一般向け/高校生向け楽しい化け学
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くぅ~疲れましたw これにて(学会が)完結です!
一山超えたときはやっぱりコレ、EtOH!!
一山越える前にストレス溜まってるときもコレ、EtOH!
そんでもって、特に何もない平和な時もやっぱりコレ、EtOH!!
さて、今回は筆者が最近お世話になりっぱなしのこの分子を紹介します。
※ 未成年者の飲酒は法律で固く禁じられています!
この記事の後半を読むとエタノールの恐ろしさがよくわかるでしょう。
今日の分子 No.81 : エタノール CH3CH2OH
Jmolで描画
IUPAC名:エタノール。
慣用名:エチルアルコール。
一級アルキル基に1つヒドロキシ基が結合した一価の一級アルコール。
揮発性が高く、いわゆるアルコール臭のする無色透明液体。
ヒドロキシ基が水素結合を作ることができるため、水とは自由に混和する。
引火性の液体で、第4類危険物(引火性液体)、危険等級IIに指定されている。
また言わずもがな、お酒の成分。
消毒液としても用いられる。
エチル基CH3CH2-はよく「Et-」と略される。
よってエタノールCH3CH2OHはよくEtOHと表される。
筆者のような化学好きな人がよくTwitterやFacebook等で「EtOH」と言っているのはエタノールのことです。
また、上図のようにエタノール分子は犬のような愛嬌のある構造をしているため、分子模型も人気です。
実験室でもよく用いられるエタノール。
しかしメタノールCH3OHに比較してその値段は高い。
例えば和光純薬では、メタノールは500 mLで850円で売られているのに対し、エタノールは2100円で売られている。
これは、試薬であろうとエタノールは酒税がかかるからである。
一方、エタノールにわざとメタノールやイソプロパノール(CH3)2CHOHを加えて「変性アルコール」とし、酒税を回避している場合もある。
また、エタノールの水溶液は「共沸」という現象を生じる。
共沸とは、混合液の蒸留の際にある濃度で複数の成分が同時に、同一組成で蒸発する現象である。
例えばエタノール水溶液の蒸留では、エタノール濃度が96%のとき共沸混合液となり、それ以上どんなに蒸留しようと混ざった4%の水を除くことができない。
だから世界最高のアルコール度数で知られるお酒のスピリタスは96度なのです。
合成
エタノールは伝統的に、酵母菌によるアルコール発酵でグルコースC6H12O6から合成される。
石油化学工業的には、従来用いられてきた(A)硫酸法と、最近主流となった(B)気相法で合成される。
(A) 硫酸法
エチレンに硫酸を付加し、次いで加水分解することでエタノールを得る方法。
(B) 気相法
硫酸法は硫酸を用いるため装置の腐食などの問題がある。
そこで現在、固体リン酸触媒を用いたクリーンな気相合成法が主流となっている。
反応
エタノールは多種多様な化学合成に利用される。
代表的な反応例を以下にいくつか示します。
(i) エステル化
エタノールを濃硫酸触媒でカルボン酸と脱水縮合すると、エチルエステルが生じる。
例えば酪酸CH3CH2CH2COOHとエタノールのエステルである酪酸エチルCH3CH2CH2COOCH2CH3はパイナップルの香り成分であり、フレーバーとして用いられる。
⇒ エステル化について詳しくは『Fischerのエステル合成法 』参照。
(ii) ジエチルエーテルの合成
エタノールを濃硫酸触媒で150℃以下で加熱すると、2分子の脱水縮合によりジエチルエーテルCH3CH2OCH2CH3が生じる。
(ii) エチレンの合成
エタノールを濃硫酸触媒で170℃で加熱すると、脱水反応が起きエチレンCH2=CH2が生じる。
(iii) 脱プロトン化
エタノールに強塩基を作用させると水素イオンH+の引き抜きが起こり、エトキシドCH3CH2O-が生じる。
水素化ナトリウムNaHを用いるとナトリウムエトキシドCH3CH2ONaと水素H2が生じる。
(iv) 酸化
第一級アルコールであるエタノールは酸化剤によって二段階酸化され、アセトアルデヒドCH3CHOを経て酢酸CH3COOHになる。
アセトアルデヒドは還元性が高いため、汎用酸化剤である重クロム酸カリウムK2Cr2O7や過マンガン酸カリウムKMnO4を用いると一段階目で止めることは難しい。
一方、穏やかな酸化剤であるクロロクロム酸ピリジニウム(通称:PCC)(C5H5NH)+ClCrO3-を用いると第一級アルコールを一段階だけ酸化してアルデヒドを得ることができる。
なお、実は全く水がない状態ではアルデヒドは酸化剤に対して安定である。
お酒の化学 ~ 「酔っぱらう」と「二日酔い」
さて、エタノールと言えばやはりお酒に含まれていることが最大の特徴でしょう。
お酒、すなわちエタノールを飲むと酔っぱらう。
生理学的に言うと、全身麻酔のようにはたらき大脳皮質の一部を抑制制御から解放する、心機能の抑制剤です。
要するに、神経細胞を正常に働かなくしてしまうわけです。
さて、なぜエタノールは「酔っ払い」を引き起こすのでしょうか。
実はエタノールとたんぱく質が結合することがキーです。
神経細胞間で通信を行うシナプスという器官があります。
刺激は、「"上流"神経細胞 → シナプス → 後シナプスニューロン」という順で伝わります。
ここで、刺激が伝わってくるおおもとである"上流"神経細胞に注目します。
神経伝達物質の一種にγ-アミノ酸であるγ-アミノ酪酸(GABA)H2NCH2CH2CH2COOHという物質があります。
GABAが"上流"神経細胞の表面にあるたんぱく質と結合すると、たんぱく質の形が変化して塩化物イオンCl-が細胞内に流れ込むようになります。
すると神経細胞内外での電圧が小さくなり、細胞が興奮しなくなります。
これが抑制性の神経伝達物質であるGABAの正しい働きです。
一方、エタノールが存在すると問題が生じます。
エタノールも"上流"神経細胞の表面にあるたんぱく質と結合することができますが、エタノールと結合したそのたんぱく質は形が変化して、元のたんぱく質よりもGABAと結合しやすくなります。
すると必要以上にGABAが結合し、必要以上に神経細胞の興奮が抑制されます。
すなわち、以後の神経細胞へと刺激が伝わらなくなり、麻酔状態となってしまうというわけです。
また、お酒を飲んだ次の日に頭が痛くなる「二日酔い」が起こることがあります。
これはエタノールがアルコールデヒドロゲナーゼという酵素によって酸化されて生じるアセトアルデヒドが原因です。
アセトアルデヒドは体内でさらに酸化されて酢酸となり、代謝されていきます。上式(iv)。
参考
- 『新しい工業化学―環境との調和をめざして』足立 吟也 (編集), 馬場 章夫 (編集), 岩倉 千秋 (編集), 化学同人 (2004/01)
- 『アトキンス 分子と人間』P.W. ATKINS (著), 千原 秀昭 (翻訳), 稲葉 章 (翻訳), 東京化学同人 (1990/04)
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