一般向け/高校生向け楽しい化け学
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先日大分県に旅行に行きました。
別府で地獄めぐりをば。
大分県の別府には温泉地帯があり、いくつかの温泉が赤色や青色に色づいていたり、間欠泉になっていたりするため「地獄地帯」と呼ばれています。
"地獄"は「血の池」「海」「山」「鬼山」「竜巻」「かまど」「坊主」「白池」の8つあります。
温泉は無機化合物の宝庫。
もちろん単なる観光だけではなく温泉化合物もチェックしてきました。
今回は彼らをいくつか紹介します。
【血の池地獄】
真っ赤な血の池地獄
2012/3/23筆者撮影
8つある"地獄"のうち最もポピュラーであろう血の池地獄。
まさに地獄、真っ赤です。
これは酸化鉄の色であるらしい。
酸化鉄には酸化鉄(II)FeO、酸化鉄(III)Fe2O3;赤鉄鉱、四酸化三鉄Fe3O4;磁鉄鉱等がある。
血の池地獄は赤色なので鉄(III)イオンFe3+系であろう。
が組成式は「Fe2O3」ではなく、水中にあるため実際は酸化水酸化鉄(III)FeO(OH)系の化合物だと思います。
高校でも習う水酸化鉄(III)Fe(OH)3が脱水縮合したコロイド;Fe2O3・nH2Oのような形で水中に分散しているのかもしれませんね。
【海地獄】
真っ青な海地獄
2012/3/23筆者撮影
鮮やかな青色の温泉。
この青色は硫酸鉄が原因であるらしい。
硫酸鉄には、硫酸鉄(II)FeSO4と硫酸鉄(III)Fe2(SO4)3がありますが、青色なのでFeSO4系でしょう。
(Fe2(SO4)3は白~赤紫系の色です。)
【かまど地獄(3丁目)】
真っ青なかまど地獄の3丁目
2012/3/23筆者撮影
こちらも鮮やかな青色の温泉。
が、海地獄とは全く原理が違います。
かまど地獄のこの青色の原因物質は、ほぼ純粋な二酸化ケイ素(シリカ)SiO2。
しかし本来二酸化ケイ素は透明か白色の物質です。
実はかまど地獄の湯中には二酸化ケイ素の微粒子が漂っているのですが、この微粒子は数十nm~数百nmの大きさです。
高校物理Iで習いますが、この大きさの粒子は光の散乱を起こしちょうど青色の光を強めて反射します。
(◎ 短波長の青色光の方が長波長の赤色光より散乱を受けやすい。)
このように物理的な物質の構造による光の反射で湯が青く見えます。
一方、海地獄の硫酸鉄による青色は、硫酸鉄が太陽の白色光の内青色の補色(黄色)の光を吸収するからです。
(吸収する光のエネルギー(波長;色に対応)は硫酸鉄の電子の軌道間のエネルギー差に相当し、光を吸収することにより硫酸鉄は励起される。)
このように、同じ青色でも全く原理が違います。
ちなみに硫酸鉄が光を吸収するような化学的な色に対して、かまど地獄の二酸化ケイ素のような物理的構造による色を構造色と呼びます。
【山地獄】
噴気がもうもうとする山地獄
2012/3/23筆者撮影
一方大量の噴気を吐きだしている山地獄。
煙のよう見える噴気の主成分は水H2Oです。
噴気はとても熱く、地熱の力を感じさせられる。
また、噴気を嗅いでみると独特な卵の腐ったような匂いがしました。
硫化水素H2Sでしょう。
H2Sは温泉で噴出する主な気体の1つで、特有の卵の腐ったような匂い(腐卵臭)がし、有毒です。
酸素Oと硫黄Sは同族元素(周期表で同じ列)であり、水分子と硫化水素分子はとても構造が似ている親戚分子です。
酸素原子と硫黄原子が入った化合物の構造はとてもよく似ていて、相互変換も可能なことが多いですが、両者の大きな違いは水素結合形成能の有無(Oは水素結合可;融点・沸点が全然違う)、d軌道の有無(Sはd軌道アリ;Sは原子価拡張ができる)ですね。
以上のように"地獄"で色々な無機化合物と出会えました。
特にかまど地獄3丁目の二酸化ケイ素の構造色にはびっくりしました。
紹介しませんでしたが他の"地獄"も全部回って、間欠泉である竜巻地獄なんかも圧力による水の沸点上昇に起因していたりしていて面白かったです。
筆者はどこへ行っても何をしていても「化学」を探しています。
>>風合瀬様のコメントへの返信
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