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一般向け/高校生向け楽しい化け学
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昨日の記事『今日の分子No.68 :硫化水素』で触れた水素化処理についてもう少し説明します。



石油化学工業で留分の水素化処理によるS、N、Oの除外。




原油を蒸留して得た留分には単純な炭化水素だけでなく、含硫黄化合物・含窒素化合物・含酸素化合物も含まれています。

石油化学製品(ガソリンや軽油等)に硫黄や窒素元素が入っていると、製品を燃料として燃やした時にSOxやNOx等環境問題になる物質が生じてしまいます。

また、留分を接触改質したり接触分解したりするとき、硫黄系の官能基が入っていると、触媒と反応して高価な触媒を痛め壊してしまう恐れがあります。
  • 接触改質;触媒を用い、アルカンを脱水素したり転移させたりする化学変換。オクタン価(→『今日の分子No.56 :イソオクタン』参照)の向上が期待できる。
  • 接触分解;触媒を用い、分子量の大きな炭化水素分子をC-C結合の切断により、小さな炭化水素分子にする化学変換。


だから反応させる留分や最終的な石油化学製品にはできるだけCとHのみから成る炭化水素だけが入っているようにしたいわけです。

そこで、じゃあ含硫黄・窒素・酸素化合物を捨てればいいかと言うとそうではない。

炭素鎖の一角にちょろっとSやNが入っているだけなので、捨ててしまってはモッタイナイのです。

だから化学変換により還元して化合物中からSやN、Oを追いだしてしまおうという考え方です。

そこで登場するのが「水素化処理」(hydrorefining process;「水素化精製」とも。基本的に脱硫が目的)。

触媒存在下、接触改質や接触分解をする前に留分と水素を反応させます。

S、N、OはそれぞれH2S、NH3、H2Oとなって除かれます。

触媒には アルミナ or シリカ-アルミナ or ゼオライト に Co-Mo or Ni-Mo を担持させたもの等、硫黄で傷付いてしまわないものを用います。

具体的には次のようなパターンの化学反応が起こります。



◎ 水素化処理反応

触媒;<アルミナ or シリカ-アルミナ or ゼオライト> 担持 <Co-Mo or Ni-Mo>


・硫黄系



チオールの水素化処理反応




スルフィドの水素化処理反応




ジスルフィドの水素化処理反応




チオフェン系の水素化処理反応



・窒素系



ピリジン系の水素化処理反応



・酸素系



フェノール類の水素化処理反応



この内、生じたH2Sは分離され、酸化されて単体硫黄Sにされて製品として出荷されます。

また、この記事の一番上に示した図のように、水素化処理で使う水素は改質工程で副生した水素が使われていて、環境的・経済的です。



◎ 参考


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