一般向け/高校生向け楽しい化け学
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前回のクロロホルムに続いて、関連物質のヨードホルムを紹介。
ちなみにCHX3(Xはハロゲン)をハロホルムと言う。
マニアックで高校化学では出て来ないが、フッ素の時はフルオロホルムCHF3、臭素の時はブロモホルムCHBr3である。
フルオロホルム以外はヨードホルム反応と同様な、対応するハロゲンを用いたハロホルム反応で得られる。
今日の分子No.61 ヨードホルム CHI3
WinMOPACで計算・描画
IUPAC正式名称はトリヨードメタン。
水に不溶な淡黄色の固体。
特有の不快臭がする。
融点118~121℃。
外皮用殺菌消毒剤として用いられる。
(後述する「ヨードホルム反応の生成物」というイメージが強いが、ちゃんとヨードホルムには使い道があるのです!)
ヨードホルムは次のヨードホルム反応で生成する。
ヨードホルム反応
次の構造を持つ化合物は水酸化ナトリウム水溶液中でヨウ素と反応してヨードホルムの沈殿と1炭素少ないカルボン酸塩が生じる。
(50℃くらいのお湯で加熱。)
ヨードホルム反応陽性の化合物が持つ構造
(例)左:アセトン・エチルメチルケトン等、右:エタノール・2-プロパノールなど
※注:酢酸はヨードホルム反応陰性である。
すなわち、この試験を試みてヨードホルムが生じると、上のいずれかの構造を持つ化合物であったということがわかる。
構造解析の、19世紀に確立された古典的な化学的手法の一つである。
左の構造(アセチル基を持つ構造)の場合、反応式は
CH3-CO-R + 3I2 + 4NaOH → CH3COONa + CHI3 + 3H2O + 3NaI ・・・・(1)
である。
右の構造(1-ヒドロキシエチル基を持つ構造)も同じ結果を与える理由は、右の構造が酸化されると左の構造になるからである。
(ただ丸暗記するのではなくて、そう理屈をつけて考えると覚えやすい。)
右の構造の第一級アルコールもしくは第二級アルコールは塩基性条件で次のように酸化されて左の構造を与える。
CH3-CH(OH)-R + I2 + 2NaOH → CH3-CO-R + 2NaI + 2H2O ・・・・(2)
よって右の構造の場合のヨードホルム反応式は、(1)式と(2)式を足して、
CH3-CH(OH)-R + 4I2 + 6NaOH → CH3COONa + CHI3 + 5NaI + 5H2O ・・・・(3)
である。
ヨードホルム反応は、有機化合物の構造決定で入試でもよく出されて重要。
ヨードホルム反応は係数がややこしいので係数付けの問題もしばしば出題されている様。
ちなみに筆者は未定係数法で係数付けをしない。
だって連立方程式で6個も変数出てきて計算ややこしいし、間違えるし。
じゃあどうしているかと言うと、いつも反応機構考えて係数付けてます。
(※反応機構:2011/7/20の『エステル化 ~酸の頭が取れる!~』等で紹介した、電子の動きを考慮して一つ一つの素反応を考えて作った反応式。)
ヨードホルム反応の反応機構だと、筆者だと2分くらいで書き終わる。
(さっき実際に測ってみると1分53秒だった。)
反応機構を考えれば、仮にNaIやH2Oが副生することをすっかり忘れていても生成することが必然的にわかるから安心。
さて、こうまで書くと一体どんな素反応が実際起こっているか気になってきませんか?
まさかのまさか、実は「不安定ですぐ異性化する」という言葉で名高い「エノール」が関係していたりするのだ!
(正確に言うと、エノールが電離した形の「エノラート」という陰イオン。)
どんな反応かというのは、非常に難しい。
話せば長くなるので、続きは次に回しましょう。
→ 続き;『ヨードホルム反応の仕組み』
◎ 参考
- 『ボルハルト・ショアー現代有機化学〈上〉』, K.Peter C. Vollhardt, Neil E. Schore著, 野依良治監訳, 化学同人; 第4版 (2004/03)
- 『ウォーレン有機化学〈上〉』, Stuart Warrenら著, 野依良治監訳, 東京化学同人 (2003/02)
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