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一般向け/高校生向け楽しい化け学
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今週は散々で、疲労してしまっている筆者。

二日酔いになったり、クレーム処理まがいの仕事をやるハメになったり・・・


ところで、先ほど中学校の教科書を読んでいたらこんな分子が出てきたので紹介。

環境や化学工業に密接に関係する分子です。


今日の分子No.68 :硫化水素 H2S


Jmolで描画


IUPAC名:hydrogen sulfide または スルファン。

周期表で硫黄Sは酸素Oの真下の同族元素なので、H2S分子の形は水H2Oと同じく折れ線。

強い腐卵臭を持つ無色の気体。

実際、腐った卵からは硫化水素が出ているらしい。

卵のたんぱく質は硫黄を多く含み、細菌がそれを分解すると硫化水素を生じる。

水に少し溶け、水溶液は酸性を示す。

硫化水素水溶液のことをしばしば「硫化水素水」という。


あと、味は甘いらしい。

今『Organic Compound Bible』で読むまで筆者も知らなかった。

これを硫化水素の水溶液を舐めたいとは思わない。

硫化水素は有毒である。

また、硫化水素は空気より重い気体で、低いところに滞留する。

温泉地などで硫化水素が発生している場所があるが、窪みにたまりやすく、ここへ転落して中毒死するという事件もしばしば報じられる。

また一時、「硫化水素ガス自殺」なる自殺が流行し、社会問題になった。

硫化水素は有毒で危険であることはもとより、可燃性で火を付けると爆発する恐れがある。

だから硫化水素を発生させられると一帯を立ち入り禁止、火気厳禁にせねばならず、非常に危険かつ迷惑なのである。



硫化水素は腐敗で生じたり、天然ガスや火山ガス、温泉に含まれる。

また人間や動物の排泄物からも生じる。

下水等から生じて悪臭問題・環境問題になったりもする。


工業的には石油からガソリンなどを作る際の副生生物で回収される。

原油には硫黄や窒素や酸素を含む物質も含まれているが、ここから炭化水素だけを(化学変換により)取り出したい。

だから「水素化処理」という処理が行われる。

例えば軽質油はゼオライトに担持させたCo-Mo触媒を用いて水素加圧下300~400℃で処理する。

するとS、N、Oを含む有機化合物は還元され炭化水素となり、それぞれの元素はH2S、NH3、H2Oになる。

このうち硫化水素を分離し、多くの場合は酸化されて単体の硫黄Sにされて出荷される。

ちなみにこのとき使われる水素は石油の改質工程(リフォーミング)で副生するものであり、1つの工場内で余すところなくうまく物質が使われている。
(∴ゴミが少なくかつ経済的)



原油からガソリンなどを作る時の簡略化工程
水素がうまく回されている。


※ 反応については『石油化学~水素化処理反応』


一方、中学の教科書では硫化鉄に塩化水素を加えた場合に生じると習う。(希硫酸でもOK)

FeS + 2HCl → FeCl2 + H2S


高校でも硫化水素は重要な物質である。

硫化水素には還元性がある。重要

H2S → S + 2H+ + 2e-

また、硫化物イオンは重金属イオンと出会うと不溶性の硫化物塩を生じるため、硫化水素水溶液を金属イオンの水溶液に加えることで金属元素の分析ができる。

ある種の硫化物はpHによって溶けたり沈殿したりすることも重要。

酸性でも沈殿Ag2S、PbS、CuS、CdS、SnS、SnS2、HgS 等
中性または塩基性で沈殿FeS、ZnS、NiS、MnS 等



なぜFeS等、酸性の時に溶けることがあるかと言うと、

溶解平衡;

FeS ⇔ Fe2+ + S2-

と同時に酸性条件では化学平衡

S2- + H+ ⇔ HS-

HS- + H+ ⇔ H2S

も成立しS2-が消費されるので、溶解平衡が右側(溶解側)に動くからである。


◎ 参考


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昨日のニュートリノのかのニュース(『光速超えるニュートリノ 「タイムマシン可能に」 専門家ら驚き「検証を」』)にはただ驚くばかりの筆者です。

とりあえず色んな研究機関に検証してもらわないとどうしようもないですね。

筆者は化け学専攻なわけですが、素粒子物理も興味があるので(と言っても大衆向けの科学書籍で読んで満足くらいの理解度ですが。。。)、今回の発見は非常にテンションが上がりました。

ニュートリノ・・・筆者は「素粒子物理にも興味がある」と言うよりも、「原子」「分子」「素粒子」・・・っと小さい粒々が好きなだけの気もしますが(笑)


さて昨日バイト先に置いてあったアルコール消毒ジェルの成分表示を見るとこんな分子が入っていたのでちょっと紹介。

最近グリコールネタが多いですな。



今日の分子No.67 :1,3-ブチレングリコール CH3CH(OH)CH2CH2OH


ChemSketchで作図、Jmolで描画


系統名;1,3-ブタンジオール。

2価のアルコールであり、1,3-グリコールの一種。
(グリコールについてはこちらを参照:『今日の分子No.64 :プロピレングリコール』

無色透明の水溶性液体。

毒性は低く、皮膚に対しても刺激性は低いという。

保湿剤・溶媒として用いられ、多くの化粧品等に入っている。

「さらっとした保湿剤」であり、たとえば化粧水を作る際に配合されるらしい。

例えばこんな風に手作り化粧品の基材として売っているようです。

手作り化粧品用基材 1.3ブチレングリコール100ml

1,3-ブチレングリコール(1,3-BG) 500ml

他にも合成化学的には、他のグリコール類と同じくポリエステルの原料として用いられる。


1,3-ブタンジオールは工業的にはアセトアルデヒドから作られる。

具体的にはアセトアルデヒドCH3CHO二分子を水酸化ナトリウム塩基性条件下で縮合させ(アルドール縮合)、生じたアセトアルドールCH3CH(OH)CH2CHOをニッケル触媒下水素で還元して合成されます。



1,3-ブチレングリコールの工業的製法


◎ 参考


前回記事で油脂について紹介しました。

今回はそれに関連して、油脂の親戚の「蝋」を紹介しましょう。


今日の分子No.66 :パルミチン酸ミリシル CH3(CH2)14COOCH2(CH2)28CH3


ChemSketchで作成、Jmolで描画


脂肪酸であるパルミチン酸C15H31COOHと、高級一価アルコールであるトリアコンタノールCH3(CH2)28CH2OHとのエステル。
(炭化水素基CH3(CH2)28CH2-をミリシル基と言います。)

ミツバチの巣を形作る蜜蝋の主成分。

代表的な蝋である。

蝋状の固体。
(「蝋状」というか、蝋そのものです。笑)

床に塗るワックスとして、蝋燭として、クレヨンや絵具などの画材の材料として、幅広く用いられます。


油脂は高級脂肪酸とグリセリン(3価アルコール)であるエステルでした。

一方、蝋は高級脂肪酸と高級一価アルコールのエステルです。
(中にはトリグリセリドであるが慣用的に蝋とよばれるものもあるようです。また、2価アルコールのエステルのものもあるようです。「蝋」の定義は曖昧であるとのこと。)

果実に例えると、油脂が房が3つのバナナ型分子なのに対し、蝋は房1個ヘタ1個のトウガラシみたいな形の分子です。

また、"ヘタ"は油脂はグリセリンですが、蝋は色々な種類の高級アルコールであるという違いがあります。



油脂(バナナ型分子)と蝋(トウガラシ型分子)


具体例として、蝋には上記のようなパルミチン酸ミリシル等があります。

蝋は可燃性で、古来よりロウソクに使われたりしています。


余談ですが、最近のロウソクは「燭」ではありません。

あの白い蝋っぽいのは蝋(高級アルコールの脂肪酸エステル)ではなく、高級パラフィン(高級アルカン)です。

今やミツバチの巣から取るより石油から作る方が楽になってしまったようです。


◎ 参考


前回のプロピレングリコールに関連してエチレングリコールを紹介します。

エチレングリコールは有毒なのですが、中毒になった時の対処法が面白いです。


今日の分子No.65 :エチレングリコール HOCH2CH2OH


sMoleBuilderで描画


IUPAC系統名;1,2-エタンジオール。

二価アルコールであり、最も単純な1,2-グリコール。

粘稠な無色無臭の液体。

舐めると甘いらしいが、毒性が高い。

引火性の有機溶媒であり、第四類危険物(引火性液体)として取り扱いが規制されている。

不凍液に用いられたり、ポリエステル(PET、PEN(ポリエチレンナフタレート)等)の原料として使われる。


☆ PETの合成

エチレングリコールとテレフタル酸の脱水縮合重合により合成されている。


PETの合成



エチレングリコールは石油化学製品であり、工業的には次のように合成される。

1. 石油(ナフサ)のクラッキング(熱分解)でエチレンを合成する。

2. エチレンを銀担持アルミナ触媒下気相酸化により空気酸化して酸化エチレン(エチレンオキシド)を合成する。

3. エチレンオキシドを水と反応させて加水分解してエチレングリコールを得る。



エチレングリコールの工業的製法



不凍液の誤飲などでエチレングリコール中毒になったとき、エタノールを中毒量ギリギリまで服用させるというユニークな方法が取られることがあるらしい。

これは、エチレングリコールは代謝されて初めて毒性を示すので、毒性が低めのエタノールを代わりに代謝させることでエチレングリコールの代謝を抑制し、エチレングリコールの代謝産物が危険な量まで体に蓄積されないうちに排泄させようという作戦であるらしい。

だからメタノール中毒のときも同じようにエタノールを大量摂取するという方法が取られるという。

ちなみに有毒であるエチレングリコールやメタノールはお酒のアルコール度数を高いようにごまかすため、過去故意に混入された事件があるらしい。


◎ 参考



さっき部屋に転がってたユンケル(栄養ドリンク)の成分表示を見ると、添加物としてプロピレングリコール(CH3CH(OH)CH2OH)が入っていました。

高校化学では2価アルコールの「エチレングリコール」が出てきますが、グリコールとはなんぞやということも合わせて紹介します。


今日の分子No.64 :プロピレングリコール CH3CH(OH)CH2OH


sMoleBuilderで描画


別名:メチルエチレングリコール、1,2-プロパンジオール。

プロパンに2つヒドロキシ基(-OH)が置換した二価アルコール。

1,2-グリコール(後述)の一種である。

無色無臭、吸湿性の粘稠な水溶性液体。

引火性がある有機溶媒である。

低用量では人体には比較的低毒性であるが、高濃度だと目に入ると発赤等を起こし、さらに長期間暴露すると皮膚に悪い。


工業的にはプロピレンを酸化し酸化プロピレン(プロピレンオキサイド)を作り、それを加水分解することで製造される。



プロピレングリコールの工業的製法



毒性が比較的低く、さらに親水性かつ新油性なので食品用の乳化剤として用いられる。

すなわち、水に加えると本来水に溶けない有機物を溶かす(分散させる)ことができる。

ユンケルに添加されている理由はこのためではないかと思います。


また不凍液としても用いられる。

エチレングリコールも不凍液として用いられるが有毒なので使いづらい。

一方プロピレングリコールやグリセリンは毒性が低い/無いので代用されたりしている。


他にも、プラスチックの原料として使われる。

※ 例えば、2価アルコールと2価カルボン酸を反応させるとポリエステルができる。
 エチレングリコールとテレフタル酸からポリエチレンテレフタレート(PET)ができる。



<<グリコールとは?>>

グリコールとは、脂肪族の炭化水素鎖に2つのヒドロキシ基が置換した有機化合物の総称である。

要するに二価アルコールのことである。

ただし、1つの炭素に2つのヒドロキシ基が置換している化合物はグリコールとは言わない。
※ 1つの炭素に2つの-OHを持つ化合物、例えばCH2(OH)2等はカルボニル化合物を水に溶かした時に生じる化合物(水和物)で、普通純粋なそれを分離することは難しい。

隣り合った炭素に-OH基が置換しているグリコールを1,2-グリコール、1つ飛ばしで置換しているものを1,3-グリコール、等と言う。


<1,2-グリコールの例>


エチレングリコール (1,2-エタンジオール) sMoleBuilderで描画



プロピレングリコール (1,2-プロパンジオール) sMoleBuilderで描画



<1,3-グリコールの例>


トリメチレングリコール (1,3-プロパンジオール) sMoleBuilderで描画



○ 参考;
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