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一般向け/高校生向け楽しい化け学
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『分子のカタチ』で分子には形のあることを書きました。

しかし実際の分子はもっとたくさんの原子から成っていて、紙の上でそれを考えるのは難しくなってきます。

そこで、もっと複雑な、例えば有機化合物等の場合は分子模型を組むといいです。

分子模型を組むと、分子全体の形・原子の距離等がわかり、それらからその物質の融点や安定性をも読み取れることがあります。

分子模型作りはブロック遊び感覚でできます。

例えばメタンのように手が4つある炭素は四面体のブロック。

アルケンなら三角、アルキンなら直線、ベンゼンなら平面六角形.....


分子模型の組み方には色々あります。

今回は分子模型や、それを作るための道具・ソフトウェア等を紹介します。

まず発泡スチロール球を使ったものを紹介します。


ベンゼンの分子模型




― 発泡スチロール分子模型 ―


これはプラモデル感覚で、趣味のファンが多い分子模型です。

ファンデルワールス半径(原子の占める体積を表す)が1.2Å(1Å=10-10 m)の水素原子に対して直径25mmの発泡スチロール球、酸素や窒素に対して30 mm球、炭素や塩素に対して35 mm球...とすると、ちょうど約1億倍の分子模型が作れます。

空間充填モデルと言われる分子模型の一種で、分子が占める体積や原子同士のぶつかり(立体障害)等が説明しやすいモデルです。


空気中の分子たち
左から順にO2、Ar、CO2、N2、Ne、He


作り方は、穴定規・電熱線カッター・角度定規を用いて発泡スチロール球を所定の半径を持つ球面でカットし、それらを木工用ボンドでつなぎ合わせていきます。

カットする所定の半径を求めるにはその結合している原子同士の原子間距離になるように重ね合わせた二つの円に対してごちゃごちゃと余弦定理で計算すると出ます。

始めは計算は気にせず作り方を見て作ってみましょう。


分子模型作りのツール(仮説社の通販で買えます。)
カッター(左)・孔定規(下)・角度定規(右)



作り方はこれらの素晴らしいHPを参考にしてみて下さい。

小樽分子模型の会

Scillaの分子模型ページ

私も特に高校生のときこれらのサイトには非常にお世話になりました。

初心者でもとてもわかりやすく説明されている分子模型作りのサイトです。


ちなみにどんな分子模型でも、その他原子を色分けする必要のあるときでも、大抵塗り分けられる原子の色は決まっています。

世界でも大抵同じような暗黙の共通認識として考えられていて、このサイトでもそのように色分けしています。


たとえば

原子補足
水素パソコンで表示する場合は見やすくするため水色の場合も
炭素パソコンの画面のバックが黒の場合黄緑や水色の場合も
酸素 
窒素 
塩素時折肌色等違う色のことも
リンピンク茶色のことも
硫黄黄色 
ヨウ素 


等です。

筆者の作った発泡スチロール分子模型を少し紹介しましょう。


炭化水素たち
左から順にCH4、C3H6、C2H2、C6H6



環境問題で取り上げられる窒素酸化物
右上のN2Oは"笑気"と呼ばれる麻酔性ガス。



食べ物の中の分子たち
左はビタミンC、右は酢酸、上は脂肪酸



水の結晶 = 氷 の構造
傑作(作るの大変)!水素結合による六角形構造。


等等

ちなみに定規で測ると「1 cm = 1Å」なので簡単に原子同士の距離が測れます。



― 分子構造模型セットを用いた分子模型 ―


原子に見立てた小さな球と、それら同士をつなぐ棒がセットになっている分子模型セットが書店などで売られています。



これは発泡スチロールとは違って何度でも組んだりばらしたりできて、いわば空間的なブロックパズルです。

球棒モデルといわれる分子模型の一種で、空間充填モデルの込み合ってわかりにくいという欠点を補っています。

原子団の回転が説明しやすかったり、製品として精密に設計された専用の結合棒でより厳密な原子間距離がわかったりします。

何度も組めてかつ精密なため大学や研究機関でもかなりよく用いられます。


例えばこんな分子模型を組んでみました。


ベンゼン分子の構造
真っ平らな平面分子で、C-C結合は"1.5重結合"



シクロヘキサン分子(いす型)の構造
ベンゼンとは打って変わってギザギザな分子。



シクロヘキサン分子(方舟型)の構造
シクロヘキサンにはいす型(安定)、方舟型(不安定)がある。



解熱鎮痛物質アセトアミノフェンの構造
右下の専用縮尺定規で原子間距離が測れます。




― パソコンを用いた3D分子模型 ―


最近は家庭用のパソコンもかなり高性能になり、3Dの描写も可能になりました。

パソコンに専用ソフトをインストールして分子を表示させます。


WinMOPACでエタノール分子の構造を"計算"


有料のものも無料のものもありますが、たとえばJmolというソフトが有名です。


○ Jmol

Jmolはオープンソースでダウンロードが無料なソフトで、サイトからダウンロードできます。

世界的に用いられていて研究者も使っています。

作られた分子のデータを"データバンク"といわれるサイトからダウンロードして表示させます。

しかしこれらはほぼ全て英語で、また専門的でわかりにくいという致命的な欠点があります。

角川書店のブルーバックス文庫で『パソコンで見る動く分子事典』という本が本屋さんで売っています。

これに分子データと日本語化されたJmolが入っていて、インストールや表示手順が書かれているのでお勧めです。

私も最初はそれを買ってJmolを知りました。

エタンのような単純な分子から、下に示すような複雑な分子までたくさん入っています。

例えばこんな風に分子を表示してくれます。


狂牛病原因蛋白質分子プリオン(球棒モデル)
BSEの原因物質。蛋白質は非常に大分子量である。



プリオン(空間充填モデル)
球棒モデルや空間充填モデル等自由に選べる。



プリオン(蛋白質モデル)
蛋白質用の表示にすると構造が見やすくなる。



αへリックス構造
蛋白質のαへリックスの構造。プリオンの構造と比べてみよう。


表示専門のソフトなのでかなりハイクオリティです。

普通のソフトでは表示されない二重結合やベンゼンの"1.5重結合"もちゃんと表示されます。


○ ChemSketch

これは厳密には化学レポート作成用のソフトなのですが、分子を組んだり近似計算を行ったりできる点で
かなり高性能な、世界的に研究者や学生などに用いられているソフトです。

自分で簡単に分子が組めて、3Dモードで3D描画ができます。

欠点は、簡略的な計算をしているため誤差があることや、
自分で計算するためやはりミスをしている場合があることです。

これもオープンソースでサイトからダウンロードできます。

しかし英語で、また専門的で操作が難しいため、これもソフト付きの説明本を買うのが一番いいと思います。

Jmolと同じように角川書店のブルーバックス文庫で『ChemSketchで書く簡単化学レポート』という本が
本屋さんで売っています。

例えばこんな分子を表示させてみました。


グルコース(ワイヤーモデル)
線モデルは構造式に近いが見にくいという欠点が。



グルコース(太線モデル)
"構造式に色がついた"という感じのモデル



グルコース(球棒モデル)
原子は球、結合は棒で表されている。



グルコース(空間充填モデル)
分子の占める体積のわかるモデル。



○ WinMOPAC

これは個人的にかなり重宝しているソフトです。

これも世界的に有名な専門的なソフトです。

これは分子軌道計算をするソフトで、計算したい分子を組むと
あるべき原子配列・結合角に計算して補正してくれます。

角度など、かなり細かい計算結果を出してくれて、計算結果を3Dで表示させることができます。

分子軌道計算によって計算するので精度は高いのですが、私たち素人がやると
設定ミスがあったり、どうしようもないですが誤差等が出てしまいます。

が、うまくできればかなり素晴らしい3D分子が描画できます。

しかしこれも英語で、難しいところがあるので、やはりソフト付の本を買うのがいいでしょう。

同じくブルーバックスの『実践 量子化学入門』という本が良いでしょう。


このサイトで使っている分子の画像もかなりこれで私が計算した結果を示しています。

また分子軌道計算をすると、なんと生成熱や電子の軌道の形やエネルギーまで
具体的な数値を計算できるという優れもの。

細かい機能についてはまた別のページで説明することにしましょう。

例えばこんな分子を計算してみました。


p-ヒドロキシアゾベンゼン
平面の分子。覆っている網は分子軌道



エタノールのメチル基回転障壁の計算
山の頂上が回転障壁のエネルギーに相当する。



三酸化炭素 CO3
実はCO2以上が存在する!



三酸化炭素 CO3 part2
CO3には複数の構造がある。角度は重要。


等等、分子の形がわかればたくさんの事がわかるので、ぜひどれかで作ってみてください。



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