一般向け/高校生向け楽しい化け学
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分子のステレオグラムを作ってみました!
ステレオグラムとは、二枚の少しずれた物体の絵が並べられた画像である。
これを「立体視」すると、3Dに見えるのだ!
立体視とは、例えば指を立てて目の前に持って行くと周りの景色が二重になるように、目の焦点をワザとずらしてステレオグラムを見て左右の絵を重ねるとなんと立体が浮かびあがるというものです。
やり方など詳しくは「立体視」「平行法」「交差法」等の単語でネットで検索してみてください。
さて、グルコースのステレオグラムを作ってみました。
<クリックで拡大>
焦点をずらして左右のグルコースを重ねると真ん中に立体のグルコースが現れると思います。
うまく浮かび上がったでしょうか?
筆者は少し画面から離れて見ると綺麗に見えます。
ピタッと合わせて、慣れるとリラックスしていても3D像は保たれると思います。
そうなると普通にそこに立体があるように、ある点(例えば上部のヒドロキシ基、とか)を注視して焦点を合わせ、しっかり見ることができるようになると思います。
あんまり長く見ていると気持ち悪くなってくるので、適当に休憩を入れましょう。
うまく浮かび上がったなら、画像の「下部」にある炭素鎖が「手前」に見え、そこについているヒドロキシ基はさらに手前に飛び出て見えると思います。
また、「上部」のメチロール基-CH2OHは「奥」になるように見えると思います。
例えばエーテル結合をしている酸素から環にそって数えて±2番目の炭素に付いている水素原子は環に対して垂直方向に立っています。
これら水素のように(飽和の)六員環に対して垂直に立っている位置を「エカトリアル」といいます。
他にも環の下側に垂直に出ている水素やヒドロキシ基の酸素もあります。探してみましょう。
一方で、エーテル結合の酸素の手前の隣の炭素に結合している水素のように、環に対して赤道方向(要するに横方向に)出ている水素やヒドロキシ基の酸素があります。
これらの位置は「アキシャル」と呼ばれています。
このように、ステレオグラムで立体視すると結構色々わかりそうですね。
しかしあまり流行っていない理由は、見るのに技能が必要で個人差もあるのが難点だからでしょうか。
また、先ほどのグルコースは「球棒モデル」と呼ばれる、原子(球)が結合(棒)で繋がれた形の模型画像でしたが、いわゆる「空間充填モデル」のステレオグラムも作ってみました。
<クリックで拡大>
同様にすれば確かに立体視できますが、このモデルの特性上画像にモノがパンパンなのであまり面白く見えませんね。
スカスカで奥行きが伝わる球棒モデルの方がステレオグラムには適していそうです。
面白いですねぇ。
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今日、昨日の来サイト状況のログを見ていると、yahoo知恵袋からこのサイトに来た記録がありました。
※ サイト管理者は、そのサイトのアクセス状況などをツールを使って分析したりできます。
例えばどの時間帯に人が多く来ているか。
どこから来ているか。(検索・リンク・お気に入り・・・)
検索ワード・フレーズはどんなだったか。
等など。
「yahoo知恵袋」や「教えてgoo」等の質問サイトの、質問への回答で当サイトがリンクされていることは何回かありましたが、今回は「リンスインシャンプー」についての質問解答でした。
これ→ 『入浴中洗髪する時間違えてリンスを頭につけてしまいました。(普段リンスは使いま...』
ここで当サイトが紹介されているのですが、
ここ、超わかりやすいサイトを紹介します。
http://chemieaula.web.fc2.com/item/rinse_in_shampoo.html
って書かれている・・・
いや~超わかりやすいと言われるとうれしいですねぇ。
このリンク先は 『リンスインシャンプーの化学』 のページですが、内容的には界面活性剤で高校化学でも重要なのでできるだけ基本からわかりやすく書いたつもりでした。
このサイト全般的に、できるだけ図・表・色を使ってわかりやすくしようと思っています。
これからも頑張ります!!
最近ちょっと更新が滞っていました。
いや~色々ありました。
実験データを詰め込んだ命のUSBメモリをなくしたり・・・
レポートの提出期限を一週間勘違いして、気づいた日に「え!明日!!?」
・・・
とりあえず今は落ち着いています、はい。
さて、昨日面白い話を大学の講義で聞きました。
化学の雑学としてなかなか面白いと思うので、ちょっと紹介してみます。
題1;
「硬式テニスボールはなぜ缶に入れて売っているのか?」
硬式テニスボール(プレッシャーボール)は缶に入れて売っている。
テニスをやっている人なら知っている。(と思う。)
袋に入れていてはいけない。
何故だろうか?
結論を言うと、
缶の中は2気圧に加圧してあって、ボール(空気圧:1.8気圧)から空気が抜けてしぼまないようにしているから。
であるという。
通常の状態、すなわち1気圧でテニスボールを置いておくと、ボール内部の圧力の方が高いためボール内の空気は自然と漏れ出てしぼんでしまう。
すると弾性が変わってうまくプレーできなくなる。
プロ試合ではプレー中に何度かボールを変えるというほど、小さな変化もプレーに影響するらしい。
ゆえに保存しておくときは加圧状態で密閉しておくということらしい。
これでも「へぇー」という感じだがまだ続きがある。
題2;
「硬式テニスボールには空気穴がない!?」
プロ用の硬式テニスボールにはヘソ(空気穴)がない。
もしあったらそこから中の空気が漏れやすいので、上に書いたように厳密に硬さを決めているのにプレーしたらすぐしぼんでしまってダメになってしまうのであろう。
では派生してこんな問が生まれてくる;
「どうやって製造時テニスボールに空気を入れているのか?」
実は、化学反応を利用してボール内部で気体を発生させています。
まず半分の球を用意します。
ここへ亜硝酸ナトリウムNaNO2と塩化アンモニウムNH4Clを入れ、球を閉じます。
するとイオンの交換が起こり、鍵となる亜硝酸アンモニウムNH4NO2が生成します。
NaNO2 + NH4Cl → NH4NO2 + NaCl
ここで生じたNH4NO2は分解すると窒素を生じます。
NH4NO2 → N2 + 2H2O
この窒素でボールを内部から膨らませるのです。
テニスボール製造での、ボール内部での気体発生反応
こういう仕掛けで、外から空気を入れずにボールを膨らませることができるのです。
ちなみに硬式テニスボールを振ると音が鳴る(らしい)ですが、それはこれによって生じた水やら食塩が入っているからだとかなんとか。
また、食塩が副生しているはずなので、内部を舐めるとしょっぱいはずです。
実際筆者の大学の先生がテニスボールを割って中を舐めてみると本当にしょっぱかったという。
(この先生本当に尊敬します 笑)
ちなみに最初から亜硝酸アンモニウムを入れれば良いんじゃないかと思いますが、亜硝酸アンモニウムは爆発性があり取り扱いが難しいためこのように間接的に発生させているらしいです。
◎ 参考
- 筆者の大学の先生のとてもとても有難いお話
- 『Sticking ボールパック 商品の説明』コナリス エンタープライズ
前回も前々回もヒドロキシ安息香酸(すなわちサリチル酸とその異性体)を例にした隣接基効果を説明しましたが、今回もそれを引っ張ってみます。
サリチル酸の第二段階目の酸解離定数を他の二つの異性体と比べると、面白いことに気付きました。
サリチル酸は第一段階目はm-、p-の異性体に比べて酸性度(すなわち解離度)が数十倍大きい。
それに対し、第二段階目の解離度は他の二つに比べて1万分の1程しかありません。
何故でしょうか。
今日はその理由ついて筆者の考えを述べてみます。
主題;
o-ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)はm-及びp-ヒドロキシ安息香酸と比べ、第一段階目の酸解離定数は数十倍ほど大きいが、第二段階目の酸解離定数は1万分の1ほどしかない。
○ 第一段階の解離度について
前回/前々回記事でも書きましたが、サリチル酸はm-及びp-ヒドロキシ安息香酸よりも酸性度が高くなります。
なぜなら、m-及びp-ヒドロキシ安息香酸は分子内水素結合ができませんが、サリチル酸はカルボキシル基が電離して生じた陰イオン(共役塩基)が分子内水素結合により安定化するからです。
(詳しくは前々回記事『隣接基効果~ヒドロキシ安息香酸の融点・酸性度』を参照)
サリチル酸の第一段階目の電離平衡
サリチル酸の共役塩基の分子内水素結合
具体的に書くと
pKa1(第一段階目のpKa)は、
・ サリチル酸 : pKa1 = 2.78
・ m-ヒドロキシ安息香酸 : pKa1 = 4.07 (⇒サリチル酸の方が19倍強い)
・ p-ヒドロキシ安息香酸 : pKa1 = 4.47 (⇒サリチル酸の方が48倍強い)
・ (参考:一般的なカルボン酸)酢酸 : pKa = 4.76 (⇒サリチル酸の方が95倍強い)
です。
※ 「pKa = -log10Ka」です。
pKaの値が小さいほど酸性が強い。pKaの値が1違うと酸性度は10倍違う。
「pKa」の「p」は「pH = -log10[H+]」と同じ意味の「p」。
サリチル酸は隣接基効果(分子内水素結合)によりm-及びp-ヒドロキシ安息香酸より100倍以上強い酸になるということになります。
○ 第二段階の解離度について
3つのヒドロキシ安息香酸はカルボキシル基だけではなくフェノール性OHでも電離ができる。
カルボキシル基の方が酸性度が大きいのでまずこちらから電離するが、その次にフェノール性OHが電離する。
サリチル酸の二段階の電離平衡
このときの解離度(フェノール性OHが電離する場合のpKa)を比べてみましょう。
pKa2(第二段階目のpKa)は、
・ サリチル酸 : pKa2 = 13.44
・ m-ヒドロキシ安息香酸 : pKa2 = 9.79 (⇒サリチル酸より4500倍強い)
・ p-ヒドロキシ安息香酸 : pKa2 = 9.09 (⇒サリチル酸より22000倍強い)
・ (参考:一般的なフェノール)フェノール : pKa = 9.95 (⇒サリチル酸より3000倍強い)
です。
m-とp-ヒドロキシ安息香酸は普通のフェノールとほぼ同じですが、第一段階目の解離度とは真逆で、サリチル酸の第二段階目の解離度は異常に小さな値となっています。
すなわち、サリチル酸はフェノール性OHの酸性度がとても低くなっているということです。
それもo-やp-の数千~数万分の1。
不思議です。
なぜでしょうか?
考えてみましょう。
筆者は次のように考えます。
サリチル酸の第一段階目の共役塩基は分子内水素結合で安定化しています。
一方、さらに電離したサリチル酸の第二段階目の共役塩基は、分子内水素のプラスとマイナスの引き合いで安定化しているせっかくの状態を壊している上、すぐ隣同士(-COO-と-O-)が負電荷を持っていて静電反発で不安定になってしまいます。
サリチル酸の一段階解離した共役塩基と二段階解離した共役塩基
すなわち「サリチル酸-イオン」は安定なのに「サリチル酸2-イオン」はやたらと不安定なので、「サリチル酸-イオン」は「サリチル酸2-イオン」になりたくないわけです。
だから第二段階目の電離は抑制され、普通のフェノールよりもフェノール性OHの電離度は低くなります。
これもある種の隣接基効果と言えるでしょう。
一方、m-及びp-ヒドロキシ安息香酸はカルボキシル基とヒドロキシル基が遠く離れているため、静電反発は小さいため普通のフェノールと同じくらいの電離度になるのでしょう。
m-及びp-ヒドロキシ安息香酸の二段階電離した共役塩基
以上のように考えてみました。
ちなみに、第二段階目の酸性度はm-とp-ヒドロキシ安息香酸がボロ勝ちしたわけですが、この電離はどっちにしろ微々たるものなので第一段階目が「ヒドロキシ安息香酸の酸性度」を主に決定するため結局全体でみた酸性度はサリチル酸がボロ勝ちします。
◎ 参考
前回記事で、サリチル酸の異性体についてヒドロキシ基の位置で融点や酸性度が変わることを書きました。
『隣接基効果~ヒドロキシ安息香酸の融点・酸性度』
この隣接基効果で酸性度が変化することを応用すれば、副作用のあるサリチル酸をアセチル化することでアセチルサリチル酸(→『今日の分子No.57 :アセチルサリチル酸』)とすると、副作用を低減することができると言うことがわかります。
今回はそれについて書きましょう。
サリチル酸C6H4(OH)(COOH)は古くは鎮痛剤として用いられました。
サリチル酸
しかし粘膜刺激性があって、飲むと喉や胃を痛めるという副作用がありました。
頭は痛くなくなるがお腹は痛くなるという、なんとも微妙な薬だったのです。
これはサリチル酸がカルボン酸としては比較的強い酸だからです。
サリチル酸の電離平衡
サリチル酸はpKa=2.78(第一段階)。
典型的なカルボン酸である酢酸はpKa=4.76。
すなわちサリチル酸の方が約100倍強い酸です。
※ 「pKa = -log10Ka」です。pKaの値が小さいほど酸性が強い。
「pKa」の「p」は「pH = -log10[H+]」と同じ意味の「p」。
お酢は酸なのでそのまま飲むと喉が痛いですが、サリチル酸は酢酸よりもさらに強い酸なのです。
なぜサリチル酸が強い酸なのかと言うと、と言うと、前回の記事『隣接基効果~ヒドロキシ安息香酸の融点・酸性度』でも書きましたが、電離して生じた陰イオン(共役塩基)が分子内水素結合をするので安定だからです。
サリチル酸の共役塩基の分子内水素結合
では逆に考えると、この分子内水素結合をなくしてしまえば酸性度を下げられるのではないか?
という発想が出てきます。
水素結合をなくすには、要するにサリチル酸のフェノール性-OHのHをなくしてやれば良い。
ここでアセチルサリチル酸(商標:アスピリン)の構造を見てみよう。
アセチルサリチル酸の構造
フェノール性-OHのHがアセチル基-COCH3になってなくなっている!
したがってアセチルサリチル酸の共役塩基は分子内水素結合による安定化を受けない。
アセチルサリチル酸の共役塩基―分子内水素結合なし―
したがって酸性度はサリチル酸より低くなると予想される。
実際、アセチルサリチル酸の酸性度はpKa=3.49。
すなわちサリチル酸をアセチル化することにより酸性度は1/5に抑えられるのである。
だからアセチルサリチル酸はサリチル酸より胃に優しい。
アスピリンは1899年にドイツのバイエル社が発売し、20世紀初頭に爆発的に売れ、今なお使い続けられる大ヒット・ロングセラーの解熱鎮痛剤なのである。
このように構造化学、「隣接基効果」を理解することは化学的にとても重要なことです。
身の回りにも色々応用されています。
ちなみにアセチル化してしまって構造が変わると薬効が変わってしまわないか?という疑問が出てくるが、アセチルサリチル酸は小腸で吸収され血中に入ると分解されてサリチル酸に戻るらしい。
アセチル基が加水分解されやすいこともアスピリンがアスピリン足る理由になっているようですね。
さらにちなみに、アセチルサリチル酸にしてもまだ少し酸性度が高いので、実際にはアルミニウムやマグネシウム系のアルカリを入れて中和しているみたいです。
◎ 参考
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