一般向け/高校生向け楽しい化け学
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最近反応機構の記事が人気みたいなので、今回はみんな大好きベンゼンの反応を解説します。
高校化学には化学反応がどう起こっているのか途中過程が出てこない。⇒ 「化学は暗記物」 という構図ができているように思えます。
化学は暗記ではなく考える学問、結果を覚えるだけではなくて、その途中経過も大切!
(もちろん、結果を覚えることも大切なのですが。)
私は化学反応がどのようにして起こっているのかを表す「反応機構」というものをぜひ知って頂きたい。
ということで、お勉強的ですが反応機構に関する記事も書いていこうと思います。
塩化鉄(Ⅲ)FeCl3存在下、ベンゼンC6H6に塩素Cl2を反応させると置換反応が起こり、クロロベンゼンC6H5Clが生じる。
さて、この反応はどのようにして起こるのか。
素反応に分けて見ていきましょう。
そして3つのポイント;
A. 触媒FeCl3の役割は?
B. どのように起こる?
C. 反応のドライビングフォースは?
を明らかにしていきましょう。
※ 反応式中の「巻き矢印」は電子対の動きを示しています。
「こっちから→こっちへ」電子が動くことを表しています。
ベンゼンのクロロ置換反応機構
1. Cl2の活性化
Cl2が塩化鉄(III)の鉄イオンに配位する。
するとCl2の「Cl」が「Cl+」の状態になる。
極端に書くと式の右に示したような構造で、一番左のClが「Cl+」の状態になっている。
2. 求電子付加
活性化されてプラス的なClと、マイナス的なベンゼン環が引き合う。
するとベンゼンの1つの二重結合が解かれてCl+が付加した形になる。
(ベンゼン環は壊れてしまう。)
◎ プラス的なClがベンゼン環の「電子」を「求」めて「付加」するので求電子付加と言う。
3. H+の脱離:ベンゼン環の再生
Clと同じ炭素にくっついているHがH+として抜けると、安定なベンゼン環が再生するとともに電気的に中性になることができる。
すると「Cl付加→H脱離」で全体としてはベンゼンのHがClに置換したことになる。
4. FeCl3の再生
生じたベンゼン環再生のために脱離したH+と、Clを活性化させた時に生じた錯イオン[FeCl4]-からHClとFeCl3が生成。
⇒ FeCl3は反応前後で正味変化しないので、触媒である。
※ 今回はわかりやすくするため反応3と4を別々に書いたが、FeCl4-が塩基として働いてH+を抜きに行くので、普通反応3と4は1段階で書かれる。
以上をまとめるとよく知った反応式
になる。
このように「求電子付加→脱離」して正味置換が起こる反応を求電子置換反応といいます。
特に芳香族化合物の反応なので、芳香族求電子置換反応と呼ばれます。
混酸を用いたニトロ化、塩化アルミニウム触媒でのアルキル化・アルカノイル化等も芳香族求電子置換反応の一種です。
それぞれ活性種はNO2+、R+、RCO+で、同じように「求電子付加→H+脱離」の反応機構で進みます。
では冒頭のポイントの答えをまとめると;
A. 触媒FeCl3の役割は?
⇒ 反応活性種Cl+を作る。
B. どのように起こる?
⇒ 「求電子付加→H+脱離」で正味置換反応が起こる。
C. 反応のドライビングフォースは?
⇒ プラス的なCl+とマイナス的なベンゼン環との引き合い、安定なベンゼン環の再生。
です。
反応機構の記事のたびに書いている「自然の摂理;プラスとマイナスが引き合う」がちゃんと成り立っていますね。
以上、高校化学では明かされず終いの反応機構と触媒の役割の一例でした。
参考
- 『ボルハルト・ショアー現代有機化学〈下〉』, K.Peter C. Vollhardt, Neil E. Schore著, 野依良治監訳, 化学同人; 第4版 (2004/06)
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