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一般向け/高校生向け楽しい化け学
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「白衣の汚れ方には特徴的な分布がある。

ポケットの辺りにベルト状に分布するのだ―――」


筆者の高校の頃の化学の先生はそう言っていた。

初めは「ホンマかいな~」と思っていたが、筆者が実際に白衣を着て実験するようになると、本当にそうだった。


次の写真を見てもらいたい。筆者が実際に使っている白衣である。



筆者の白衣(2010/9/5撮影)


写真ではパッと見綺麗に見えるかもしれないが、実際は結構カラフルになってしまっている。

しかしその汚れが集中しているのは腰から股上、すなわちポケットの高さに横並びである。

もう少しわかりやすく見ると、一目瞭然。

下の写真で赤に囲っているところが他の箇所と比べてやたらと汚れが多い。



白衣のポケット周辺


なぜだろうか。何か理由があるはずである。

読者の皆様、一度椅子から立って、腰の辺りを見てください。

机のフチと自分のズボンのポケットが同じくらいの高さではないだろうか。

実はどうやらこれが原因らしいのだ。

こぼれたりして実験台のフチには薬品が付いていることが多い。

ここにちょうど同じ高さの白衣のポケットの辺りがすれて、白衣に薬品が付着する。

しかも筆者のようなずぼらな人間は、手が濡れたら「パンパンッ」っとフトモモの側面で拭いたりするのをご存知だろう。

いわゆる「服で拭かない!!」って怒られる行為である。

それを薬品が付いた手(洗ったつもりでも少しは付いている)で同じようにするから、さらにそのポケット辺りに汚れが付くのだ。

ということで、二重の効果でポケット辺りにベルト状に汚れが付くのだ。


ちなみに不揮発性の硫酸は、もともと希硫酸でも水だけ蒸発し濃硫酸になり実験台のフチに残り続けるという厄介な性質がある。

そのため白衣のポケットが焦げて穴が開くという現象が起こるらしい。(高校の先生談)

また、厄介なことに有機化合物などの薬品が付いたとき、大抵そのときは無色透明でわからない。

二三日たって見てみると大量のカラフルな点々が・・・!っということがある。

これは付着した有機物が空気中の酸素により酸化されて重合し色が付くかららしい。

皆さんも白衣を汚したくなかったら実験台にはあまりもたれかからず、かつ手で服で拭かないようにしましょう!


○ 白衣豆知識


ちなみに・・・・

普通はあまり日常生活でなじみがない白衣は、実はいろいろ機能的なデザインになっている。

例えば襟。

本来白衣は体を薬品から守るために出来ているので、普通に考えたら首までキッチリした服であるほうが良い。

しかし皆さんのイメージや写真のように、胸まで開いている。

実はこれ、白衣に付いた薬品に引火して燃え出したとき、襟をつかんで開いてずりおろせばボタンを外さずに脱げるようになっているためなのだ。

また、おそらく写真の白衣にはイメージと違う箇所があると思う。

例えば袖口。

なんだか絞りになっていてダサイ。

しかしこれはとても重要な構造なのだ。

お医者さんの白衣には絞りは付いていないが、化学者には必須。

もし袖口が絞られていなくて開いていると、そこにフラスコ等が引っかかってこかしてしまうことがある。

要するにオバちゃんが台所仕事するときに袖にゴムをつけてくくるのと一緒なのだ。

このように、白衣は化学実験しには必須のアイテムなのだ!



◎ 参考・出典


・ 筆者の高校の化学の先生のお話

・ 筆者の大学の化学の先生のお話
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今日は大学の図書館で面白い本を借りた。

『分子を超えて―錯体の世界』, 錯体化学研究会編, 化学同人(1991) という本。

オススメです。ユーモアたっぷりの本で「犬にタコを食わすな」とか「ゴキブリの愛のささやき」とか謎めいたフレーズ盛りだくさん。

超分子化学の本を探していて借りたんだけど、図解が多くてわかりやすい。

しかし思いもよらぬ面白い本である。

たとえばこの表題の「太陽は99.97%神様である」を引用してみよう。

"地球表面に入ってくるエネルギーをみますと、太陽放射として入ってくるものと、地球内部のエネルギーが岩石を伝わってくる地熱や火山、温泉といったかたちで地上に出てくるものとに分けられます。しかし後者はせいぜい0.03%で、あとの99.97%は太陽放射として入ってきます。"

だから99.97%太陽は神様なのだ、と。

例えば我々はお米を食べますが、そのお米は太陽の光のエネルギーで光合成して成長しているので、結局太陽のエネルギーを食べていることになる。

植物が光合成をするための葉緑素、クロロフィルの部分構造

Jmolで描画, クリックで拡大。


燃料に使う石油―化石燃料、昔の生物の死骸―も、要するに太陽からエネルギーを蓄えたものである。

生物はエネルギーなくしては生きられない。

そのエネルギー元が99.97%太陽から来るのでは、太陽が99.97%神様といわざるを得ない!!

しかし0.03%は神様じゃないんだから、結局太陽は神様じゃないのか・・・ってね。


ちなみに、この場合は科学的に"不可欠!"という意味で太陽を"神"と喩えていますが、いわゆる「全知全能の神」はどうでしょうか。

実は1987年、全知全能(=無矛盾な存在)の神は存在しないと数学的に証明されたらしいです。

筆者は数学が苦手なのであまり知らないが、「ゲーテルの不完全性定理」=「自分自身が無矛盾であることを証明できない」(!??)っていう定理があって、1987年にグレゴリー・チャイティンとう人がこれが数学全般に働くと証明し、結論が「神は存在しない」らしいです。

なんだかよくわからないけど、神はいないということにホッとしてみたり夢を壊されたりするような内容ですが、別に筆者は宗教批判に興味はないので「ふ~ん」でお終いにします。

でも内容的には興味を引く面白い数学の命題ですよね。


◎ 参考


実は新しいPCを購入して今日届きました。

元々使ってたのが結構寿命が来たのと、HPを始めるにあたってウィルス対策を強化する必要が出てきたので思い切って購入。

Corei7のクアッドコア!

CPUの速度の速いこと速いこと!

ちなみに"クアッド"とは"4つの"ということを表していて、クアッドコアとは4つのコアということです。

人間にたとえると脳みそが4つあるようなことで、要するにスゴイってことです。


ちなみにパソコンのコアが二つのときは"デュアルコア"といいます。

"デュアル"が"2つの"という意味で、任天堂DSの"DS"は"デュアル・スクリーン"(2つの画面)の略です。

もっとすごいパソコンにはヘキサコア;コアが6つの物などもあります。


ではこの数字に対応する言葉について、化け学の話をしてみましょう。

パソコンでコアの数を数えるのは英語ですが、化学で1,2,3...と数えるときはギリシャ語を使います。

高校の有機化学の分野でも習うので、1~10は覚えましょう。

数字ギリシャ語
1モノ
2
3トリ
4テトラ
5ペンタ
6ヘキサ
7ヘプタ
8オクタ
9ノナ
10デカ


白黒の一色はモノクロ、八本足のタコはオクトパスというし意外と身の回りの言葉にも入っています。

化学での使用法になじみのあるのは、炭化水素のアルカンの5以上の炭素数からつけられた名前でしょう。

炭素数アルカンの名前
1メタン
2エタン
3プロパン
4ブタン
5ペンタ
6ヘキサ
7ヘプタ
8オクタ
9ノナ
10デカ


また置換体で、その置換されている数のを表すのにも使います。

たとえばメタンで水素1つが塩素に置き換わった物はモノクロロメタン。

2つではジクロロメタン、3つではトリクロロメタン、4つではテトラクロロメタン、というような感じです。

このようなギリシャ語数詞は、とりあえず10までは覚えましょう。

ちなみに筆者は9999まで覚えているので、例えばC9999H2000の化学式のアルカンの名前は"ノナノナコンタノナクタノナリアン"と答えれたりします。


PETボトルの口が2種類あるのを知っていますか?

下の写真のように、透明な口と、白い口・・・



口の色が違うPETボトル


言われれば「あーあるなぁ」と思ったでしょうか。

しかし、この色の違いは何なんでしょうか。

実はこれは耐熱性を表しているのです。

口が透明なのは非耐熱性白いのが耐熱性です。

透明なのは50℃、白いのは85℃くらいまで耐えられるらしいです。

なので透明な口のPETボトルに熱いお茶を注ぐとクニャクニャと曲がって縮んで使い物にならなくなります。

例えば実際に、或る透明な口のペットボトルに熱いお茶を注ぐとこのように明らかに縮んでしまいました。



上;元々 下;熱いお茶を注いだ物


また、熱湯で煮て力をかけると軟化し容易に変形してしまいました。



加熱し力をかけたPETボトル


こんな様になるので、透明の口のペットボトルはホット飲料に向かないわけです。

一方口の白いものは熱いお茶でもちょっと冷ませば大丈夫です。

なので熱いお茶をPETボトルに入れて持って行きたいときは、口の白いヤツにしてちょっと冷ましてから入れましょう。


しかしなぜ同じPETボトルには耐熱性の違いがあるのでしょうか。

まずPETボトルとは何かということから考えます。

その名のとおりPETで作られたボトルなのですが、PETとはポリエチレンテレフタラートというプラスチックの一種です。

テレフタル酸エチレングリコールエステル結合で繋がったポリエステルで、下のような構造をしています。



ポリエチレンテレフタラートの構造


これは分子が長く繋がった高分子と呼ばれる化合物です。

多くの高分子は細長くてこんがらがりやすいため綺麗な結晶になりにくいという性質があります。

また高分子は結晶になっている割合(結晶化度)が高いほど熱に強くなるという性質があります。

何故なら、高分子鎖はキッチリ並ぶほど分子鎖と分子鎖の接触面積が大きくなり分子間力が大きく働くため、それを引き離す(軟化・融解させる)ためにはより高温が必要になるからです。



結晶化度小。
こんがらがっていて熱に弱い。




結晶化度大。
きっちり並んでいて熱に強い。


PETは普通に作れば結晶化度があまり高くならないため、普通のPETボトル(口が透明)は熱に弱いのです。

しかし口が白色のものは、PETの結晶化度を上げるために特別な工程(プレスや加熱?)を施しているため、熱に強いということらしい。



おまけ:PETボトルの耐久性


おまけでPETボトルについてもう少し豆知識を。

じつはPETボトルには現在JISで規格に取り決めがなく、形や耐久性は法律で決められていません。

しかし大体の耐久性は以下のような感じらしいです。


・ 圧力:4気圧が限界。

・ 酸:酢酸くらいの酸性度が限界。

・ アルコールで劣化する。20%エタノールが限界。


ということです。耐熱性については上の通り。

PETボトルは意外と弱い。

しかしPETボトルが登場する前の時代の容器からすれば劇的に強い材質なのです。

また、"炭酸用"や"ホット用"など色々種類があるので耐久性は色々です。

さらにちなみに、PETボトルは化学者の絶え間ない努力によって作られた尊いもの(?)です。

なぜかと言うのは『ペットボトルは作れない!?』を見てみてください。



◎ 参考




普段何気なく使っているセッケンや洗剤、シャンプーやリンス。

これらはなぜ汚れを落とせるのでしょうか。

まず基本的なセッケンの原理を考えてみましょう。

次にそれを応用したリンスへ。

そしてリンスインシャンプーは高度な技術を応用した化学力の結晶なのであった!



○ セッケンの原理


セッケン高級脂肪酸の塩です。

具体的にはステアリン酸ナトリウムラウリン酸ナトリウム等があります。

これらは長いアルキル基と電離したカルボキシル基(-COO-)を持っています。


ラウリン酸ナトリウムの構造
Jmolで描画


アルキル基は親油性疎水性)で油に溶ける性質があり、一方電離したカルボキシル基は親水性で水に溶ける性質があります。

するとセッケン分子は水中で油汚れを下の図のように取り込み、水中に取り去ります。


セッケンの原理


そしてこの水を洗い流すことによって油汚れは綺麗に流し落とせるわけです。

またこの図のように界面活性剤分子が球のように集まっている状態のものをミセルといいます。

洗剤やシャンプーも基本的にはこの原理で汚れを落としています。

ただ、弱酸の塩のセッケンはアルカリ性なので、これで頭を洗うとバサバサになってしまいます。

なのでシャンプーはカルボキシル基ではなく硫酸モノエステルの塩(-OSO3-)やスルホン酸塩(-SO3-)にすることによってナトリウム塩を中性にしています。



○ リンスの原理


シャンプーの原理がわかったところで、次にリンスの原理を考えてみましょう。

実はリンスもとても似ている原理です。

"逆性セッケン"と言われる界面活性剤で、テトラアルキルアンモニウムイオンR1R4N+が入っています。


トリメチルステアリルアンモニウムクロリドの構造
Jmolで描画


アンモニウムイオンの形になっているので、Nは+に帯電しています。

よって、模式的に書くと下の図のようになります。



逆性セッケンの構造


+の部分は親水性で、長いアルキル基は親油性です。

すなわちセッケンとは+か-かだけが違うので、逆性セッケンと呼ばれています。

しかし、構造はシャンプーと似ていますが、まったく違う働きをしてくれます。

髪の毛を構成するたんぱく質はマイナスに帯電しています。

マイナスに帯電している部分にプラスに帯電しているリンス分子がくると、静電的に引き合ってくっつきます。

そのとき下の図のようにプラスの部分が髪の毛にくっつき、疎水性の長いアルキル基を外向きにします。



リンス分子の髪の毛への吸着


するとこの立っている棒のようなアルキル基の分髪の毛同士に隙間ができるため、髪の毛のゴワゴワを消してくれます。

またマイナスな髪の毛をプラスで打ち消してくれるため、静電気のバチバチも消してくれます。

このようにして、また配合された他成分の効果も合わさり、髪の毛をさらさら・ふわふわ・しっとりな感じにしてくれるのです。


ちなみに今説明した「リンス」はより正しくいうと「ヘアコンディショナー」のことです。

日本では今も「リンス」とも言うのですが、リンスとは元々酢のような酸のことで、アルカリ性のセッケンで頭を洗った後中和するための溶液のことでした。

今使っているリンスは上のように逆性セッケンや他の成分の油分で保湿や柔軟効果があるもので、本来の「リンス」とは別物なのです。



○ リンスインシャンプーの化学


ではリンスインシャンプーはどうだろうか。

シャンプーとリンスを混ぜただけのものだろうか。

シャンプー分子はマイナスのイオンで、リンス分子はプラスのイオンである。

すなわち、混ぜたらお互いが引き合ってくっついてしまい、シャンプーとしての機能もリンスとしての機能も失ってしまう

よって、上にあげたようなシャンプー分子とリンス分子は共存して効果を発揮することはできないのである。

しかしリンスインシャンプーは売っているわけで、ちゃんとシャンプーの洗浄力もリンスの柔軟力も発揮している。

ではリンスインシャンプーはどんな仕掛けなのだろうか。

実はリンスの分子を陽イオン高分子にしているのである。

ところどころに上のリンスのようなアンモニウムイオンなどのプラスの部分を持っている高分子で、そこにシャンプー分子が引っ付いている。



リンスの高分子とシャンプー分子


高分子は大きいので水に溶けるのが遅い。

一方シャンプー分子は小さいのですぐにリンス高分子から離れて水中へ散っていく。

はじめに水中へ出て行ったシャンプー分子が髪の毛の汚れをセッケンと同様に水中へさらっていく。


シャンプー分子の洗浄効果


次にリンス高分子が髪の毛へやってきて、普通のリンスと同様にマイナスに帯電している髪の毛と引っ付く。

また、このときにはもうシャンプー分子は洗い流され、いなくなっている。


リンスの高分子の定着


すると「シャンプー → リンス」の順で髪を洗ったことになる!

高分子を使うことによるこの時間差攻撃を考えた化学者は非常にすばらしい発想の持ち主だと思う。

このようにして、リンスインシャンプーは現代の化学力を応用した機能性分子によって力を発揮している。


ということで、横着してシャンプーとリンスを混ぜて一回で頭を洗っている人は、それは効果がないことがわかったでしょう。

これからは横着しないでちゃんとシャンプーしてからリンスするか、もしくはこのすばらしいリンスインシャンプーを使いましょう。



◎ 参考・出典



  
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