一般向け/高校生向け楽しい化け学
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「有機化学の歴史と化学者 第三弾」
今日は特異な性質を示す不飽和化合物;芳香族炭化水素の発見について。
「今日の分子」は高校でも習い、かなり重要であるその代表例のベンゼン。
「今日の分子」No.9、ベンゼン C6H6
Jmolで描画
正六角形に並ぶ炭素同士が単結合と二重結合を交互にした分子。
そしてその単結合-二重結合はクルクルと回る、と表現される。
もしくは「1.5重結合」をした分子として表現される。
現代の量子化学的に言うと厳密には後者の表現が事実に近い。
ベンゼンの構造 |
ベンゼンの面白いところは二重結合があるはずなのに普通の条件では付加反応をしない点にある。
たとえば二重結合を持つヘキセンでは、臭素水を加えるだけでもジブロモヘキサンになってしまう。
しかしベンゼンでは、むしろ置換反応が起きてしまう。
なぜかというと、「二重結合」ではなく、クルクル回っているようなイメージの「1.5重結合」になっていて、結合が安定化しているからである。
この分子を最初に発見したのは、実は電磁誘導の法則で有名なファラデーである。
しかし彼にはその化学式や構造を解くことはできなかった。
その9年もの後、ミッチェルリッヒという化学者がC6H6という分子式を明らかにした。
しかし彼にも構造はわからなかった。
その後30年以上にわたりいくつかの構造式が考案されたが、どれも駄目だった。
なぜこんなにも苦労したのだろうか。
それはベンゼンが不飽和結合を持っているだろうのに、付加反応をしなかったからである。
当時は全くそれが理解できず「不飽和結合はないのだろう」と考えたが、それには無理があったからである。
しかし1865年、ケクレによってついにその構造が考案された。
「二重結合と単結合が交互に並び、それがめまぐるしく回っている」というケクレ構造式。
そして、だから二重結合としての性質は変わっているという理論である。
今日は「回っている」というのは間違っていて、常にその平均、まさに「1.5重結合」をしていると考えられている。
しかし彼の理論は今となってはその点少し微妙であるが、量子化学のなかった当時で考えると理にかなっていると言えた。
ベンゼン・ベンゼン環は有機化学で非常に重要なものであり、この発見でベンゼン置換体の異性体の数は矛盾無く説明できるようになり芳香族化合物の整理・体系化が可能となった。
ケクレのフルネームは「フリードリヒ・アウグスト・ケクレ・フォン・シュトラードニッツ」である。
長い・・・覚えれねぇ・・・
もし筆者がこの名前なら、テスト5教科受けたらひとつは自分の名前のスペルを間違える自信がある。
また、彼のベンゼン構造式の発想について、「夢の中で自分の尾を噛んだ蛇がグルグル回っていた。」という逸話は非常に有名である。
あまりにも有名すぎる伝説で、筆者の高校化学の教科書にも載っていた。
しかしこれは彼が自分の講義にユーモア性を持たせるための持ちネタとしてでっち上げたウソ話だと言われたりするが、本人がそう言ってるんだしまあいいじゃないかと思う。
彼は実は昨日紹介したリービッヒの弟子である。
彼は最初ギーセン大学に建築学を学びに入学した。
当時ギーセン大学にはリービッヒが勤めていた。
彼はリービッヒの有機化学の講義を聴き、とても感動して一旦退学し、有機化学専攻で入りなおしリービッヒの門下生となった。
彼は他にも炭素の原子価が4であるなど、重要な発見をしている。
気づいたんだけど、この3日間は化学史の話をしているというよりか、リービッヒにまつわる筆者のダイスキ化学者特集になってしまっている気がする・・・
特にリービッヒについては一日で書ききれないほどネタがある。
細かいことは今度「化学者特集」の項目を作ってまとめようかな。
若干脱線気味なことだし、この「有機化学の歴史と化学者特集」はとりあえず明日書いて休刊にしようかな。
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