一般向け/高校生向け楽しい化け学
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筆者は物を買って食べるときほぼ必ず「原材料名」を見ます。
別に「これは人工着色料!ダメだ!」とか思うために見ているのではなく、特に意味なく単にどんな物質が入っているのか知りたいからです。
今まさにカルビーのお菓子「Jagabee」を食べているのですが、原材料名に「酸化防止剤(V.C)」という表示を見つけました。
この表記は他の食品にもよく記されているため、目にしたことがあると思います。
「酸化防止剤(V.C)」とは何者なのか、ちょっと紹介しましょう。
今日の分子 No.69 L-アスコルビン酸 C6H8O6
Jmolで描画
いわゆる「ビタミンC」。
英語で綴ると「Vitamin C」なのでよく「V.C」と略記される。
ビタミンとは基本的に体内で合成できない物質であり、体内では補酵素(酵素を助ける物質)等の役割を持ち、適量摂取しなければ体調に問題をきたす物質である。
構造的には糖の誘導体で、生体内ではグルコースC6H12O6から合成される。
白から明るい黄色の結晶、もしくは粉末。
酸であり、酸っぱい味がする。
水溶性ビタミンであるため、過剰に摂取しても余分な量がすぐに排出され体に蓄積されないので多少過剰摂取しても安全。
(一方、脂溶性ビタミンであるビタミンA等は体内に蓄積されてしまうので、サプリメント等で過剰摂取すると危険である。)
この分子の注目すべき点は、「-C(OH)=C(OH)-」の「エンジオ-ル」と呼ばれる構造を持つことである。
普通二重結合を持つ炭素にヒドロキシ基が付いた「C=C-OH」の構造を持つ分子はアルデヒドまたはケトンにその化学平衡が偏るが、ビタミンCに関しては安定である。
この部分が還元性を持つため、ビタミンCは還元剤(酸化防止剤)として生物中で、食品添加物で用いられる。
だからよく「原材料名」の食品添加物で「酸化防止剤(V.C)」と書かれているのは、まさにこれである。
他にもペットボトルのお茶等の「原材料名」にも「ビタミンC」と書かれていることがあるが、それも酸化防止剤として添加されている。
たまにこれを美容健康のためや味付けのために添加されているのだと思っている人がいるが、実はそうではない。
具体的には次のように二電子失ってジケトンのデヒドロアスコルビン酸になる。
ビタミンCの還元作用
生体内で電子を渡す相手は酸素系のラジカル(活性酸素種)等で、DNA等を傷付けるこれらラジカル等を還元することで体を守る役割をする。
また、脂溶性還元剤であるビタミンEが酸化されて酸化物になってしまった時、それをビタミンCが還元して元の還元力のあるビタミンEに戻す、という働きもある。
(ビタミンE→ 『今日の分子No.70 :α-トコフェロール』も参照。)
生体内でのビタミンCの役割は他にもあり、例えばコラーゲン中のプロリン残基をヒドロキシル化する役割がある。
コラーゲンとはたんぱく質が三重らせん構造を巻いた生体の強固な構造材料物質である。
コラーゲンのたんぱく質中にあるヒドロキシル化プロリン残基のヒドロキシル基が水素結合することでコラーゲンのその強い三重らせんを構成している。
だから逆に言えばビタミンCによってコラーゲンのプロリン残基にヒドロキシ基が導入されなければコラーゲンはコラーゲンたりえない。
このようにしてビタミンCの欠乏により正常なコラーゲンが作れなくて起こる病気が壊血病である。
壊血病のことを「スコルビー」(英:scurvy)と言うらしい。
「壊血病(スコルビー)を防ぐ(否定の「ア」)酸 ⇒ アスコルビン酸」
という流れで命名されたとか。
ちなみに鋭い人は、ビタミンCのどこにもカルボキシル基等酸性の基が見当たらないと気づくかもしれない。
実は酸性の基はあって、「-C(OH)=C(OH)-CO-」の部分である。
下式のように電離して水素イオンを放出すると、生じた陰イオンはカルボニル基との共鳴により電子が非局在化されて安定化されるため、酸として働く。
(「陰イオンが共鳴で非局在化して安定化~~」;フェノールのヒドロキシ基が酸として働くのと同じ理由。)
ビタミンCの電離と陰イオンの共鳴
◎ 参考
- 『Safety data for ascorbic acid』
- 『パソコンで見る動く分子辞典』本間善夫, 川端潤著, 講談社(2007)
- 『第3版 マクマリー 生物有機化学 生化学編』John McMurryら著, 丸善(2010)
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