一般向け/高校生向け楽しい化け学
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今日、この前買った「高圧ガス保安技術」という本を眺めていると「O3F2」なる物質と出会いました。
この子は誰?
う~む・・・昔ネットでチラッと見た気はするが・・・
この本によると、
「(フッ素は)酸素と直接反応しないと考えられていたが、液体フッ素と液体酸素の混合物に紫外線を照射することによりO3F2が生じる。」
らしい。
酸素は電気陰性度が非常に高い原子なので、通常分子中では酸化数-Ⅱをとります。
酸素分子や過酸化水素など、酸素-酸素結合があるときは例外的に酸化数0/-Ⅰをとるが、他の原子に電子を取られる事はまずありません。
しかし、酸素に唯一対抗出来る元素があります。
そう、フッ素です。
周期表で右上にある元素(希ガスは除く)ほど電気陰性度が高いので、フッ素が元素中最強の電気陰性度を持つということになります。
なので、酸素-フッ素結合では電子はフッ素側に偏り、酸素は酸化されている状態になります。
薄い水酸化ナトリウム水溶液にフッ素を通したときに生成するF-O-F中では酸素は酸化数+Ⅱをとります。
このOF2の名前は「酸化フッ素」ではなく「二フッ化酸素」です。
原則、「○○化××」は元素"○○"が元素"××"から電子を奪って結合していることを表します。
電子が大好きな酸素は電子を取られる事を嫌います。
だから酸素的には酸化数を0、あわよくばマイナスになりたいのですぐ分解したり他の激しく分子と反応します。
そんな不安定な酸素の酸化物なのに、世の中には二フッ化三酸素O3F2なんてはぐれ者がいるというのが驚きです。
本には構造がかかれていなかったので、とりあえずネットで探したのですが・・・見つからず・・・
じゃあ・・・
わからないんだったら考える!
まず、有り得そうな構造を考えることにしました。
Oが3つとFが2つの単純な数学的な繋げ方はたくさんあります。
単に横並べだけでなくてひとつの原子に3つ以上の原子が結合することも考えられます。
ここで、無機化合物の構造を考えるとき、単に原子価だけを頼りに分子を組んではいけないということに注意。
もし「塩素の原子価は1だ!」と信じ込むと二酸化塩素ClO2の構造(折れ線)は導けません。
なぜ原子価が変わってしまうかというと難しいのですが、たまに電子がより不安定な居場所(=よりエネルギーの高い原子軌道)に落ち着くこともあるからです。
が、フッ素や酸素には原子価を拡張できそうな、いい感じの電子の居場所がなさそうなので、原子価はそれぞれ普通に1と2であると考えました。
(より詳しく言うと、フッ素や酸素は最外殻にd軌道を持たないから。あと、オゾンは手の数が怪しいですがあれは配位結合型の結合をしてるだけです。)
そう仮定して絞ると可能性はひとつ、妥当な構造はF-O-O-O-Fだけになります。
さあこれは存在できそうな分子でしょうか。
また、どんな形をした分子なのでしょうか。
これは頭で考えても答えは出ないので、パソコンの演算能力を使います。
F-O-O-O-Fの構造をこのサイトでおなじみのソフト、WinMOPACで計算させます。
このソフト、ちょっとコツがあって一発計算させただけではあんまりうまくいきません。
予想する構造を初期値として設定して何回も何回も計算を試行します。
(一番小さい「Heat of Formation」の値の構造を探します。)
・・・・っという今回の考察・仮定・試行により分子F-O-O-O-Fの構造は、真空中で次のようであると計算されました。
F-O-O-O-Fの予想構造(真空中) ※赤が酸素、ピンクがフッ素
なかなか趣のある形。(点群で言うとCsのシンメトリーですしね。)
分子の安定性を安定性を考える上で指標となるのが「Heat of Formation」という値です。
これは高校で習う"生成熱"の符号が逆の数値です。
生成熱は成分元素の単体が持つ化学エネルギーと、化合物が持つ化学エネルギーとを比べたエネルギー値なので、「Heat of Formation」の値が正に大きければ不安定、負に大きければ安定となります。
(真に"安定"かを知るには分解性生物の生成熱を考えたり、結合が切れつつあるときのエネルギーを考えたりしないといけないので単純にはいえません。)
ではこの分子の場合の「Heat of Formation」の値は・・・18.6 kcal/mol!
意外と小さい値!
筆者がPCの壁紙にしてるp-ヒドロキシアゾベンゼンでも45.1 kcal/molなのに!
ちなみに同じF-O-O-O-Fでも形を変えた場合は100 kcal/mol等かなり不安定な値が出るので、上図の構造は妥当っぽいです。
念のためF-O-O-O-F以外のO3F2も何種類か計算してみましたが、まともな結果にはならなかったです。
以上より、今回の考察でO3F2は構造式F-O-O-O-F、分子の形は上図、Heat of Formation(安定性)は18.6 kcal/molとなりました。
なお、実際には真空中ではないし、周りには他のO3F2分子や溶媒等があるので必ずしも上図の構造をとるとは限りません。
また、所詮筆者の考えとパソコンの計算による予想なので第一F-O-O-O-Fという構造や、上記構造があっているとは限りません。ご了承ください。
ちなみに、ネット中本気で探し回っていたら中国語の質問サイトの回答に「O3F2はの構造はF-O-O-O-F」という表記を見つけました。
質問サイトは信用性に欠けますが、F-O-O-O-Fという構造は合ってるかもしれませんね。
ふぅ・・・筆者は日夜こんなことばっかりやってます。
(基本的に無理やりな分子ばっかり計算させてるので滅多にうまいこといきませんが(笑))
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今日塾でバイトをしていると、こんな問題に出会いました。
どんな問題かと言うと、要するに、
「金属は熱伝導率や電気伝導率が高いが、なぜでしょうか?」
という問題。
答えは「自由に動き回れる自由電子があるから。」
たぶん高校化学ではこう習うし答えにもそう書けばいいのですが、
「なぜ自由電子があればそんな性質でるんですか?」
と言うのが気になるところ。
さあ難問だ。
これは高校化学で説明することはできない。
が、噛み砕いて言うことはできる。
電気伝導率が高い理由;
「金属中では金属イオン(金属原子)の周りを電子が自由に動き回っている。
その電子は電圧をかけると簡単に動かすことができるから。」
金属中の自由電子の様子
一方非金属の結晶には自由電子はなく、電子は価電子として原子と原子の間に束縛されるため電気伝導性を示さない。
(逆に言えば非金属でも自由に電子が動ければ電気伝導性を示す。例:黒鉛)
上のモデルを見ると、金属が展性・延性を持つ理由もわかる。
自由電子がざっくりと金属原子同士を結びつけているため、外力を加えて原子の位置がずれても同じく
ざっくりと原子同士が結びつきあうため、非金属のように切れたり割れたりしにくいのだ。
熱伝導率が高い理由;
「物質の温度とは構成粒子の振動の激しさである。金属に熱をかけると
原子と自由電子の振動が激しくなるが、動きやすい自由電子は次々に熱振動を隣の電子に伝えていくから。」
ざっくり言うとこんな感じ。
このように、金属特有の性質は自由電子が原因である。
延性・展性・熱伝導性・電気伝導性・・・・
実際にちゃんと説明しようと思うと、電気伝導性はバンド理論持って来ないといけないし、熱伝導性は統計力学使わないと説明できない。
しかし、結局伝導電子の存在が熱・電気伝導性を決めるので、「電気の良導体は熱の良導体である」という結論が出るのが面白い。
ちなみに金属光沢も自由電子が原因。
なぜなら
「金属には自由に動ける電子があるからプラズマ振動の角振動数が大きく、ゆえに可視光の屈折率が虚数となり全反射するから。」
いや~物性論って難しい~
◎ 参考
- 『物性論―固体を中心とした』黒沢 達美(著), 裳華房; 改訂版 (2002/2/25)
さっきパラッと本をめくったらヘリウムが出てきたので、今日はヘリウムを紹介します。
今日の分子 No.45 ヘリウム He
WinMOPACで描画
希ガス原子であり、単原子分子。
無色透明な気体。
最も沸点が低い物質である。
空気中に極々微量含まれ、天然ガスの中には結構な割合で含まれる。
天然ガスに火をつけようとライターを近づけると、ライターの火が消えてしまうことがあるほど高濃度で含まれることもあるらしい。
常圧では絶対零度でも固体にならない性質や、液体ヘリウムが壁を上る現象など、量子力学的な特異な性質も持つ。
水素分子の次に軽い気体であり、空気よりずっと軽いため風船や飛行船に充填して浮遊させることに使われる。
ちなみに、かつては水素も用いられたが、水素は簡単に着火して爆発するため危険である。
ヘリウムを低圧でガラス管に封入し、電流を流すとピンク色に光る。
ダイビングのときの酸素ボンベにも酸素以外の気体として入っている。
というのも、窒素にすると深海の高圧で血液中に溶け込み中毒になるかららしい。
分子が小さくほんの細孔でも通り抜けることができるため、配管の漏れの検出等にも用いられる。
他にもヘリウムネオンレーザー等に使われたり、用途は広い。
しかし一番有名な使い方は、ヘリウムの吸引で声を変えれるヤツでしょう。
ガーガーとディズニーのドナルドダックみたいな高い声になる。
この現象、なんとその通り"ドナルドダック効果"という。
これはヘリウムは軽い気体のため、ヘリウム中で音速が速くなることによる。(2011/5/2のブログを参照)
逆に重い気体(クリプトン等)を吸入すると声が低くなる。
ちなみに、このときのパーティー用ヘリウムボンベにも20%酸素が含まれている。
もし純ヘリウムなら、それヘリウム自体に毒性はないが窒息の恐れがあるからである。
人間は無酸素気体中で2回呼吸すると意識喪失を起こすらしい。
◎ 参考
・ 『高圧ガス保安技術 第8次改訂版』高圧ガス保安協会著(2011)
そういえば、昨日大学に研究会行ったついでに成績もらってきました。
多くの大学にはGPA(グレード・ポイント・アベレージ)なる、成績の総評点みたいな成績の尺度があります。
中学で言うと各教科の内申点の平均みたいなヤツ。
この数値は今回が今までの最高点を記録しました。
やったー
ちなみに、GPAがいくつ以上なら学部の成績優秀者だという基準があって、
実は筆者は大学に入学してから今まで常に成績優秀者です。
成績優秀者なら受講できる単位数が増えるなど、実際あんまり意味ない特典が付きます。
大学に入学することを大きな目的として高校生時代は勉強をしますが、大学に入ってから怠けると意味ありません。
(怠けちゃう大学生結構に多いョ!)
さてさて、次に執筆する「講義」を何にしようかと考え中。
とりあえずオルト-パラ配向性・メタ配向性の判別を掲載しようかな。
メチル基・ヒドロキシ基が入ってるベンゼン環ならオルト-パラ、ニトロ基やカルボキシル基ならメタ配向性・・・
等は暗記物ではありません。
ちゃんと理屈に成り立っていて、入っている置換基を見たら配向性はわかります。
大学の研究発表会行ってました。
非公開式の発表会だったので、参加者は企業の秘密会と同じく発表内容を漏らしてはいけないということ。
まあ、同じ化学でも抗がん剤から有機EL素子まで幅広かったです。
さてさて、今朝ニュースを見てるとリチウムイオン電池の規制緩和の法案をやってました。
リチウムイオン電池は今日本で危険物として扱われているため、海外諸国のように自由な輸送ができないと。
そのため国際競争に勝つために国内の規制緩和をすべきだという。
すると市場が活性化し企業は儲かり日本の景気は良くなるという政治家の判断だ。
○ このニュースの記事
正直、筆者はあまり賛成できない。
というのも、世界の規制が低かろうが、リチウムイオン電池は危険に違いないのだ。
リチウムイオン電池には「今日の分子No.35」で紹介した炭酸エチレンが電解溶媒として入っている。
WinMOPACで計算・描画 ※二重結合省略
これは引火性液体で、非常に危険。
分子内に酸素分子が多く含まれている有機化合物は燃えやすい傾向がある。
危険なものは危険。
上のニュース記事にあるように、危険に代わりはないのだ。
金回りが良くなっても、その弊害として事故が起こって人がなくなれば元も子もない。
経済と科学技術。
人の安全がまず一番大切だと思います。
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