一般向け/高校生向け楽しい化け学
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先週、去年放送された『ポケットモンスター THE ORIGIN』を見ました。

私も小学生の頃熱中した赤・緑に基づいたストーリー、とても楽しかったです。

なんですが!

なんと作中に有機色素分子がいくつも出てくるんです!!!!!!

しかも私の専門、有機エレクトロニクス材料です!

これにはびっくり!

ちょっと感動したのでご紹介したいと思います。



出てくるシーン:状況説明

ロケット団がシルフカンパニーを乗っ取るエピソード。

ロケット団はポケモンを使うマフィア。

シルフカンパニーはモンスターボール等を開発・販売してる企業です。

ロケット団はシルフカンパニーが開発中の「マスターボール」(必ずポケモンを捕獲できるモンスターボール)を狙っています。


そのマスターボール説明で、色んな波形やグラフが出てくるサイエンティフィックなシーンなんですが・・・!!


『ポケットモンスター THE ORIGIN』より


色素増感太陽電池用有機色素


『ポケットモンスター THE ORIGIN』より

Bpy:
ビピリジン系ルテニウム錯体。
色素増感太陽電池用※1増感色素※2
光が当たると中心のルテニウムからビピリジン配位子へ電子が移動する(MLCT遷移)。
1つのビピリジン配位子にカルボキシル基が結合しており、これが酸化チタン電極へ結合する(カルボン酸アンカー)。
したがって光が当たることで酸化チタン電極に電子を注入することができる。

N3:
ビピリジン系ルテニウム錯体。
イソチオシアネート錯体になった進化系。
この錯体の2つのカルボン酸がテトラブチルアンモニウム(NBu4+)塩になったものはN719と呼ばれる最も有名で性能の高いルテニウム系増感色素。

Biq:
ビピリジン系ルテニウム錯体。
ピリジンをキノリンに置き換えることによりπ共役を広げ、吸収を長波長化したもの。

EY:
キサンテン系赤色色素。
フルオレセインのテトラブロモ体。
細胞の染色に用いられるが、カルボキシル基があるので増感色素としても使える。
普通はナトリウム塩で使う。

NKX2384:
ジュロリジンとクマリンが縮環したDA型増感色素。
電子求引性の高いシアノアクリルアンカーを持つ。
光が当たるとジュロリジン(D:ドナー)からアンカーの結合したクマリン(A:アクセプター)へと電子が移動する(ICT遷移)ため、酸化チタン電極へ電子を注入できる。
クマリンには電子求引性を高めるためトリフルオロメチル基が導入されている。
※ 劇中の構造は間違っています。
その構造の色素は存在しないし、そもそも手の数が合わないのでありえない構造。


以上のように、明らかに色素増感太陽電池用の有機色素が並べられています。

適当にデタラメな化学構造並べたんじゃなくて、狙っている・・・?

そして次のAlq3で予想が確信に変わる・・・!!



有機EL用発光材料


『ポケットモンスター THE ORIGIN』より

Alq3
緑色蛍光性アルミニウム錯体。
有機EL※4用の発光材料として用いられる。
Alq3をドープした発光層をp型とn型の有機半導体層で挟み電圧をかけることで、発光層に電子とホールが流れこみAlq3が励起され発光する。


マスターボールがポケモンの出し入れで光るシーンに蛍光色素が!!!

絶対テキトーに構造並べてるんじゃない・・・ちゃんと意図があるに違いない!!



考察

これはもうどう考えてもマスターボールにこれら有機エレクトロニクス材料が用いられているのでしょう。

そう、すなわちマスターボールは色素増感太陽電池で充電し、有機ELで光っていたのである!!!

例えば・・・


マスターボールの構成予想

しかもN3みたいなルテニウム色素は紫色!

もう絶対こんな構造なんでしょう!

なんとマスターボールは太陽光で充電し発光する、電池いらずの軽量でエコな、次世代モンスターボールだったのである!

小さな頃にあこがれたマスターボール・・・

18年たった今、私の専門の有機エレクトロニクスの結晶であったと判明。

いやぁ~ポケモンさんはよく考えてはる!!!

なんか、感動です・・・



解説

1. 色素増感太陽電池:
有機色素を用いた太陽電池。
薄くフレキシブルな太陽電池を作ることができ、現在十数%の比較的高い変換効率が達成されている。
図1のように、電池内の色素が光を受けて励起し、その電子を負極の酸化チタンの伝導帯へ持ち上げる。(色素は一電子酸化されて陽イオンになる。)
電子は外部回路を流れて仕事をし、電池の正極に戻ってくる。
戻ってきた電子を電解液中のヨウ素が受け取り、酸化された色素に渡して色素を再生する。
この繰り返しにより、光エネルギーを電気エネルギーへ変換する。
◎ 要するに有機色素は光のエネルギーで電子を持ち上げるポンプのような役割をしている。

2. 増感色素:
色素増感太陽電池で電子を動かす役割をする色素。
実は酸化チタンだけでも同様に発電することができるが、酸化チタンは紫外線しか吸収できないためそれでは効率が悪い。
よって可視光を吸収できる色素を酸化チタンに吸着させることで変換能力を高めている。
酸化チタン電極に色素が吸着している方が効率良く電子を渡すことができるため、増感色素はカルボキシル基等のアンカー基を有する。


図1. 色素増感太陽電池の原理
(2年ほど前に作って高校への出前授業で使用したものw)


4 有機EL(有機LED):
有機物でできたLED発光素子。
薄くフレキシブルな発光素子を作ることができ、次世代薄型ディスプレーや照明などへの応用が期待されている。
図2のように発光層をp型とn型の有機半導体層で挟んだ構造をしている。
順方向に電圧をかけると発光層に電子とホールが流れこみ、出会うと(再結合)発光層中の発光分子が励起され、発光が起こる。
筆者の専門。


図2. 有機ELの原理

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