一般向け/高校生向け楽しい化け学
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
普段何気なく使っているセッケンや洗剤、シャンプーやリンス。
これらはなぜ汚れを落とせるのでしょうか。
まず基本的なセッケンの原理を考えてみましょう。
次にそれを応用したリンスへ。
そしてリンスインシャンプーは高度な技術を応用した化学力の結晶なのであった!
○ セッケンの原理
セッケンは高級脂肪酸の塩です。
具体的にはステアリン酸ナトリウムやラウリン酸ナトリウム等があります。
これらは長いアルキル基と電離したカルボキシル基(-COO-)を持っています。
アルキル基は親油性(疎水性)で油に溶ける性質があり、一方電離したカルボキシル基は親水性で水に溶ける性質があります。
するとセッケン分子は水中で油汚れを下の図のように取り込み、水中に取り去ります。
セッケンの原理
そしてこの水を洗い流すことによって油汚れは綺麗に流し落とせるわけです。
またこの図のように界面活性剤分子が球のように集まっている状態のものをミセルといいます。
洗剤やシャンプーも基本的にはこの原理で汚れを落としています。
ただ、弱酸の塩のセッケンはアルカリ性なので、これで頭を洗うとバサバサになってしまいます。
なのでシャンプーはカルボキシル基ではなく硫酸モノエステルの塩(-OSO3-)やスルホン酸塩(-SO3-)にすることによってナトリウム塩を中性にしています。
○ リンスの原理
シャンプーの原理がわかったところで、次にリンスの原理を考えてみましょう。
実はリンスもとても似ている原理です。
"逆性セッケン"と言われる界面活性剤で、テトラアルキルアンモニウムイオンR1R4N+が入っています。
アンモニウムイオンの形になっているので、Nは+に帯電しています。
よって、模式的に書くと下の図のようになります。
逆性セッケンの構造
+の部分は親水性で、長いアルキル基は親油性です。
すなわちセッケンとは+か-かだけが違うので、逆性セッケンと呼ばれています。
しかし、構造はシャンプーと似ていますが、まったく違う働きをしてくれます。
髪の毛を構成するたんぱく質はマイナスに帯電しています。
マイナスに帯電している部分にプラスに帯電しているリンス分子がくると、静電的に引き合ってくっつきます。
そのとき下の図のようにプラスの部分が髪の毛にくっつき、疎水性の長いアルキル基を外向きにします。
リンス分子の髪の毛への吸着
するとこの立っている棒のようなアルキル基の分髪の毛同士に隙間ができるため、髪の毛のゴワゴワを消してくれます。
またマイナスな髪の毛をプラスで打ち消してくれるため、静電気のバチバチも消してくれます。
このようにして、また配合された他成分の効果も合わさり、髪の毛をさらさら・ふわふわ・しっとりな感じにしてくれるのです。
ちなみに今説明した「リンス」はより正しくいうと「ヘアコンディショナー」のことです。
日本では今も「リンス」とも言うのですが、リンスとは元々酢のような酸のことで、アルカリ性のセッケンで頭を洗った後中和するための溶液のことでした。
今使っているリンスは上のように逆性セッケンや他の成分の油分で保湿や柔軟効果があるもので、本来の「リンス」とは別物なのです。
○ リンスインシャンプーの化学
ではリンスインシャンプーはどうだろうか。
シャンプーとリンスを混ぜただけのものだろうか。
シャンプー分子はマイナスのイオンで、リンス分子はプラスのイオンである。
すなわち、混ぜたらお互いが引き合ってくっついてしまい、シャンプーとしての機能もリンスとしての機能も失ってしまう。
よって、上にあげたようなシャンプー分子とリンス分子は共存して効果を発揮することはできないのである。
しかしリンスインシャンプーは売っているわけで、ちゃんとシャンプーの洗浄力もリンスの柔軟力も発揮している。
ではリンスインシャンプーはどんな仕掛けなのだろうか。
実はリンスの分子を陽イオン高分子にしているのである。
ところどころに上のリンスのようなアンモニウムイオンなどのプラスの部分を持っている高分子で、そこにシャンプー分子が引っ付いている。
リンスの高分子とシャンプー分子
高分子は大きいので水に溶けるのが遅い。
一方シャンプー分子は小さいのですぐにリンス高分子から離れて水中へ散っていく。
はじめに水中へ出て行ったシャンプー分子が髪の毛の汚れをセッケンと同様に水中へさらっていく。
シャンプー分子の洗浄効果
次にリンス高分子が髪の毛へやってきて、普通のリンスと同様にマイナスに帯電している髪の毛と引っ付く。
また、このときにはもうシャンプー分子は洗い流され、いなくなっている。
リンスの高分子の定着
すると「シャンプー → リンス」の順で髪を洗ったことになる!
高分子を使うことによるこの時間差攻撃を考えた化学者は非常にすばらしい発想の持ち主だと思う。
このようにして、リンスインシャンプーは現代の化学力を応用した機能性分子によって力を発揮している。
ということで、横着してシャンプーとリンスを混ぜて一回で頭を洗っている人は、それは効果がないことがわかったでしょう。
これからは横着しないでちゃんとシャンプーしてからリンスするか、もしくはこのすばらしいリンスインシャンプーを使いましょう。
◎ 参考・出典
- 『パソコンで見る動く分子辞典』, 本間善夫, 川端潤著, 講談社(2007)
- 『有機機能材料』, 荒木孝二・明石満・高原淳・工藤一秋, 東京化学同人(2006/11)
PR
最新記事
(2018/09/23)
(2017/08/14)
(2017/03/07)
(2016/08/17)
(2016/05/05)
(2015/07/19)
(2015/04/11)
(2014/11/23)
(2014/08/03)
(2014/05/11)
カテゴリー
ブログ内検索