一般向け/高校生向け楽しい化け学
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久々に化学ビデオ講座。
今回は炎色反応(英:Flame test)。
花火などに応用され、金属元素が美しい光の舞台を演出します。
ちなみに、一族・二族の金属以外にも、銅などの遷移金属やホウ素等の半金属元素も炎色反応を示します。
英語の説明、字幕も参考に見てみてください。
化学ビデオ講座No.4 :炎色反応
◎ 元素と炎の色(画面右から順に)
・ アルコール(ベースの炎;比較用):青色
・ Ba :黄色~くすんだ黄色
・ B :緑色
・ Sr :紅色
・ Ca :橙色(※ 色が弱く、アルコールの青色の炎がいくらか見えている。)
・ Li :赤色(※ 動画では不純物でオレンジ色に見えている。)
・ Na :黄色(※ ナトリウムは英語でソディウムsodiumと言います。)
・ Cu :青緑
・ K :紫~藤色(※ カリウムは英語でポタシウムpotassiumと言います。)
炎色反応は三段階のメカニズムで起こる;
(1) 加熱により金属や金属塩が揮発し、原子化する。
(※ 原子まで分解しない場合もあり。詳しくは「炎色反応:ストロンチウムは分子発光!」)
(2) 生じた金属原子の価電子が熱励起され上位の軌道に飛び上がる。
(3) 電子が元の軌道に落ちてくるとき、軌道間のエネルギー差の分の光を出す。
例えばナトリウムの場合なら(2)→(3)は次の図のようになる。
ナトリウムの炎色反応の原理
ナトリウムの場合は価電子である3s軌道の電子が1つ上のエネルギー準位である3p軌道に移り、次に3p→3sと落ちることでその差のエネルギーの光(波長 = 589 nm;黄色に相当)を放出するのである。
(※ 高校で習う「電子殻」はさらに「軌道」というものにわかれている。Naの最外殻であるM殻の中には3sと3pという二つの軌道(電子の座席)があるのである。)
ちなみに、高速道路のトンネルなどでよく見かけるナトリウムランプも同じように真空管に封入したナトリウム原子を励起し、黄色の光を放出しているのである。
(ただし、火であぶっているのではなく、電圧をかけてアーク放電を起こして励起している。)
さらにちなみに、料理をしているときにナベが噴きこぼれてオレンジ色の火が上がることがあるが、これは食塩のNaの炎色反応が見えているとのこと。
また、(1)の分解反応が起こりにくい金属塩は炎色反応を起こしにくい。
例えば塩化銅はバーナーであぶると青緑に光るが、酸化銅はいくら加熱しても光らないことは経験的に知っているだろう。
これは酸素と銅の結合力が強くて揮発しないからで、一方特に金属塩化物は揮発・原子化しやすい。
◎ 参考
- 『Newton 完全図解周期表』, 玉尾皓平, 桜井弘, 福山秀敏 著, ニュートンプレス (2006/12)
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とりあえず「化学ビデオ講座」のナンバーを増やしてみます。
今日は有機合成、高校でも習うニトロベンゼンの還元によるアニリンの合成です。
還元剤には鉄粉を用いています。
(☆ スズを用いてもできます。重要!)
化学ビデオ講座No.3 :ニトロベンゼンの還元によるアニリンの合成
<動画の要約>
まず鉄粉・蒸留水・塩酸を用意した。
反応装置を組み立て、3つ口フラスコに蒸留水と鉄粉を入れた。
加熱撹拌しながら、温度計を取ってゆっくりと塩酸を加えた。
次に滴下漏斗でニトロベンゼンを加えた。
すると黒色物質(四酸化三鉄)を生じつつ、アニリン(の塩酸塩)を生じた。
反応終了後、フラスコを水に浸けて冷却し、炭酸カリウムを加えて反応液中の塩酸の中和・アニリン塩酸塩からアニリンの遊離を行った。
蒸留し、水+ニトロベンゼン+アニリン液を得、分液漏斗に入れた。
そこへ塩化ナトリウムを加えて(塩析の原理)よく振って上層に有機層(アニリン+ニトロベンゼン)を得た。
得た有機層を低温で蒸留してアニリンを得た。
(※ 高温で蒸留するとニトロベンゼンも出てきてしまう。)
<解説>
ニトロベンゼンを鉄―塩酸でアニリンに還元する反応である。(ベシャンプ還元と言う。)
C6H5-NO2 + 6H+ + 6e- → C6H5-NH2 + 2H2O
スズを用いた反応式は高校化学の教科書にも載っているが、鉄を用いた場合は載っていない。
鉄を用いた場合は反応が少し難しくなる。
まずFeがFe2+になることで(すなわち塩化鉄(II)になることで)ニトロベンゼンを還元する。
C6H5NO2 + 3Fe + 6HCl → C6H5NH2 + 3FeCl2 + 2H2O
次にFe2+がFe3+になることでニトロベンゼンを還元する。
C6H5NO2 + 6FeCl2 + 6HCl → C6H5NH2 + 6FeCl3 + 2H2O
さらに、塩化鉄(II)と塩化鉄(II)と水が反応して四酸化三鉄を生じ、塩酸を再生する。
FeCl2 + 2FeCl3 + 4H2O → Fe3O4 + 8HCl
以上の反応を足すと、結局、
C6H5NO2 + 9Fe + 4H2O → 4C6H5NH2 + 3Fe3O4
となる。(塩酸は反応前後で正味消費されていないので触媒的役割をしている。)
しかし、アニリンは塩基であるのですぐ塩酸と反応しアニリン塩酸塩になる。
C6H5NH2 + HCl → C6H5NH3+Cl-
これをアニリンに戻すために塩基である炭酸カリウムを加えている。
C6H5NH3+Cl- + K2CO3 → 2C6H5NH2 + 2KCl + CO2 + H2O
また、反応液中には塩酸もたくさん残っているので炭酸カリウムで中和する。
2HCl + K2CO3 → 2KCl + CO2 + H2O
反応後の反応液は残った鉄粉や、生じた四酸化三鉄、塩化カリウム等が混ざっている。
ここからアニリンだけを取り出さねばならない。
だからまず液体だけ取り出すため蒸留し、水が入っているので分液漏斗で有機層を分離する。
有機層にはニトロベンゼン等が入っているので、これをさらに蒸留する。
蒸留するとき、動画では「アセトンで洗ってヒートガンで加熱する」と言っているが、これは水が入ってしまわないようにしているのである。
上の動画でわかるように、有機合成は合成反応自体の操作よりも、後処理と生成物の分離に大きく労力を必要とする。
単に教科書の化学反応式を見ただけではこれはなかなか理解できないのだ。
実験をするとさらに色々問題に直面する。
反応物の濃度は?
フラスコの大きさは?
何ミリグラムくらい生成物が欲しい?
後処理での水や塩基・酸、抽出時に加える塩はいくらぐらい入れるべき?
等など。
化学は、教科書を読むだけではわからないのです!!
が、それが本当に面白い!
◎ 参考
- 『ボルハルト・ショアー現代有機化学〈下〉』, K.Peter C. Vollhardt, Neil E. Schore著, 野依良治監訳, 化学同人; 第4版 (2004/06)
昨日の『化学ビデオ講座No.1 :アルミニウムと塩酸の反応』に関連して、今日はアルミニウムと水酸化ナトリウムの反応です。
アルミニウムが両性元素であるため酸だけでなくアルカリとも反応するということと、水素の性質がどっちもわかる一口で二度おいしいお得な実験動画です。
化学ビデオ講座No.2 :アルミニウムと水酸化ナトリウムの反応
<動画の要約>
アルミホイル(Aluminium foil)を水酸化ナトリウム水溶液(a solution of sodium hydroxide)に入れると、気泡(H2)を生じながら溶けた。
生じた気体を風船にして閉じ込めると、風船は空中に浮かび、火をつけると爆発的に燃焼した。(すなわち、生じた気体とは水素である。)
<解説>
アルミニウムは「両性元素」であり、酸にもアルカリにも水素の発生を伴って溶ける。
(『化学ビデオ講座No.1 :アルミニウムと塩酸の反応』も参照)
反応式は
2Al + 2NaOH + 6H2O → 2Na[Al(OH)4] + 3H2
である。
生じる塩;Na[Al(OH)4]はテトラヒドロキソアルミン酸ナトリウムと言い、Na+と錯イオン[Al(OH)4]-(テトラヒドロキソアルミン酸イオン)から成る。
両性元素には他に亜鉛Zn等があり、Znも同様にNaOH水溶液に水素を生じながら溶ける。
また、酸化物Al2O3やZnOも酸にもアルカリにも溶けるので「両性酸化物」と呼ばれる。
これらは高校化学でも出てきて重要。
水素は分子量2で空気の平均分子量29より小さく軽いので、風船にすれば浮かぶ。
水素は非常に着火しやすく(空気中での最少発火エネルギーがなんとたった約0.02mJ!!)、激しく燃焼・爆発して非常に危険な気体である。
ちなみに筆者は高校生の頃3週間程カナダの高校に研修で通ったことがあったのだが、ZnとHClを反応させて生じた水素を動画と同じような感じでゴム風船に詰めて火をつける実験をさせてもらった。
日本ではあまり聞かない実験であるが、欧米では人気な実験なんだろうか?
本当に「ボン!」っと音を立てて吹っ飛んだ。
ダイナミックなところが欧米ウケするのだろうか・・・
※ 参考;テトラヒドロキソアルミン酸イオン
普通[Al(OH)4]-という化学式であらわされる錯イオンだと書かれるが、実際はもう少し難しい。
実際は[Al(H2O)2(OH)4]-という、Al3+を中心とした6配位の錯イオンである。
(いつもの書き方は水が省略されている。)
だから実は8面体構造をしている。
この錯イオンは水和Al3+イオンである[Al(H2O)6]3+の内4つのH2OのH+が電離した形とも捉えられる。
Al2O3(水に不溶)にNaOHを加えると、水中に微量存在するこの水和アルミニウムイオンの電離平衡を電離側に進ませる(中和する)ため、Al2O3が溶けるのである。
>> 田村由光様への拍手レス
◎ 参考
- 『チャート式シリーズ 新化学I』野村 祐次郎(著), 辰巳 敬 (著), 本間 善夫(著), 数研出版 (2003/11/1)
動画の力はすごい。
昨日化学実験の教育動画見ていて改めて思いました。
百聞は一見に如かずというが、実験のビデオを見ると実際に何が起こっているのかよくわかります。
逆に、説明文や化学反応式だけでは現実に何が起こっているのかわからなくて、それでは「化学」ではない。
ということで「化学ビデオ講座」なるコーナーを始めました!
youtube等にアップされている化学実験の動画を主に紹介していきます。
単に動画を見ただけではよく分からないかもしれないので、動画中の実験操作・反応の解説も行います。
まあ、本当は実験してみるのが一番いいんですけどね。
※実際の実験ではもっと、ダントツによく理解できるから不思議!
映像・音だけではなくて、臭い、重さ、質感、温かさと、動画では体験できないたくさんの要素が現実実験には秘められている!
でも多くの実験を行うのは費用・機会・時間の関係上難しいので、やはりビデオ学習の効果は大きい。
化学ビデオ講座No.1 :アルミニウムと塩酸の反応
塩酸にアルミニウム箔を入れると激しく発泡した、という実験ビデオです。
音を立てながら大量の泡(H2)を生じていて、かなり激しい反応であると見て取れます。
途中で反応が加速(より激しく発泡)したのは、反応により生じた反応熱で反応系の温度が上がったからでしょうか。
(おおむね、反応系の温度が10度上がると反応速度は2~3倍になります。)
最後はアルミニウムが塩化アルミニウムとなり溶けてほとんどなくなり、反応が終わっていっています。
化学反応式:
2Al + 6HCl → 2AlCl3 + 3H2
アルミニウムはイオン化傾向が水素より大きい金属であり、塩酸等の酸化力のない酸とも反応します。
イオン化傾向が水素より大きいので、Alが塩化水素が電離して生じたH+に電子を渡してAl3+とH2になります。
生じた無色の塩化アルミニウムAlCl3は水溶性なので、塩酸に溶けて水溶液になっています。
マグネシウムや亜鉛でも同様に反応します。
しかしマグネシウムはアルミニウムよりイオン化傾向がさらに大きいので、もっと激しく反応すると予想されます。
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