの分子を紹介します。


※ 未成年者の飲酒は法律で固く禁じられています!

この記事の後半を読むとエタノールの恐ろしさがよくわかるでしょう。



今日の分子 No.81 : エタノール CH3CH2OH

Jmolで描画


IUPAC名:エタノール。

慣用名:エチルアルコール。

一級アルキル基に1つヒドロキシ基が結合した一価の一級アルコール

揮発性が高く、いわゆるアルコール臭のする無色透明液体。

ヒドロキシ基が水素結合を作ることができるため、水とは自由に混和する。

引火性の液体で、第4類危険物(引火性液体)、危険等級IIに指定されている。

また言わずもがな、お酒の成分。

消毒液としても用いられる。


エチル基CH3CH2-はよく「Et-」と略される。

よってエタノールCH3CH2OHはよくEtOHと表される。

筆者のような化学好きな人がよくTwitterやFacebook等で「EtOH」と言っているのはエタノールのことです。

また、上図のようにエタノール分子は犬のような愛嬌のある構造をしているため、分子模型も人気です。


実験室でもよく用いられるエタノール。

しかしメタノールCH3OHに比較してその値段は高い。

例えば和光純薬では、メタノールは500 mLで850円で売られているのに対し、エタノールは2100円で売られている。

これは、試薬であろうとエタノールは酒税がかかるからである。

一方、エタノールにわざとメタノールやイソプロパノール(CH3)2CHOHを加えて「変性アルコール」とし、酒税を回避している場合もある。


また、エタノールの水溶液は「共沸」という現象を生じる。

共沸とは、混合液の蒸留の際にある濃度で複数の成分が同時に、同一組成で蒸発する現象である。

例えばエタノール水溶液の蒸留では、エタノール濃度が96%のとき共沸混合液となり、それ以上どんなに蒸留しようと混ざった4%の水を除くことができない。

だから世界最高のアルコール度数で知られるお酒のスピリタスは96度なのです。



合成

エタノールは伝統的に、酵母菌によるアルコール発酵グルコースC6H12O6から合成される。




石油化学工業的には、従来用いられてきた(A)硫酸法と、最近主流となった(B)気相法で合成される。

(A) 硫酸法

エチレンに硫酸を付加し、次いで加水分解することでエタノールを得る方法。



(B) 気相法

硫酸法は硫酸を用いるため装置の腐食などの問題がある。

そこで現在、固体リン酸触媒を用いたクリーンな気相合成法が主流となっている。





反応

エタノールは多種多様な化学合成に利用される。

代表的な反応例を以下にいくつか示します。

(i) エステル化

エタノールを濃硫酸触媒でカルボン酸と脱水縮合すると、エチルエステルが生じる。

例えば酪酸CH3CH2CH2COOHとエタノールのエステルである酪酸エチルCH3CH2CH2COOCH2CH3はパイナップルの香り成分であり、フレーバーとして用いられる。



⇒ エステル化について詳しくは『Fischerのエステル合成法 』参照。


(ii) ジエチルエーテルの合成

エタノールを濃硫酸触媒で150℃以下で加熱すると、2分子の脱水縮合によりジエチルエーテルCH3CH2OCH2CH3が生じる。




(ii) エチレンの合成

エタノールを濃硫酸触媒で170℃で加熱すると、脱水反応が起きエチレンCH2=CH2が生じる。




(iii) 脱プロトン化

エタノールに強塩基を作用させると水素イオンH+の引き抜きが起こり、エトキシドCH3CH2O-が生じる。

水素化ナトリウムNaHを用いるとナトリウムエトキシドCH3CH2ONaと水素H2が生じる。




(iv) 酸化

第一級アルコールであるエタノールは酸化剤によって二段階酸化され、アセトアルデヒドCH3CHOを経て酢酸CH3COOHになる。





アセトアルデヒドは還元性が高いため、汎用酸化剤である重クロム酸カリウムK2Cr2O7過マンガン酸カリウムKMnO4を用いると一段階目で止めることは難しい。

一方、穏やかな酸化剤であるクロロクロム酸ピリジニウム(通称:PCC)(C5H5NH)+ClCrO3-を用いると第一級アルコールを一段階だけ酸化してアルデヒドを得ることができる。

なお、実は全く水がない状態ではアルデヒドは酸化剤に対して安定である。



お酒の化学 ~ 「酔っぱらう」と「二日酔い」

さて、エタノールと言えばやはりお酒に含まれていることが最大の特徴でしょう。

お酒、すなわちエタノールを飲むと酔っぱらう。

生理学的に言うと、全身麻酔のようにはたらき大脳皮質の一部を抑制制御から解放する、心機能の抑制剤です。

要するに、神経細胞を正常に働かなくしてしまうわけです。

さて、なぜエタノールは「酔っ払い」を引き起こすのでしょうか。

実はエタノールとたんぱく質が結合することがキーです。


神経細胞間で通信を行うシナプスという器官があります。

刺激は、「"上流"神経細胞 → シナプス → 後シナプスニューロン」という順で伝わります。

ここで、刺激が伝わってくるおおもとである"上流"神経細胞に注目します。

神経伝達物質の一種にγ-アミノ酸であるγ-アミノ酪酸(GABA)H2NCH2CH2CH2COOHという物質があります。

GABAが"上流"神経細胞の表面にあるたんぱく質と結合すると、たんぱく質の形が変化して塩化物イオンCl-が細胞内に流れ込むようになります。

すると神経細胞内外での電圧が小さくなり、細胞が興奮しなくなります。

これが抑制性の神経伝達物質であるGABAの正しい働きです。


一方、エタノールが存在すると問題が生じます。

エタノールも"上流"神経細胞の表面にあるたんぱく質と結合することができますが、エタノールと結合したそのたんぱく質は形が変化して、元のたんぱく質よりもGABAと結合しやすくなります。

すると必要以上にGABAが結合し、必要以上に神経細胞の興奮が抑制されます。

すなわち、以後の神経細胞へと刺激が伝わらなくなり、麻酔状態となってしまうというわけです。


また、お酒を飲んだ次の日に頭が痛くなる「二日酔い」が起こることがあります。

これはエタノールがアルコールデヒドロゲナーゼという酵素によって酸化されて生じるアセトアルデヒドが原因です。

アセトアルデヒドは体内でさらに酸化されて酢酸となり、代謝されていきます。上式(iv)。



参考

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