一般向け/高校生向け楽しい化け学
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
今日は今朝からトリメチルアルミニウムの構造を考えていました。
世の中にはなんとも奇妙な分子がたくさんいます。
特に高校化学をきちんと勉強した人には受け入れがたいような分子が。
そんな変な分子を並べてみたいと思います。
◎ Na2
Na2分子の構造(左)、電子式(右)
ナトリウムの二原子分子。
八電子則も満たしてない。
金属の分子は奇妙に思えるかもしれませんが、ナトリウム蒸気中に実在します。
3s軌道の電子を使いσ結合で結合している。
これは分子軌道を考えると、原子状態で気体になるのではなくおのずと二原子分子になるであろうことは容易に予想できる。
Na2を紹介したら次のコイツも言っておきたい。
◎ W2
W2分子の構造
タングステンの二原子分子。
なんと6重結合をしている!!
σ結合が2本、π結合が2本、δ結合が2本の計6本。
今のところ最大の多重結合を持っている分子らしい。
多重結合が来たら、次はもっと変な結合を考えたい。
◎ ジボラン B2H6
ジボランの構造(上)と電子式(下)
水素の手が二本ある超変な分子。
でもこれでも常温で普通に安定。
普通に考えられるボランBH3はむしろ不安定で、ボランは通常二量体であるこのジボランで存在する。
水素の手が二本あるが、これはB-H-Bの「3中心」間で「2電子」で共有結合をしているからである。
これを「三中心二電子結合」といい、「半結合」と言ったりもする。
何故こんな結合をするかというと、単量体のボランには空の軌道があり8電子則を満たしていなく、ちょっとでもマシになろうと隣の違うボランの水素にひっついて行くからである。
三中心二電子結合で、ついにコイツをば。
◎ トリメチルアルミニウム [Al(CH3)3]2
トリメチルアルミニウムの構造
トリメチルアルミニウムも、実際は二量体を形成する。
炭素の手が5本になっているが、これも三中心二電子結合である。
ホウ素やアルミニウム等13族元素はこのように三中心二電子結合をしやすい。
トリメチルアルミニウム(アルキルアルミニウム)は高分子の工業的合成で必要な重要な物質である。
あとこの分子はAl-C結合がある。
このような金属-炭素結合がある化合物を「有機金属化合物」といい、奇妙に見えるが触媒などで超重要な化合物である。
有機金属化合物つながりで言うと、こんな変な化合物もある。
◎ ツァイゼ塩 K[PtCl3(CH2=CH2)]
ツァイゼ塩の構造
1827年に見つかったプラチナの錯塩。
有機金属化学の歴史の始まりである。
なんとプラチナはエチレンの二重結合と結合している!
こういう錯体を「π-錯体」という。
この様な構造はかなり奇妙に見えるだろうが、今となっては珍しくはない。
π錯体絡みで言うと、このサンドイッチが思い出される。
◎ フェロセン Fe(C5H5)2
フェロセンの構造
C5H5環(シクロペンタジエニル環:「Cp」と略される)に鉄が挟まった分子。
Cp環に鉄が突き刺さっているようにも見える。
FeはCp環の5つのCと均等に共有結合していると言える。
Cp環は形式電荷-1で平面な構造をしていて、なんと五員環なのに芳香族。
Cp環が付いたサンドイッチ型の有機金属化合物は他にもたくさん種類がある。
綺麗な黄色をしたとても安定な分子。
筆者はこれを使った実験で操作ミスをして先生に呆れられたことがあり、苦い思い出のある物質である。
☆ フェロセンに関しては『アセチルフェロセンの結晶』も参照。
っと、書いていくときりがないのでとりあえずこの辺で。
他にも、もっと知っている化合物でも変なのはある。
例えばO2。
こいつの構造は本当は「O=O」ではない。
※ 『今日の分子No.51 :酸素』参照。
他にもNO2とかも変な分子である。
こいつは奇数電子分子であり、ラジカルである。
しかしそのラジカルの電子をN-O結合に参加させ「奇数電子結合」をしていたり・・・・
世の中は変わり者で溢れています。
しかしこんな分子たちは、ただ単に「例外」みたいなやつではなく、分子軌道法で考えると結構すんなり理解できるのが面白い。
◎ 参考
PR
最新記事
(2018/09/23)
(2017/08/14)
(2017/03/07)
(2016/08/17)
(2016/05/05)
(2015/07/19)
(2015/04/11)
(2014/11/23)
(2014/08/03)
(2014/05/11)
カテゴリー
ブログ内検索