一般向け/高校生向け楽しい化け学
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明けましておめでとうございます。
年始早々から忙しかったので久々の更新です。
さて、昨日アルバイト先の塾の生徒さんが「リンP4は融点が低い」という表現で悩んでいました。
普通、高校の教科書にはリンの化学式が載っていません。
一口に「リンP」と言っても、実は様々な同素体があります。
代表的なのは赤リンPと黄リンPです。
・・・っと高校の教科書に載っているが、実は黄リンは同素体ではなく「白リン」をベースに赤リンがちょっと混ざったような混合物らしいです。
赤リンはPが何原子か結合した化学式Pn、白リンはP原子が4つ結合した化学式P4という分子です。
恐らく、高校の教科書では「リンは赤リンと黄リン」と丸く収めたいのに、実は黄リンが混合物っぽいとか言う理由から「黄リンは化学式P4」とは言えないためややこしいので「リンは組成式P」と簡単に書いているのだと思います。
そのためか教科書でリンのページは薄っぺらいし、P4分子の存在が載っていません。
赤リンは化学式Pnの高分子的な固体なので融点は高い(600℃)。
一方黄リンは上記のようにほぼ白リンP4なので、分子結晶です。
だから黄リン(白リン)は融点が低く、なんとたった44℃。
・・・というように、リンの同素体には化学式P4というまさしく分子の形態を持つ物質があるわけです。
さて、では気になってくるのはP4分子の形です。
あまりなじみのない元素、なじみのない化学式ですからぱっと聞いただけでは構造もよくわかりませんね。
「P-P-P-P」みたいな直線か、あるいは枝分かれか、もしかしたら環状構造を取っているのか・・・・
なんと、実は下図のように正四面体の各頂点にP原子が配置した化学構造を取るらしいです。
P4分子の構造。WinMOPACで計算・描画
そうすると、Pの原子価は3ですが、全てのP原子がその手の数を満足できるというわけです。
四面体構造を取ると手の数は合いますが、本当に「正」四面体なのかなぁと思いました。
で、先ほどWinMOPAC(分子軌道計算ソフト)で計算してみたのですが、
○ 計算結果
・ 全ての∠P-P-P = 60.00°
・ 全てのP-P結合長さ = 2.197Å
というまぎれもなくP4分子が正四面体であるという結果が得られました。
その計算で得られた正四面体構造がまさしく上の図です。
本当に美しい正四面体だったので感動してしまいました。
しかし、美しいバラにはトゲがあると言いますが、美しい分子構造を持つ黄リン(白リン)は猛毒で、触るとひどい火傷を負い、飲むとまず死にます。
しかも自然発火性まであります。
黄リンの物性については次回の記事に書くことにします。
→ 次回;『今日の分子No.75 :白リン』
いや~しかし、やはり分子軌道計算は強いですねぇ。
カチカチカチっと数回クリックするだけで簡単にパソコン上で計算できてしまうコンピュータ化学の進歩にも感動です。
◎ 参考
- 『リー無機化学』, リー (著), 浜口 博 (翻訳), 菅野 等 (翻訳), 東京化学同人 (1982/01)
- 『チャレンジライセンス乙種1・2・3・5・6類危険物取扱者テキスト』, 工業資格教育研究会 (著) ,実教出版(2005/10)
- 有機化学美術館『分子の多面体』
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