一般向け/高校生向け楽しい化け学
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最近身の回りでガソリンの話題が多いので、ここでちょっと紹介してみます。
「オクタン価」とか「ハイオク」等という、どうにもアルカンに関係ありそうな単語がガソリンスタンドに書かれています。
一体何のことでしょうか。
(比較的)安い「レギュラー」と高い「ハイオク」のガソリンの違いは?
そして「オクタン価」の「オクタン」はいわゆる”オクタン”(CH3(CH2)6CH3)ではないのだ!!
今日の分子 No.56 イソオクタン (CH3)3CCH2CH(CH3)2
Jmolで描画
IUPAC正式名称:2,2,4-トリメチルペンタン。
分子式がC8H18の枝分かれアルカンであり、直鎖のオクタン(CH3(CH2)6CH3)の構造異性体。
常温で常温では無色透明の液体。
ガソリンの成分である。
ガソリンは炭素数5~10くらいの炭化水素の混合物で、原油を「化学変換」して得られる。
ガソリンの詳しい組成は
『ガソリンの成分の詳細分析』, シグマアルドリッチ社, 2011/06/11引用
を参照。
さて、ガソリンの一成分のイソオクタンは「オクタン価」を決める指標となっています。
オクタン価とはガソリンのアンチノック性を表す指標です。
まず「アンチノック性」とは;
車のエンジンでは、気化したガソリンと空気をシリンダー内に吸い込み、圧縮しプラグで点火して、この爆発により運動エネルギーを生み出している。
一方、点火プラグで点火する前に自然着火してしまうと、エンジンから「コンッ!」とか「カラカラ」という異常な音が出る。
これをノッキングという。
ノッキングが起こると燃費が悪くなり、場合によってはエンジンの故障などにつながる。
なので、アンチノック性(ノッキングしにくい性質=自然着火しにくい性質)の高いガソリンが求められる。
一般に炭素数が等しい場合は、芳香族>枝分かれアルカン>ナフテン>アルケン>直鎖アルカン、の順にアンチノック性が高い。
イソオクタンは枝分かれアルカンで安定して燃える性質があり、ノッキングを起こしにくい。
なのでアンチノック性を示す指標として「オクタン価」を導入し、イソオクタンをオクタン価100と定義されている。
逆に、直鎖ヘプタンは非常にアンチノック性が低いため、直鎖ヘプタンはオクタン価0と定義されている。
イソオクタンと直鎖ヘプタンの混合率をオクタン価としてアンチノック性の指標にしている。
例えばイソオクタン:直鎖ヘプタン=70:30の混合油はオクタン価70と言える。
ガソリンに対して燃焼試験を行い、もしこの「イソオクタン:直鎖ヘプタン=70:30の混合油」と同じだけのアンチノック性が測定されれば、そのガソリンは「オクタン価70のガソリン」と言える。
市販のレギュラーガソリンはオクタン価89以上で、ハイオクガソリン(=高オクタン価ガソリン)は96以上である。
イソオクタン以上にアンチノック性が高い物質もある。
そのためそれらアンチノック性の高い物質をガソリンに混合し、オクタン価を高めることができる。
オクタン価100を超えることも可能。
昔はテトラエチル鉛(C2H5)4Pbという物質がオクタン価向上のため添加剤として入れられていたが、鉛による環境汚染の回避のため現在は使われていない。
(※ 飛行機用のガソリンには有機鉛系化合物が未だ使われている。)
最近はエチルターシャリーブチルエーテルC2H5OC(CH3)3が使われている。
ちなみに、普通のレギュラーガソリン用エンジンの車にハイオクを入れてもほとんど意味がないらしい。
逆に、ハイオク車にレギュラーガソリンを入れるとノッキングで壊れるという。
難儀である。
以上、イソオクタンが「ハイオク」とか「オクタン価」とかの正体でした。
筆者は「オクタン価じゃなくてイソオクタン価の方が正確だ!むしろ直鎖のオクタンは非常にオクタン価が低い!」と思うので、どなたかガソリン会社に勤めたらぜひ名称変更してください(笑)
◎ 参考
- 『新しい工業化学―環境との調和をめざして』足立 吟也 (編集), 馬場 章夫 (編集), 岩倉 千秋 (編集), 化学同人 (2004/01)
- 大学の先生の有難いお話
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