一般向け/高校生向け楽しい化け学
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昨日、仕事仲間とパーティー用のいわゆる"ヘリウム"を吸って声変えて遊んでました。
パーティ用のいわゆる"ヘリウム"はヘリウム約80%、酸素約20%の混合気体です。
ヘリウム分子や、ヘリウムと酸素の混合気体については今日の分子No.45ヘリウムを参照ください。
ヘリウムを吸って声が高くなる現象を、その独特の声色からドナルドダック効果と言います。
なぜヘリウムを吸うと声が高くなるのでしょうか。
まず音とはどのような現象であり、物理化学的に音速はどのように表現されるかから考え、気体の種類と音の高さを考えてみましょう。
まず、音とは波です。
音波は空気を媒質として伝わる疎密波です。
ここまでは高校物理で習います。
ここで、実は音波の疎密波は空気が断熱過程で圧縮・膨張していると知られています。
なので高校物理の熱力学でちょこっと習う断熱過程の式
PVγ = 一定
の関係を使うことができます。
この式を微分して、気体の弾性率と音速の関係式(難)・理想気体の状態方程式を使うと※注、音速vは
・・・・(1)
と表されます。
ただしRは気体定数、Tは絶対温度、Mは気体分子のモル質量(単位:kg/mol)です。
また、高校の物理Ⅱでも習いますが、γは比熱比でγ=Cp/Cvです。
ただしCpは定圧モル比熱、Cvは定積モル比熱。
気体がN原子分子の場合
Cv = (N+0.5)R
Cp = Cv+R = (N+1.5)R
よって
・・・・・(2)
です。
(1)式と(2)式を使えば(理想)気体中での音速を計算することができます。
例えば25℃の窒素中での音速を求めてみましょう。
窒素N2は2原子分子なので、(2)式にN=2を代入すると
γ=1.4
γ=1.4、T=298K、M=0.028、R=8.31J/(K・mol)を(1)式に代入すると
v窒素 = 352 m/s
となります。
次に、ついでに空気中での音速を見積もってみましょう。
簡単のため、空気はほぼ酸素と窒素の混合物なので、分子量29の理想気体で、2原子分子だと仮定しましょう。
すると室温25℃すなわちT=298Kでは
v25℃ = 346 m/s
となり、0℃すなわちT=273Kでは
v0℃ = 331 m/s
0℃における乾燥空気中での音速の実測値は331.3m/sらしいので、うまく一致しました。
一方で、(1)式より音速は気体の分子量の平方根に反比例することがわかります。
すなわち軽い気体ほど音速は速くなります。
(ただし構成原子数が異なるとγも変わります。)
25℃のときのヘリウム中では音速は
vHe = 1014 m/s
(単原子分子でN=1よりγ=5/3)
速い!!
なんと音速はヘリウム中では空気中での音速の三倍ほどの速さになります。
このように、音速は気体の分子量(と構成原子数)に関係します。
では本題の音の高さに参りましょう。
波の基本式
v=fλ
より
f=v/λ
です。
ただしfは振動数、vは波の速さ、λは波長です。
気体中を伝わる音波の場合、vは音速になります。
仮に笛を吹いたときなど、λが一定のときを考えましょう。
(1)式よりvは分子量が小さい程大きいので、すなわち分子量が小さいとfは大きくなります。
中学理科で習うように、振動数が大きいほど音は高くなります。
したがってヘリウムのような軽い気体中では音が高くなります。
これが、ヘリウムを吸ったら声が高くなる理由です。
物理の波動や熱力学、熱化学は関係なさそうで密接に関係があり、式変形により日常の現象においても有益な数値を与えてくれます。
※ 音速の式の導出過程は東京学芸大学の松浦研究室様HPのページhttp://topicmaps.u-gakugei.ac.jp/physdb/heat/moleculartheory.aspの上から三分の一くらいの項目に詳しく載っています。
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