一般向け/高校生向け楽しい化け学
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「蛍石型結晶構造」の結晶構造模型を作ったので紹介してみます。
フッ化カルシウム CaF2;蛍石型結晶構造
蛍石CaF2の現物(左)と蛍石型結晶構造模型(右)
【蛍石型結晶構造】
MX2型の塩で、かつイオン半径比が0.73以上である場合に見られる。
上図では灰色がM2+、赤色がX-である。
※ 陰イオンと陽イオンの半径の比で結晶構造は変わる;『結晶 ~限界イオン半径比~』も参考。
蛍石型結晶構造は体心立方格子等と同じ「立方晶」と呼ばれる単位格子が立方体である結晶系に属している。
※ 単位格子は立方体とは限らない。軸がゆがんだものや、辺の長さがバラバラなものもある。例;六方最密充填。
代表的なものにM2+=Ca2+、X-=F-のフッ化カルシウムCaF2;蛍石があるためこの名がある。
フッ化カルシウムの場合なら下図のようになる。
フッ化カルシウムの蛍石型結晶構造
電荷が1:2であるからF-はCa2+の二倍の数あるため、互いの配位数は1:1ではない。
4つのCa2+が1つのF-を四面体的に囲んでいる形で、配位数はそれぞれ8:4になる。
Ca2+だけを見ると立方最密構造(面心立方格子)型の配置になっている。
※ ただしCa2+はF-より小さいためCa2+同士は触れ合っていないから厳密には違う。
Ca2+の立方最密型構造の全ての四面体空孔にF-が入っている構造である。
高校化学で面心立方格子や体心立方格子などを習うが、実際は世の中にはもっとたくさんの結晶構造がある。
特に塩は成分イオンの電荷数、半径比に違いがあるため多種多様な結晶構造を作り、そのためその結晶構造の代表的な鉱物を結晶構造の名前とすることが多い。
例えば同じMX2型の塩でも半径比が0.73と0.41の場合には二酸化チタンTiO2の金鉱石型構造(ルチル型構造)もある。
他にも、同じTiO2でもルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型の三種類があるなど、結晶の化学はとても難しい。
【蛍石】
フッ化カルシウムCaF2の鉱物。
上の写真の蛍石は不純物のため緑色である。(純粋なCaF2は白色, 不純物により様々な色の物が産出される。)
蛍石は写真のように正八面体にへき開し、その名のごとく光る性質がある。
蛍石は「fluorite」というが、これがフッ素(fluorine)Fの語源になったとか。
ちなみに蛍石CaF2はフッ化水素HF、そしてそれに次ぐフッ素F2の製造原料である。
蛍石を濃硫酸で処理して蒸留するとフッ化水素の水溶液及び無水物が得られる。
(重要!)
CaF2 + H2SO4 → CaSO4 + 2HF
HFとKHF2(※1)の混合物に水が完全にない状態で(※2)100℃で電気分解するとフッ素が生じる。
2HF → H2 + F2
(※1) K+[HF2]-という塩で、HFだけでは導電率が低いため添加されている。
ちなみに[HF2]-はビフルオリドイオンと言い、[F・・・H・・・F]-の直線構造の陰イオン。
(※2) フッ素は酸素より酸化力が強いので、水があると酸素O2が生じてしまう。
他にも蛍石は融剤に用いられたり、色収差(光の色による屈折率の差)が小さいので光学レンズに用いられたりする。
◎ 参考
- 岩石マニアのオジサンのウンチク。(蛍石の現物の所有者、写真撮影。)
- 『リー無機化学』, リー (著), 浜口 博 (翻訳), 菅野 等 (翻訳), 東京化学同人 (1982/01)
◎ 上の結晶構造模型はHGS分子構造模型Dセット(無機化学セット)で組みました。
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