一般向け/高校生向け楽しい化け学
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炭素数4、5のカルボン酸は非常に不快な臭いがするが、エステルになるととても良い香りになると昨日書きました。
(『今日の分子No.63 :酪酸』、『今日の分子No.54 :イソ吉草酸』参照)
低分子量のエステルは果実臭がし、実際果実に含まれています。
具体的にどんなエステルが果実の香り成分なのか紹介しましょう。
☆ 生活環境化学の部屋様の『◆ 果物の香りをつくる/エステル類ほか ◆』もご参考に。
<果実の香りの例>
◎ バナナの香り成分
酢酸3-メチルブチル (別名:酢酸イソペンチル)
◎ リンゴの香り成分
ペンタン酸3-メチルブチル (別名:吉草酸イソペンチル)
◎ ラム酒の香り成分
プロパン酸2-メチルプロピル (別名:プロピオン酸イソブチル)
◎ ブドウの香り成分
2-アミノ安息香酸メチル (別名:アントラニル酸メチル)
エステルは生物界にたくさん存在し、様々な役割を果たしている。
これは、カルボン酸誘導体の相互変換は活性化エネルギーが低くて比較的簡単で、便利だからであるらしい。
香りという生体的な役割を持ち上記のように植物に多く含まれている他、動物も「香り」に準ずる面白い働きのためにエステルを使っている。
例えばフェロモン(生物同士が情報交換するために使う化学物質)。
フェロモンは香りとは違うが、匂いと同じような感じで体に取り込むことにより生体刺激となる。
フェロモンにも香り成分と同じようにエステルが多いらしく、特にcis・trans異性や光学異性を持つ立体特異的な部分を持つ物質が多い。
例えば、ある種のガのフェロモンの次の物質;
酢酸cis-7-ドデセニル
がある。
ちなみにこの物質は面白いことに、たまたまゾウの性誘因フェロモンと同じ分子らしい。
ガとゾウが同じフェロモンを使うなんて、たまたまってあるもんだなと思いますね。
ちなみに、『ボルハルト・ショアー現代有機化学〈下〉』という筆者が大学で使っている教科書にこのことが載っているのだが、この教科書の著者はなかなかユーモアがあってこの事実を次のように書いている;
ゾウは,性誘因フェロモンとして数種類のガが用いるのと同じ分子を用いている.しかしゾウはこの事実に対して,感動している様子がまったくない.
(ボーっとしているゾウの写真が挿絵としてついている)
以上、エステルの香り(+フェロモン)としての具体的な例でした。
参考;
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