一般向け/高校生向け楽しい化け学
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先日紹介した『化学ビデオ講座No.3 :ニトロベンゼンの還元によるアニリンの合成』に関連して、ニトロベンゼンを紹介します。
今日の分子No.62 :ニトロベンゼン
Jmolで描画
慣用名:ニトロベンゾール、ミルバン油。
特有の臭いがする淡黄色油状液体。
味は甘いらしい。
水に不溶で、引火性があり有毒。
比重が約1.2なので水に沈む。
最も単純なニトロ化合物である。
コールタールから得られる。
1834年にE.Mitscherlichという人が初めて単離に成功したらしい。
靴や部屋の研磨剤、塗料の溶剤、皮製品の仕上げ剤、香料として用いられる。
ちなみに、ニトロベンゼンは化学的には「ニトロ化合物」であるが、日本の法律(消防法)ではニトロ化合物でなく「石油類」に分類されている。
これは、ニトロベンゼンはニトロ化合物である割には安定であり、爆発性がないからである。
(しかし引火性・発火性はあるため引火性液体第4類危険物第3石油類であると決められている。)
あと、ニトロ基の部分はややこしいですが下記のような構造になっていてNもOもオクテッド則を満たしています。
ニトロベンゼンの構造(共鳴構造式) ※二つの酸素原子は上共鳴式により等価
ニトロベンゼンや、その他ニトロベンゼン誘導体は合成化学的にはベンゼンを混酸(濃硫酸:濃硝酸=3:1で混ぜたもの)でニトロ化して合成する。
ベンゼンのニトロ化
少し詳しく述べると、まず硝酸が硫酸によりH+化、脱水してニトロニウムイオンNO2+を生じる。
ベンゼン環は比較的電子が多くマイナス雰囲気なので、そこへニトロニウムイオンが寄って行って「求電子付加」し、H+が取れてニトロベンゼンが生成する。
ニトロベンゼン(やその誘導体)は還元することによりアニリン(や対応する誘導体)に変換できる。
Fe/HClやSn/HCl、H2/Ni、Zn(Hg)/HCl等の還元法がある。
(先日紹介した『化学ビデオ講座No.3 :ニトロベンゼンの還元によるアニリンの合成』も参照)
また、アニリン(やその誘導体)を酸化することによりニトロベンゼン(や対応する誘導体)に変換できる。
酸化剤としてはトリフルオロ過酢酸CF3COOOHが用いられる。
すなわち、芳香族ではニトロ基とアミノ基が変換でき、これが合成化学的には非常に重要。
ニトロ基はベンゼン環から電子を引っ張るのでメタ配向性で、アミノ基はベンゼン環へ電子を押し込むのでオルト・パラ配向性である。
例えばアニリンからm-クロロアニリンを合成したいときには、アニリンを一旦酸化してニトロベンゼンにしてからクロロ化してm-クロロニトロベンゼンにし、還元してm-クロロアニリンにする。
(そのままアニリンをクロロ化してもo-クロロアニリンとp-クロロアニリンができてしまう!)
このように、ニトロ基とアミノ基の相互変換は配向性のパズル的合成の一手を担う。
◎ 参考
- 『ボルハルト・ショアー現代有機化学〈下〉』, K.Peter C. Vollhardt, Neil E. Schore著, 野依良治監訳, 化学同人; 第4版 (2004/06)
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