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一般向け/高校生向け楽しい化け学
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風邪をひきました。

しかしこうやってパソコンに向かっていられるのも、風邪薬の解熱鎮痛剤のおかげ。

今日はさっき飲んだお薬分子を紹介します。


今日の分子No.73 :イブプロフェン C6H4(C4H9)CH(CH3)COOH


ChemSketchで作図、Jmolで描画


非ステロイド性の消炎、鎮静、解熱剤。

今風邪薬としてよく使われている解熱鎮痛剤である。

代表的な解熱鎮痛剤としてアスピリン(→『今日の分子No.57 :アセチルサリチル酸』)があるが、イブプロフェンはアスピリンの16~32倍の作用があるらしい。

アスピリンやインドメタシン、イブプロフェン等の非ステロイド系抗炎剤は、アラキドン酸からプロスタグランジンを生成する段階の酵素シクロオキシゲナーゼを阻害することにより作用を発現する。


◎ 合成法

イブプロフェンは半世紀以上前から合成されているが、最近(と言っても20年前だが)その合成法が大きく改善された化合物である。

1960年にイギリスのBoots社が開発した「Boots社合成法」は以下に示すように六段階反応で副生物が多く、原子利用効率はたった40%だった。(すなわち原料原子の60%が副生物として捨てられていたということである。)



Boots社合成法によるイブプロフェン合成反応


一方、1991年にBHC社が開発した「BHC法」によるイブプロフェン合成反応は、上手に触媒を使うことにより反応段階を3段階に減らし、原子利用効率を77%にまで上げている。



BHC法によるイブプロフェン合成反応


しかもHF、Raneyニッケル触媒、Pd触媒は回収され、再利用される。
(※ Raneyニッケル;スポンジ状のNi。水素化触媒。)

このようにして製造時間の短縮化、製造コストの低減化を達成できた。

今は触媒を使って少数段階で合成し、できるだけゴミを出さない環境配慮とコスト削減の反応が求められている。

BHC法はその良い例である。


合成できれば何でもいい、と言うわけではない。

原子利用効率の向上、触媒反応を利用した少数段階、危険な試薬を用いないプロセス、等を目指す合成化学を「グリーンケミストリー」と言う。

また既存の反応でもこの様に環境調和型の反応にすることを「グリーン化」と言い、例えば「BHC法でイブプロフェン合成はグリーン化ができた」等と言う。

環境環境と言うが、結局それによってコスト削減もできるため、新たな合成法の開発と言うものも合成化学としては重要なのである。


◎ 参考


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一昨日21日、オウム真理教の裁判が事実上終結しました。

戦後日本で起こった最悪のテロ、地下鉄サリン事件。

これにより「サリン」という本来マニアックであるはずの神経毒物質が有名になってしまった。

我らの化学が悪用された、悲しい事件である。

筆者はこのサリンと言う化合物を通して、「知識を持つ」とは何かを考えてみたい。

また、サリンと殺虫剤(農薬)の共通点についても触れてみます。



今日の分子 No.72 :サリン CH3P(=O)FOCH(CH3)2


Jmolで描画


IUPAC正式名:2-(Fluoro-methylphosphoryl)oxypropane

メチルホスホン酸フッ化物(リン酸の2つのヒドロキシ基-OHがフルオロ基-Fとメチル基-CH3に変わったもの)と2-プロパノールとのエステルと言える。
※ ホスホン酸;HP(=O)(OH)2

無色無臭の液体。

極めて強い殺傷性の神経毒で、これを吸入すると神経に障害をきたし呼吸困難や脳や目などに神経系の重い後遺症を残し、死に至らしめる。

日本では1994年の松本サリン事件、1995年の地下鉄サリン事件で使用された。


第二次大戦中ドイツで開発された有機リン系化合物である。

本来は農薬(後述)の開発で発見された物質である。

開発者たちの名前の頭文字から「サリン」と呼ばれていると言う。

「ソマン」、「タブン」という類似構造を持つ姉妹品が存在し、サリンとこれらは化学兵器として用いられている。


サリンを合成する原料は全て(規制はされているものの)市販されていて、かの組織はそれらを購入し合成できたのだという。

合成法をここに書くことはできない。

しかし市販の原料という縛りでサリンを合成したのは合成化学的にはすごい。

また、もし一般人が同じ方法で真似したとしてもほぼ間違いなく失敗して製造者が死ぬ結末になるであろうこの困難な合成をやってのけた。

かなり化学の知識に長けた者が合成設計したのだとわかる。

実際、東大卒や医者など、組織には日本最高クラスの有識者が所属していた。



学問をやって知識を付けることは、その分だけ危険な人間になることである。

と筆者は考えている。
(筆者の先生も同じようなことを言っていた。)

有識者はその知識を悪用することで他者を危険にさらすことができる。

筆者はサリンの合成法を大学の講義で習った。

たった7段階の反応で合成ができる。
(もし真似しても己の死が待っているだけだが。)

ニトログリセリン等の爆薬の合成法も知っている。

「ここに電気陰性度の高い官能基を付けたら良いだろう」等、分子設計の知識もいくらかはある。

化学の知識を付けた分、確実に潜在的に危険な人物になっている。

もし学問を進め知識を持ったなら、自分のその力に対して責任を持たなければならないと思う。


学問には二面性がある。

人を生かすも殺すも使い方次第。

化学で言うなら例えばニトログリセリンの例がある。

これは第一次大戦で使用され数え切れぬほどの人を殺した殺人化合物である。

しかし一方で、ニトログリセリンは血管拡張剤でもあり狭心症患者にとっては命の化合物である。

さて、ニトログリセリンは悪の化合物か、正義の化合物か。

どっちでもないと思う。

どう使うかは人間次第である。



さて、化学の話をしましょう。

サリンは農薬として使われる殺虫剤分子ととても構造が似ています。

実はサリンは最初から化学兵器を作るために開発されたのではなく、農薬開発の過程で生まれました。

サリンも元々は人を幸せにするための技術の1パーツだったのです。

結果、農薬研究は神経毒研究を発展させ、神経毒研究は農薬研究を発展させたのですが。



サリン、Malathion(農薬;殺虫剤)、Malathionの酸化体(猛毒)


どれも同じようなリン酸類似の有機リン系化合物である。

サリンも上の農薬Malathionも、神経伝達物質のアセチルコリンをコントロールするコリンエステラーゼというたんぱく質にくっ付いて阻害します。

結果神経系が正常に作動しなくなり、死に至らしめます。

しかしなぜサリンは人間を殺す物質であるがMalathionは人体に毒性が低くて虫だけを殺す殺虫剤であるのだろうか?

両者には決定的な違いがある。

サリンはP=OであるがMalathionはP=Sであるところである。

一方、P=OであるMalathionの酸化体はP=SがP=Oに変わっただけで猛毒である。

すなわちP=Oは人体に猛毒、P=Sは虫にだけ効く、と言うことになる。

実は正確に言うと、虫の体内ではMalathionは酸化態になりコリンエステラーゼにくっ付いて虫を殺しています。

このことについては次回の記事で解説しましょう。

『農薬の殺虫機構とサリン』



今回は筆者の考え方を長々と書いてしまいました。

しかし、これは大切なことだと思うのです。



◎ 参考




さて、今日は憎き塩化水素を紹介します。

先週塩酸の蒸気を吸ってしまって大ダメージを喰らわされた筆者です。

今日の実験で筆者の隣で濃塩酸使ってるヤツがいて、あの塩酸臭がしたとき思わず過剰反応してしまいました。

塩酸、塩化水素は危険な試薬です。



今日の分子No.71 :塩化水素 HCl


塩化水素。WinMOPACで計算・描画


無色で刺激臭のある気体。

腐食性があり有毒。

工業的に重要な物質。

極めて水溶性の大きな気体であり、その水溶液は「塩酸」と呼ばれる。


○ 塩化水素の水溶液

塩化水素は水溶液中で電離して水素イオンを生じる酸である。

このときほぼ完全電離し、極めて強い酸である。
(2011/11/13記事『濃塩酸(12mol/L)のpHは「-1」!!』も参照。)

HCl → H+ + Cl-


また、塩酸は揮発性の酸である。
(揮発して生じるのは塩化水素HCl)

一方硫酸は不揮発性の酸なので、食塩に硫酸を加えて加熱すると塩化水素が追い出される反応が起こる。

NaCl + H2SO4 → NaHSO4 + HCl


あくまで「HClという分子式を持つ物質」が「塩化水素」(hydrochloride)であり、「HClの水溶液」が「塩酸」(hydrochloric acid)である。

混同しないように。

しかし塩化水素のことを「塩酸ガス」と呼んだり、工業的には塩化水素は水に溶かして塩酸として出荷されることが多いので「塩化水素の製造 = 塩酸の製造」と同一視されたり、慣用的には塩化水素と塩酸があまり区別なく呼ばれていることも多い。


また、同様の構造を持つハロゲン化水素の水溶液(ハロゲン化水素酸)は

・フッ化水素HF : フッ化水素酸

・塩化水素HCl : 塩酸

・臭化水素HBr : 臭化水素酸

・ヨウ化水素HI : ヨウ化水素酸

である。
(HF→HIと周期が下がるほど酸性が強くなることも覚えておこう。これは周期が下がるほど原子半径が大きくなることによる。)

塩酸も本来は「塩化水素酸」(hydrochloric acid)と呼ばれるべきであるが、日本語では慣用的に塩酸と呼ばれる。

※ 元素名に「酸」を付けて名付けられた物質は、基本的にオキソ酸(酸化物の酸)である。
例:ホウ酸B(OH)3、炭酸H2CO3、マンガン酸H2MnO4、等。


○ 塩化水素の反応

イオン化傾向が水素より大きな金属と反応し、様々な金属塩化物を生じる。

Zn + 2HCl → H2 + ZnCl2

また、塩基と反応しても塩化物を生じる。<<中和反応>>

NaOH + HCl → NaCl + H2O

特にアンモニアNH3とは気相でも(水がなくても)直接中和反応をし、塩化アンモニウムNH4Clの白煙を生じる。

NH3 + HCl → NH4Cl

アルカンやアルケンに対して付加反応をすることができる。

CH2=CH2 + HCl → CH3CH2Cl

塩化水素は反応性が高く、他にも様々な反応をする。


○ 塩化水素の工業的製法

塩化水素の工業的製法はいくつかあり、塩化水素を直接的に合成する方法(直接合成法;電解ソーダ法)と、副生する塩化水素を回収する方法(ルブラン-ソーダ法、副生塩酸)がある。

現在は副生塩酸が主流で、2000年度では2,493,604トン(35%換算)の内合成塩酸751,561トン、副生塩酸1,742,043トンであることから明らかである。

生じた塩化水素を水に吸収させ低濃度の塩酸とし、それを濃縮することで濃塩酸として出荷する。
(※ ガス吸収で濃塩酸を作ることはできない。なぜなら濃度20%ほどで急激に蒸気圧増大するからである。)


・ 直接合成法;電解ソーダ法

水素H2と塩素Cl2を反応させて塩化水素を直接合成する方法を(塩化水素の)直接合成法と言う。

H2(g) + Cl2(g) → 2HCl(g)

※ この反応では水素を10%程過剰にして行う。
1:1で完全に反応するが、そうすると爆発する危険性があるためである。
(水素:塩素=1:1の混合気体を「塩素爆鳴気」と言う。)

この水素と塩素は食塩水の電気分解(電解ソーダ法)によって供給する方法が多い。

2NaCl + 2H2O → 2NaOH + H2 + Cl2


・ ルブラン-ソーダ法(現在は使われていない)

古典的な炭酸ナトリウム製造法であるルブラン-ソーダ法では第一段階目で塩化水素が生じる。

1) 2NaCl + H2SO4 → Na2SO4 + 2HCl

2) Na2SO4 + 2C + CaCO3 → Na2CO3 + CaS + 2CO2

かつてはこの塩化水素を回収して塩酸を製造していた。

しかしルブラン-ソーダ法は今はアンモニアソーダ法(ソルベー法)もしくは塩安法に取って代わられていて、使われていない。


・ 副生塩酸

有機合成化学工業において、有機化合物に塩素を反応させて塩素化(塩素置換)するとHClが生じる。

これを捨てるのはモッタイナイので、分離回収して得る。

例えば塩化ビニルの製造(EDC法)では、塩化鉄(III)触媒下80℃でエチレンに塩素を反応させて1,2-ジクロロエタンとし、それを熱分解して塩化ビニルとするとき塩化水素が脱離する。

CH2=CH2 + Cl2 → CH2Cl-CH2Cl → CH2=CHCl + HCl

※ 最近はこの副生したHClをエチレンに酸化・付加反応させて再利用し、実質副生しないようにする方法(オキシ塩素化法)が用いられたりする。


他にも、ホスゲンCOCl2を使ったイソシアナート(ポリウレタンの材料)の合成時等にHClが副生する。

R(NH2)2 + 2COCl2 → R(NHCOCl)2 + 2HCl

R(NHCOCl)2 → R(NCO)2 + 2HCl

※ R = C6H3(CH3)

今はこの手の反応による副生塩酸が多いらしい。


◎ 参考



今日は実験でなかなか良いデータが取れてご機嫌な筆者であります。

測定点が綺麗に一直線・・・相関係数の二乗;R2=0.9989!


さて、前回は還元作用で体を酸化から守ってくれているビタミンCについて紹介しました。
『今日の分子No.69 :L-アスコルビン酸』

その中で、同じようにビタミンEも還元作用を示すと書きました。

ということで今回はビタミンEを紹介します。


今日の分子 No.70 α-トコフェロール C29H50O2


Jmolで描画


ビタミンEの一種。

ビタミンEは抗酸化作用、すなわち還元性を持つ。

ビタミンCも還元性を持つが、ビタミンCはヒドロキシ基をたくさん持ち水溶性、ビタミンEは長いアルキル基を持ち脂溶性であり体内で使い分けられている。
(ビタミンA、C、E等、還元作用を持つビタミンを「抗酸化ビタミン」と言います。)

ビタミンEにはベンゼン環に置換しているメチル基の位置と数でα、β、γ、δの4種類がある。

その中でもα-トコフェロールが一番強力な抗酸化作用を示す。

抗酸化作用の強さは α>β>γ>δ であると言う。


ビタミンEは脂溶性であり、主な役目は細胞膜の脂質(RH)が含酸素フリーラジカル(ROO・)に変換されることによる傷害から細胞膜を保護することである。

もしフリーラジカルを放っておくと大変なことになり、ラジカルの高い反応性(水素原子を引き抜いたりする;酸化反応)により細胞膜が破壊されたり、DNAを損傷したりして「老化」の原因になる。

そこでビタミンEは電子と水素を供与し、フリーラジカル(ROO・)を過酸化物(ROOH)に変換(還元)する。

過酸化物(ROOH)は次に酵素的に無害なアルコール(ROH)にされ、体は守られる。


ビタミンEの還元作用を示す部分は上の画像で言うと右下部分、ベンゼン環と二つの酸素がある部分である。

具体的な反応は次のようである。

まず予備知識としてヒドロキノンC6H4(OH)2が酸化されてp-ベンゾキノンC6H4O2になるという可逆的な酸化還元反応があることを確認します。
(高校化学では出てこない反応ですが、代表的な二価フェノールとしてヒドロキノンは習ったりします。)



ヒドロキノン ⇔ p-ベンゾキノン の酸化還元反応


次にビタミンE、α-トコフェロールの構造を見てみましょう。



α-トコフェロールの構造式;ヒドロキノン型の構造がある。(R:アルキル基を省略)


ヒドロキノンと同じような構造があることがお分かり頂けるであろう。

この部分が酸化されてp-ベンゾキノン型になることで、相手(フリーラジカル等)を還元するのである。



α-トコフェロールの還元作用。(R:アルキル基を省略)


この様にしてビタミンEは還元作用を示すのである。



◎ 参考



筆者は物を買って食べるときほぼ必ず「原材料名」を見ます。

別に「これは人工着色料!ダメだ!」とか思うために見ているのではなく、特に意味なく単にどんな物質が入っているのか知りたいからです。

今まさにカルビーのお菓子「Jagabee」を食べているのですが、原材料名に「酸化防止剤(V.C)」という表示を見つけました。

この表記は他の食品にもよく記されているため、目にしたことがあると思います。

「酸化防止剤(V.C)」とは何者なのか、ちょっと紹介しましょう。



今日の分子 No.69 L-アスコルビン酸 C6H8O6


Jmolで描画


いわゆる「ビタミンC」。

英語で綴ると「Vitamin C」なのでよく「V.C」と略記される。

ビタミンとは基本的に体内で合成できない物質であり、体内では補酵素(酵素を助ける物質)等の役割を持ち、適量摂取しなければ体調に問題をきたす物質である。

構造的には糖の誘導体で、生体内ではグルコースC6H12O6から合成される。


白から明るい黄色の結晶、もしくは粉末。

酸であり、酸っぱい味がする。

水溶性ビタミンであるため、過剰に摂取しても余分な量がすぐに排出され体に蓄積されないので多少過剰摂取しても安全。
(一方、脂溶性ビタミンであるビタミンA等は体内に蓄積されてしまうので、サプリメント等で過剰摂取すると危険である。)


この分子の注目すべき点は、「-C(OH)=C(OH)-」の「エンジオ-ル」と呼ばれる構造を持つことである。

普通二重結合を持つ炭素にヒドロキシ基が付いた「C=C-OH」の構造を持つ分子はアルデヒドまたはケトンにその化学平衡が偏るが、ビタミンCに関しては安定である。

この部分が還元性を持つため、ビタミンCは還元剤(酸化防止剤)として生物中で、食品添加物で用いられる。

だからよく「原材料名」の食品添加物で「酸化防止剤(V.C)」と書かれているのは、まさにこれである。

他にもペットボトルのお茶等の「原材料名」にも「ビタミンC」と書かれていることがあるが、それも酸化防止剤として添加されている。

たまにこれを美容健康のためや味付けのために添加されているのだと思っている人がいるが、実はそうではない。


具体的には次のように二電子失ってジケトンのデヒドロアスコルビン酸になる。



ビタミンCの還元作用


生体内で電子を渡す相手は酸素系のラジカル(活性酸素種)等で、DNA等を傷付けるこれらラジカル等を還元することで体を守る役割をする。

また、脂溶性還元剤であるビタミンEが酸化されて酸化物になってしまった時、それをビタミンCが還元して元の還元力のあるビタミンEに戻す、という働きもある。
(ビタミンE→ 『今日の分子No.70 :α-トコフェロール』も参照。)


生体内でのビタミンCの役割は他にもあり、例えばコラーゲン中のプロリン残基をヒドロキシル化する役割がある。

コラーゲンとはたんぱく質が三重らせん構造を巻いた生体の強固な構造材料物質である。

コラーゲンのたんぱく質中にあるヒドロキシル化プロリン残基のヒドロキシル基が水素結合することでコラーゲンのその強い三重らせんを構成している。

だから逆に言えばビタミンCによってコラーゲンのプロリン残基にヒドロキシ基が導入されなければコラーゲンはコラーゲンたりえない。

このようにしてビタミンCの欠乏により正常なコラーゲンが作れなくて起こる病気が壊血病である。

壊血病のことを「スコルビー」(英:scurvy)と言うらしい。

「壊血病(スコルビー)を防ぐ(否定の「ア」)酸 ⇒ アスコルビン酸」

という流れで命名されたとか。


ちなみに鋭い人は、ビタミンCのどこにもカルボキシル基等酸性の基が見当たらないと気づくかもしれない。

実は酸性の基はあって、「-C(OH)=C(OH)-CO-」の部分である。

下式のように電離して水素イオンを放出すると、生じた陰イオンはカルボニル基との共鳴により電子が非局在化されて安定化されるため、酸として働く。
(「陰イオンが共鳴で非局在化して安定化~~」;フェノールのヒドロキシ基が酸として働くのと同じ理由。)



ビタミンCの電離と陰イオンの共鳴




◎ 参考


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