一般向け/高校生向け楽しい化け学
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さあ今日はついにイソプレンゴムについて!!
しかも今日の1コマ目の高分子材料化学の授業がたまたまゴムの話で、個人的にはなかなかホット。
その授業の先生はかなり面白くて好きです。
今日も突如授業を受けている数十人の学生全員に市販の太目のゴムバンドを配ったかと思えば
先生「はい、力いっぱいゴムを伸ばして顔に当てる!」
っとおっしゃって、学生たちはみんなゴムを伸ばしては顔にくっつけるというシュールな光景になっていました。
先生「伸ばすとゴムは熱くなりましたね?これがGough-Joule効果です。」
っと。
こういう授業は「生きている」と感じられて楽しいです。
っと午前中は楽しんだ後、午後の実験はヘマをするという悲しさ。
分液漏斗にスターラーピース(攪拌子:磁力で回って攪拌できる器具)をボチャッと落としました。。。
しかも油断して手袋しないで濃硫酸扱ってたら指に付いたし・・・
っと、そんな筆者の日常生活。
と言うことで、今日はcis-1,4-ポリイソプレンと言う物質から化学Ⅱでも出てくる「合成ゴム」と「イソプレンゴム」の違いを主に紹介。
今日の分子 No.38 cis-1,4-ポリイソプレン [-CH2C(CH3)=CH-CH2-]n
Jmolで描画 ※ピンクの部分でこの構造を繰り返します。
イソプレンが1,4付加でシス型に重合した高分子。
「ポリイソプレン=イソプレンゴム=天然ゴム=ラテックス」
っと思っている人がいるが少々違う。
まず「天然ゴム」とは。
パラゴムノキという南国の木から採れる樹液を(狭義の)ラテックスという。
(広義のラテックスは、もっと一般に高分子が水中に分散した乳化液を指す。)
この樹液(ラテックス)にはcis-1,4-ポリイソプレンが含まれている。
このままではただの白いどろどろの樹液だが、硫黄を加えて乾燥させると輪ゴム等でお馴染みの茶色いゴムになる。
硫黄を加える(加硫と言う)理由は、ポリイソプレンの分子鎖同士が-S-S-結合や-S-S-S-結合などで架橋され強い弾性が現れるからである。
すなわち、「天然ゴム」とは原料の「ラテックス」に「加硫」と言う操作をして得られたゴムである、と言うことである。
天然ゴムは「NR」と略されることもある。
※ 「天然ゴム」は人工合成のゴムに対して天然ゴムとも言うので、必ずしもパラゴムノキから採れるcis-1,4-ポリイソプレンのゴムとは限りません。
社団法人日本ゴム協会HPによると、「天然ゴムといえばパラゴムをさし,他の植物から採取されるゴムを野生ゴムと呼んで区別しています。」で、パラゴムノキから作られるいわゆる天然ゴムを「パラゴム」と呼ぶらしいです。(2011/1/15加筆)
ちなみにラテックスから作られたゴム手袋などの製品を「ラテックス製品」と言うが、これにはパラゴムノキの樹液ラテックスに入っているたんぱく質などが混ざっているためアレルギーを起こす人もいる。
次に「イソプレンゴム」とは。
イソプレンという分子を"人の手によって"付加重合し得られたポリイソプレンを加硫し作ったゴムをイソプレンゴム(合成ゴム)と言う。
要するに天然ゴムをまねて人工的に合成したゴムである。
しかし天然ゴムはほぼ100%シス体のポリイソプレンであるが、人工的に合成するといくらかトランス体が混ざってしまう。
イソプレンゴムがゴム弾性を示すにはシス体でなければならないため(分子が曲がっているから)、ゴム弾性としては天然ゴムのほうがいいと言われたりする。
が、天然ゴムはラテックス由来のたんぱく質やゴミを含むが、人工合成するとそれがないなど、一長一短両者には少し違いがある。
人工のイソプレンゴムは「IR」という略号も使われる。
まとめると、「イソプレンゴム」は「イソプレン」を付加重合して人工的に合成した「合成ゴム」である。
なぜシス体がゴム弾性を発現するのに適するか、加硫はなぜ必要か、加硫するとどこに硫黄が付くか・・・等は書き出すととても長いため、また今度そのコラムを書こうと思います。
とりあえず今回は天然ゴムとイソプレンゴムの違いについてでした。
(あれ?「昨日」書いたブログが日付変わってて「今日」になっちゃってたから本日二度目のブログ更新になってしまった!)
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帰省ラッシュでしょうか。
今日バイト先の塾から帰っていると、電車の中にリュックをしょった親子が多かったです。
電車の中である子供が
「おしりぺーん、おしりぺんぺん!」
と言っていました。
元気な子です。
が舌っ足らずで筆者には最初なんて言ってるかわからず、
「ジテルペン!ジテルペン!」
って言ってるように聞こえました。
筆者「なにぃ!?あのちびっ子その年齢ですでにイソプレン単位4個からなるジテルペンを理解しているのか!!」
とか思いました。
ちなみにテルペン類とはイソプレンCH2=C(CH3)CH=CH2単位2個(モノテルペン)を基本とした生体炭化水素の総称で、イソプレン単位が4個のものをジテルペン、6個でトリテルペン・・・っと言います。
で、今日はイソプレンのことを考えてました。
イソプレンはその二重結合を使って付加重合することでポリイソプレン:イソプレンゴムを形成できます。
で、その[-CH2C(CH3)=CHCH2-]の単位がシスのバージョンとトランスのバージョンがあります。
普段一般に見るゴムらしいゴムはパラゴムの木が作る100%シス体のポリイソプレン、いわゆる天然ゴムです。
「で、一方100%トランスのヤツは・・・なんだっけ?阪大の5年前くらいの過去問にも出てきたのに・・・」
っと、どわすれしてどうしても思い出せなくて今日一日モヤモヤしてました。
ちなみに答えは「グッタペルカ」(もしくはグタペルカ、ガタパーチャとも)です。(諦めてググった)
あーすっきりした!
今やインターネット無くして化学の勉強出来ませんな。
というわけで、今日から数日間はイソプレン特集です。(前置き長!)
今日の分子 No.37 イソプレン CH2=C(CH3)CH=CH2
Jmolで描画
揮発性、可燃性、引火性で有毒な無色液体。
第4類引火性液体、特殊引火物。危険等級Ⅰ。
が、生体分子であり人間を含め生物の体内でたくさん合成されているらしい。
ナフサの熱分解等で得られる。
二重結合を二つ持ってるジエンという化合物のひとつで、一番端っこの炭素で長く繋がるように付加重合する。
付加重合するとポリイソプレン[-CH2C(CH3)=CHCH2-]nというものになる。(真ん中に一つの二重結合が出来る。)
この単位が100%シス体のものが天然ゴム(イソプレンゴム、IR)、100%トランス体のものがグッタペルカと呼ばれる。
イソプレンゴムは加硫することにより弾性を増す。
ポリイソプレンについては後日どんどん出していきます。
なんと今日もウェブフォームに質問が・・・
いやぁ、なんとまぁ、このサイトも日の目を見るようになってきたんですねぇ~
まあまだまだですが、いつかその道での人気サイトになればいいなぁとか思ってます。
読者のみなさん、有難うございます!
さてさて、
風邪が治りません。。。
今日もアセトアミノフェンのお世話になりました。
と言うことでみんなのヒーロー:アセトアミノフェンをご紹介。
今日の分子 No.36 アセトアミノフェン C6H4(OH)(NHCOCH3)
Jmolで描画
解熱鎮痛薬の一種。
先月の「今日の分子No.33」で紹介したアセトアニリドの、p位にヒドロキシ基が導入されたバージョンである。
アセトアニリドが強い副作用を持つのに対し、アセトアミノフェンの毒性は低い。
・・・っというのは高校化学でも習うほど有名で実用的な物質である。
今現在、たぶん筆者の胃に入っている。
発熱や寒気を止めてくれる効果があり、筆者のあと少ししたら効いてきて筆者の頭痛をやわらげてくれるはずだ。
アセトアミノフェンを服用しているときはアルコールを摂ってはいけないらしい。
最悪死にいたるとか・・・風邪薬飲ませて酒飲ませるっていうサスペンスもあった気がします。
筆者は昨日もアセトアミノフェンを飲んでいたため、残念なことに正月で親戚と集まったのにお酒を飲めなかった。
アスピリン・アセトアニリド・アセトアミノフェンはお薬分子としてセットで覚えよう。
この三物質はシクロオキシゲナーゼという酵素の活性を下げるという点で基本的に同じ効果であるらしいが、
残念ながら専門ではない筆者にはよくわからない。
ちなみにアセトアニリドは体の中でアセトアミノフェンになるらしい。
だから最初からアセトアミノフェンを飲んだほうが毒性低いし即効性高くて効率良い!!
ってことなんでしょうか。
やはり専門でない領域はわかりません。
昔は、筆者の先生たちが学生であった時代は風邪を引くと研究室の反応試薬のアセトアニリドを飲んでいたらしい。
せめてアセトアミノフェンを飲めばよかったのに・・・
Q1さん>>
医学部頑張ってください!
入学して医薬品学習ったらコイツらの体内での反応教えてください!
今日友達とリチウムイオン電池の溶媒のお話になったのでそれについて。
今日の分子 No.35 炭酸エチレン C3H4O3
WinMOPACで計算・描画 ※二重結合省略
珍しい形の分子に見えるが、炭酸(H2CO3)とエチレングリコール(HO-CH2CH2-OH)が二ヶ所エステル結合で繋がっただけの分子。
だから名前は炭酸エチレン。
別名で1,3-ジオキソラン-2-オンやエチレンカーボネートとも呼ばれる。
極性のある有機溶媒であり、リチウムイオン電池でリチウムイオンを溶かすための電解液として使われる。
ちなみにこの分子、筆者が受けた阪大プレ(だったような気がする・・・)の模擬試験で出てきた経験があります。
極性を答えさせるものだったかな・・・ちょっと記憶が怪しい・・・
大きな極性がなければイオンを溶かすことは出来ない。
水が食塩を溶かすことが出来るのは、水分子が強く分極していて極性溶媒となっているからである。
水分子はH-O結合においてOが強くHから電子を引っ張っているので分極しているため極性が現れる。
(あと分子が点対称でないのも要因になっている。)
ここで極性の大きさの指標として「双極子モーメント」(単位はdebye)という物理量が定義されている。
一般に双極子モーメントの数値が大きいほどその分子は極性が大きいと言える。
例えば水の双極子モーメントは1.94 debyeである。
他に例えば硫化水素は1.02 debye、エタノールは1.47 debyeである。
この数値の比較により、水はかなり極性の大きな分子でありイオンや他の極性分子を良く溶かすだろうと予想される。
実際、水は極性が非常に大きく優れた極性溶媒であるとされている。
では、この炭酸エチレンはどうだろうか。
分子軌道計算ソフトWinMOPACで双極子モーメントを計算してみると・・・
結果、4.616 debye
デカイ!!!!
半端なく大きい値である。
水の1.94 debyeでさえ異常に大きな双極子モーメントだと言われるのに、炭酸エチレンはケタ違いに大きな双極子モーメントを持っている。
すなわち炭酸エチレンはイオンを溶かすのがズバ抜けて得意な溶媒なのである。
だからリチウムイオン電池でリチウムイオンを溶かすための溶媒として使われているのである。
一方、溶媒としては優秀な炭酸エチレンにも欠点がある。
炭酸エチレンは引火性の油であり、非常に燃えやすいという危険性があるのだ。
少し前にパソコンのリチウムイオンバッテリーが発火しリコールがかかって回収になったりしていましたが、これは熱を放散しにくい構造/状況になったリチウムイオンバッテリーが高熱になり炭酸エチレンが発火したからだと言われています。
しかし炭酸エチレンほどリチウムイオンを溶かすことの出来る優秀な溶媒はそうないので、この危険性をいかに抑えるかという対策を考えつつ炭酸エチレン若しくは類似の極性有機溶媒を使い続けるしかないのです・・・
※ 某大学の教授がリチウムイオン電池の「全固体化」に成功したとか。
要するに液体フリーで発火の危険性なし!という優れもの。
まだまだ身近なところにも化学の力で何とかなる問題が転がっています。
今日(厳密には「昨日」だけど)はこの前の実験レポートを書いていたらほぼ一日終わってしまいました。
それに出てきた分子をピックアップ。
今日の分子 No.34 ブロモベンゼン C6H5Br
Jmolで描画
臭化フェニルやモノブロモベンゼンとも言われる。
芳香臭のある透明な液体で、吸引したり皮膚に付くと有毒。
引火性があり、危険物第四類引火性液体第二石油類非水溶性液体とされる。
要するに危ない物質。
が、非常に有用であり医薬品の合成などの原料となる。
特にマグネシウムと反応させてから二酸化炭素と反応させると安息香酸が合成できる等の反応が有用。
臭化鉄(Ⅲ)触媒下、ベンゼンに臭素を反応させると置換反応が起こりブロモベンゼンが生成する。
C6H6 + Br2 → C6H5Br + HBr
大学レベルでは「この反応を起こしたければこの物質を触媒として使うべきだ」というのがわかるようになる。
センター試験の問題なんかで触媒を選ばせるのとかがあるけど本当にただの暗記で面白くないと思う。
大学ではどんな経路をたどって反応が進むかというのを考えるのが主だから、もちろん触媒も考えないといけない、ということになる。
同じ要領で塩化鉄(Ⅲ)触媒下でベンゼンに塩素を反応させるとクロロベンゼンが生成する。
C6H6 + Cl2 → C6H5Cl + HCl
ベンゼンは面白い分子で、普通二重結合がある分子にハロゲンが反応すると付加反応を起こすのに対して置換反応を起こす。
が、これも大学レベルで考えて反応条件を変えると結果が変わる。
ベンゼンに塩素を混ぜて紫外線を照射すると付加反応が起こり1,2,3,4,5,6-ヘキサクロロシクロヘキサンが生成する。
C6H6 + 3Cl2 → C6H6Cl6
1,2,3,4,5,6-ヘキサクロロシクロヘキサンはこの反応で作られるため、慣用名で「ベンゼンヘキサクロリド」(BHC)とも呼ばれる。
同じ反応物からでも反応条件によって生成物が全く異なることはよくある。
大学レベルまで理解できるなら良いが、やはり難しいので大学入試では取り合えず反応条件(触媒)と生成物の組み合わせは覚えておきましょう。
◎ 参考(↓触媒選び詳しく載ってます。)
- 『ボルハルト・ショアー現代有機化学〈下〉』
, K.Peter C. Vollhardt, Neil E. Schore著, 野依良治監訳, 化学同人; 第4版 (2004/06)
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